第11回 一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)常務理事 長谷川 英一氏

情報爆発の未来を支え、低炭素社会に不可欠な「グリーンIT」


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

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情報爆発の時代に向けて

――情報量が、2025年には2006年の約200倍になるという予測には驚きました。

長谷川:情報が爆発的に増え、200倍のスケールでネットの中を情報が流れるだろうと予測しています。実はこの予測は、2005年の段階で経済産業省と私ども業界団体等で検討して出した数字でして、大きく変わってきているところもあるかと思いますので、経済産業省で現在、見直しをされているところです。2005年当時の議論としては、情報量が200倍に増えれば電力は5倍に増えるとした予測のもと、これを抑えるための方策を議論しました。

 放っておけばどんどん増えてしまうIT機器のエネルギー消費をOF ITで減らすことができます。OF ITという意味は、この当時の技術のサーバーがそのまま普及していくと、どんどんエネルギー消費は増えることになりますが、省エネ性能の高いサーバーを入れていくことでエネルギー消費が抑えられる、つまりOF IT(IT機器の省エネ)効果ということです。

 BY IT効果については、産業部門では例えばITで生産プロセスを省エネ化し、業務部門ではBEMS(ビルディング・エナジー・マネジメント・システム)やテレワーク、TV会議、ペーパレスオフィスなどを導入する。家庭部門ではHEMSやオンラインショッピングをする。運輸部門ではITS(高度道路交通システム)の効果を高めることなど、ITを通したソリューションを導入していきます。

出典:グリーンIT推進協議会

 ITを使うことにより社会をどのくらい低炭素化できるかというと、この時の試算でもっとも高い予測では2020年に1.37億トンCO2減らすことができます。2007年当時のCO2排出量は13億トンですので、それなりに大きな効果になります。

 日本の普通の家庭の中で電力消費の多い、エアコン・冷蔵庫・テレビ・DVD・照明、これに産業や業務で最も使われるIT製品のPC・サーバ・ストレージ・ネットワーク・ディスプレイを合わせた10品目について、それぞれの技術のトレンド、またどう省エネが進んでいくかを技術検討委員会で検討し、それを踏まえて調査分析委員会でどのくらい削減できるかを検討しました。2005年約3100億kWが日本国内で10品目が消費したエネルギーですが、放っておくと2020年には約4500億kWとなってしまいます。それをOF IT効果により1100億kW程度減らせると見通されるので2005年から2020年になってもほとんど増えません。

――OF ITとBY ITという2つのアプローチで低炭素社会へ貢献していくのですね。

長谷川:そうです。省エネというとみなさんOF ITの方を主に考えると思いますが、やはりそれ以上にITは社会全体を省エネできる効果が大きいわけです。OF ITの効果は2005年から2020年までにCO2を4000万トン減らすことが期待されていますが、BY ITは1.3億トンですから、3~4倍つまりBY ITの方が効果が大きいのです。

 ただこれには、いろいろな試算を入れています。例えばTV会議で65%省エネになるという内訳には、出張しないで済むために節約される車のガソリンや飛行機の燃料も入れていますので、大きな省エネ効果となるわけです。そうしたものも含めて、一つ一つのソリューションにより、全体としてどのくらい効果があるか、ソリューションごとに精査をした上での数値を出しています。