各産業のCO2削減努力を授業する(3) 化学、セメント、都市ガス


環太平洋大学客員教授、元中日・東京新聞記者、経済広報センター常務理事・国内広報部長(産業教育で文部科学大臣賞を受賞)

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 今回で三回(一回目二回目)にわたる私の産業別環境テキスト紹介は最終回となるが、今回は、化学、セメント、都市ガスのテキストについて紹介したい。

多岐にわたる化学製品の用途

 化学については、この一連のテキストのお決まりのように「身の回りの化学製品をさがそう」から始まる。テキストに書かれたイラストを見ながら、ペットボトルやタイヤ、洗剤を選んでもらう。そして、イラストの下の欄外には「ペットボトル、食べ物のふくろ、せんいのポリエステルなどは石油を原料にして作られています」との注釈が記されている。
 二枚目は、ペットボトルのリサイクルについて学ぶ。そして、ペットボトルのリサイクル率の推移のグラフを見ながらカッコの穴を埋める。
 「日本のペットボトルリサイクル率は2019年度では(89.5)%になっています。2019年度の日本のペットボトルリサイクル率はアメリカの(4)倍以上です。また、リサイクルすれば、ごみとして燃やさないため、燃やす時に出る(CO2)を減らすことができます」
 三枚目は話題が変わって、LED電球について。LEDには、たくさんの化学製品が使われていて、「LED電球を使うと白熱電球に比べ電気の使用量が(五)分の一になる」ことなどを学ぶ。
 四枚目は、またも話題が変わり、「炭素せんいについて知ろう」。「日本の企業は、世界の炭素せんいの何%くらいを作っていると思いますか」との問いがあり、約30%、約50%、約70%の三択から選んでもらう。答えは、約70%。また最新の飛行機「ボーイング787」は炭素せんいを使うことで重さが軽くなり、燃料の使用量は、長距離路線で何パーセントくらい減らすことができるか。これも約3%、約10%、約20%の三択から選んでもらう。答えは約20%。そして、次の文章を子供たちに声を揃えて読んでもらい、授業は終了する。
 「炭素せんいは、『軽い、強い、くさらない』優れた性質があり、プラスチックの強さを高める材料です。人工衛星、風力発電の羽などの材料に使われています。世界の炭素せんいの約7割を日本企業が作っています。飛行機は、軽くなったこととエンジンの性能向上によって、二酸化炭素の出る量を減らすことができました」。
 化学製品のテキストは、ペットボトル、LED、炭素せんい、という注目されているテーマで非常に盛沢山の内容となっている。

廃棄物を受け入れるセメント産業

 セメント産業のテキストのポイントは、廃棄物を受け入れるセメント産業のリサイクル。「セメントを作るときに、私たちの暮らしから出る廃棄物や副産物を原料の一部や熱エネルギーの代わりに使っています」。日本では年間5億4600万トンの廃棄物などが発生しています(2018年度)。セメント工場では日本の廃棄物総量の5%にあたる約2700万トンを受け入れています。これは東京ドーム( こ)分に相当する量です」とあり、3こ、10こ、15こ、から選ばせる。答えは15こ分である。
 そして、次の質問は、「もし、日本のセメント産業が廃棄物・副産物をまったく受け入れなかったら、最後にゴミを埋め立てる産業廃棄物の最終処分場は、予想より何年早く満杯になるか」。答えは5.5年早く満杯になる、である。
 セメント産業が廃棄物の処理やリサイクルに役立っていることを学ぶテキストになっている。

将来の都市ガス

 今回の連載で最後に紹介するのは、都市ガスのテキスト。都市ガスのテキストでは、天然ガスの特徴を知ろう、都市ガスを届ける工夫を知ろう、に続いて「ガスを燃やさない使い方」のページである。ここでは、ガスを使って家庭で電気をつくる家庭用燃料電池「エネファーム」を紹介している。
 「水に電気を通すと、水素と酸素が発生しますが、逆に水素と酸素を反応させると電気と熱を発生させることができます。燃料電池は、この水素と酸素から電気を作り出す反応を利用する装置です」との説明があり、その後、穴埋め問題。
 「家庭用燃料電池「エネファーム」は、都市ガスから取り出す(水素)と、空気中の(酸素)を反応させて(電気)を作ります。その時に出る(熱)を利用してお湯をわかすので、今までよりも少ないエネルギーで電気もお湯もつくることができます」と文章を完成させる。
 ある財界首脳にこれらの産業別テキストについてパワーポイントでご説明したところ、「プリントアウトしてほしい。面白い」と興味を持っていただいた。「大人が見ても役に立つ。他の業界については意外と知らない」と最高のお褒めの言葉をいただいた。ぜひご覧いただければ、と思います。

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