望ましい電力市場と発送電分離の姿


Policy study group for electric power industry reform

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3.全国ISOをベースにする電力システムモデルの試案
 
 国際環境経済研究所の澤所長は、独自の電気事業新体制モデルとして「東日本卸電力構想」を提案している。本稿では、そのモデルを電力システム改革検討の手掛かりとして、それをさらに具体化させる広域独立系統運用機関(ISO)設立を仮定した場合、どのような広域パワープールが実現され、澤氏の構想に近い形態が実現されていくのか、その実現性を検証してみたい。

図1 全国ISOの運営する全国パワープールと電気事業体制

 図1に構想のイメージ図を示す。まず、新しい広域パワープールは、2020年までに東西の異なる周波数区域をつなぐ連系設備容量が210万kW(原子力2基分)に拡充され、その後300万kW(原子力3基分)への拡大も検討されていることから、最終的には「全国プール」として運用されることを目指すものとする。この全国パワープールに参加する全国の市場参加者は、自社電源保有や相対契約などにより発電・小売からなるグループを作って、30分単位毎の需給バランスを確保する(以下では欧米の例にならってバランスグループと呼称する)。パワープールでは、バランスグループ間の電気の過不足が全国大の市場で取引される。各バランスグループの電源の発電コストを比較し、燃料費の相対的に高い限界電源の運転を止め、代わりに安価な電源を運転させる(メリットオーダー)ことで、バランスグループや地域の枠を超えて全国単位での経済性が追求される。その際、東西間の連系容量として200~300万kW程度が利用できれば、相当な効果が期待出来る。
 全国パワープールを管理する主体は、全国単一の系統運用者・ISO(全国ISO)である。ISOは独立機関として電力会社所有の流通ネットワークの混雑を管理したり、設備拡充・補修停止などの計画立案を中立的に行うとともに、各バランスグループが自らの需給バランス(30分同量など)をはかってもなお残る需給のずれを、全国リアルタイム市場と全国周波数調整市場によって一括して調整し、全国の周波数を安定化させる義務を負う※1。前者はバランスグループや発電者に対して、入札価格データと需給状況に基づいて発電出力基準値をISOが指令する市場であり、後者は市場で翌日の周波数調整に参加する電源を決めてISOから周波数調整信号を送信する市場となる。
 系統利用者(発電事業者、小売事業者)から見ると、全国の電力ネットワーク利用サービスの提供者は、電力会社ではなく、すべて中立的なISOに一元化される。また、送配電資産は電力会社が所有を継続しながら、ISOにリースされ、その運用機能もISOに移管される。ただし、実際の、送配電資産の建設・保守・運転に関しては、資産を保有し続ける電力会社が、その責任として行う。
 ISOは、電気の物理的な運搬限度(ネットワーク制約)に達しないよう、市場メカニズムを活用した効率的な需給調整を行う。このために、欧米市場で実績のある、ゾーン価格もしくは地点別価格(LMP)別の電力取引制度を、全国リアルタイム市場で導入する。これによって、既存ネットワークの容量と全国の需給調整力を最大限活用でき、再生可能エネルギーの出力変動への対応や、メリットオーダーによる経済性追求、全国規模のデマンドレスポンス力の統合、等が可能になる。また、送電線の混雑箇所の増強を中立的に決定するため、基幹系統の増強計画策定権限そのものをISOに移管する必要がある。さらに全国ISOは、国際連系の検討を行う主体ともなるであろう。

※1)わが国は50Hzと60Hzの2つの周波数を使っているため、全国ISOが一括して全国の周波数調整を行うとの提案は奇異に感じられるかも知れない。しかし、例えば以下のように工夫すれば周波数調整を50Hz、60Hzの壁を越えて全国一括で行うことが可能である。まず50Hz、60Hzの周波数偏差から、50Hz、60Hz地域毎の需給アンバランスを算出する。これらを合算して全国での需給アンバランスを算出する。計算された全国需給アンバランスがゼロになるように各バランスグループや発電者に出力調整量を配分する。その際、50Hz地域の発電機群への出力調整配分量と、50Hzの需給アンバランス量との差分を、50Hzから60Hz地域に周波数変換設備を通じて融通するように制御する。このようなリアルタイムでの融通量制御により、あたかも一つの周波数である場合と同じように、全国での周波数制御が可能となると考えられる。