望ましい電力市場と発送電分離の姿


Policy study group for electric power industry reform

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4.全国ISO設立時の課題

 上述の新たなシステム像は、要となる全国ISOが適切な機能・権限を与えられれば、十分実現性がある。ただし、実際の移行にあたっては、以下の諸課題の解決が必要だ。
 第一に、ISOや卸電力市場への規制には、高度の工学的・経済的専門性が求められる。さらに、政治や行政からの独立が不十分だと、託送料の水準や連系線計画への不合理な介入の余地を与えかねない。こうした事態を避けるため、高度の専門性を有する独立規制委員会を設立して、ISOや卸電力市場の監視にあたることが最適ではないか。このように、ISO設立に合わせ、規制体系も抜本的な見直しの必要がある。
 第二に、新たな電力市場の運営者として、最新のビジネスの知見や自由な創意を極力取り込むよう、先進的な取組み主体とすることが重要だ。今後、普及が進むスマートメーターの情報などもISOが一元的に管理・提供し、新たなスマートグリッドの担い手としても位置づけてみてはどうか。
 第三に、ISOの運営には極力、民間活力が利用されるようにすべきだ。ISO事業には、公的な側面が大きいが、ISOの運営するシステムは、情報開示などの利用者サービスを向上させつつ、業務効率を最大限に高める必要がある。さらに、将来のエネルギービジネスの環境変化に柔軟に対応できる拡充性への配慮が重要だ。その意味で、ISOを天下り機関としないためにも、収益性を出資者(産業界や金融界)が監視する会社組織とすることもあり得る。

 最後に、本稿の内容をすべて実現しようとすれば大幅な制度改革になるが、ニーズの高い事項から段階的に実現していき、将来の情勢変化に柔軟に対応できるようにするという配慮が不可欠と考えられる。
 本稿は、一試案である今回のモデルの現実性を検証した。 政府のエネルギー政策は迷走を続けているが、本稿を契機に、より建設的で公益に資するアイデアが多数、民間(電力業界や産業界、金融界)から提案されることに期待したい。

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