第11回 一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)常務理事 長谷川 英一氏

情報爆発の未来を支え、低炭素社会に不可欠な「グリーンIT」


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

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データセンターのエネルギー効率指標は国際協調でつくる

――大量の情報を蓄積、処理するデータセンターの省エネ効果はいかがでしょうか?

長谷川:現在、データセンターは世界中に膨大なデータを蓄積していますが、クラウドコンピューティングの進展などにつれて数もどんどん増えています。全世界の電力消費の1%以上をデータセンターで使っていると言われますが、日々情報を蓄積していくデータセンターはさらに大きくなっていくことが予測されます。
 そのデータセンターにグリーンIT技術を入れていくことで、日本ではデータセンターが今後増えていこうとも、電力消費はほとんど増えないように抑えられます。世界規模でもデータセンターの電力消費をかなり抑えられると見通しています。

――具体的にどのような省エネ技術なのですか?

長谷川:データセンターは基本的にはサーバの集まりですが、このサーバの中のCPU(セントラル・プロセッシング・ユニット)が熱を出します。しかし、CPUの効率を高めて熱をできるだけ出さないようにするという技術がまず一つです。そして出てきた熱を冷やす効率を高めることが第二です。これらにより、同じ電力を使ってもたくさんのデータ処理ができるようにできます。そうした複合的な省エネ技術を入れることにより、データセンターの能力を高め、データセンターの規模を拡大してもそれほど電力消費が上がらないようにできることがわかってきました。世界に向けて、どういう技術によりどういう効果があるかについて、データセンターの効率化指標を提案しています。

――効率化指標ですか。

長谷川:データセンターはサーバなどのハードをどう冷やすかということが基本で、電力を余計に食っているのはこの「冷やす」ための空調です。従って、冷やす効率を上げるのがポイントで、日本では非常にこの空調技術が進んでおり、専門会社もたくさんありますので、様々な冷やし方の工夫ができます。

 例えばサーバの前から冷たい空気が入って後ろから熱い空気が出ますよね。その熱い空気が冷たい空気と混ざってしまうと空調効率が下がります。従って、サーバの配列や間仕切りなどを考え熱い側の空気だけ効率的に集めて冷やして冷たい側に出してあげる。そうした工夫などをそれぞれ効率的に評価できるように指標を構成しています。

――効率的に評価できるシステムがあるのですね。

長谷川:データセンターのエネルギー効率には、4つの省エネサブ指標があります。その一つにPUE(Power Usage Effectiveness)というものがありますが、ザ・グリーン・グリッドというアメリカの団体が提唱してデファクトとして使われています。データセンターでサーバなどIT機器が使う電力とデータセンターを冷やすための電力、PUEはその電力の比をとっています。なるべく冷やす電力よりIT機器に電力を使った方がいいわけですね。

 ただ、例えば電力ばかりたくさん食うのにあまり能力のないサーバを使うと、いくらうまく冷やしてPUEは良くなってもデータセンターとしての効率は良くない。従って私どもグリーンIT推進協議会では、データセンター内のIT機器の稼働率やIT機器の性能なども全部含めた総合的なデータセンターの能力指標を提案し、それを日米欧の交際ワークショップで何度も議論しています。

――この分野での日本の技術は国際競争力も高く、輸出産業としてもメリットがありそうですね。

長谷川:実際にこの指標を作ってデータセンターを計測していきますと、やはり我が国のデータセンターの効率が非常に良いため、指標が良く出てくるわけです。例えば欧米・アジアとこの指標を比較することにより、「指標を見ると日本のデータセンターは良いね、ぜひそれを入れたいね」と判断してもらえると思います。

――ユニバーサルなスタンダードということですね。

長谷川:そうすれば「日本の技術は高い」と日本の機器やネットワーク、あるいは丸ごとのデータセンターを売り込んでいける。同じ土俵にのせれば「日本の方が良い」ことを示すことにより、日本の技術を広めていく。指標の標準化というのは基本的にそういうものだと思います。