このたびの震災でお亡くなりになった方々に対し心よりご冥福をお祈りするとともに、多くの地域で被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。 いまだ被災地の状況は問題山積であり、復興への準備も、まだまだ動きが十分とは言えません。エネルギー供給に関する不安も解決しておりません。当研究所としては、こうしたなかで、ごく短期に解決しなければならない問題とともに、いずれ近いうちに始めなければならない中長期的なエネルギー政策や温暖化政策の見直しについて、他に先駆けて議論を始めることといたしました。

目の前にある深刻な問題、たとえば福島原発の事故処理、計画停電などのさなかに、中長期的な論点を議論することは憚られるという世の中の雰囲気は十分認識しています。しかしながら、今だからこそ、平素よりこうした政策や技術をそれぞれ立場から企画・実施・研究されてきておられる方々の英知と見識を世に発信していくべきではないかと思い至りました。

みなさまの積極的なご参加を期待しております。(澤昭裕 国際環境経済研究所所長・副理事長)

  • 2012/07/06

    原発電力の代替、当面は石炭火力でなければならない
    エコ神話の崩壊が、エネルギー政策の変換を迫る

    原発電力の代替、当面は石炭火力

     いま、脱原発を叫ぶ人々は、原発代替電力は、「自然エネルギー(国産の再生可能エネルギー)による発電」だとしている。しかし、「自然エネルギー」は、少なくとも、現状では、原発の代替にならない。政府は、これを逆用して、「原発がなければ国民の生活が成り立たない(野田首相)」として、原発の温存を図ろうとしている 続きを読む

  • 2012/05/16

    藤井敏道氏・セメント協会 生産・環境幹事会幹事長/三菱マテリアル株式会社 常務取締役に聞く[後編]
    縁の下の力持ち、セメントの循環型社会への貢献

    今回ご登場いただくのは、セメント協会 生産・環境委員会委員長代行で生産・環境幹事会幹事長の藤井敏道氏。前編に続き震災直後のセメント業界の対応と復旧状況、さらに今後の業界としての環境・エネルギー問題への取り組みについて聞いた。 続きを読む

  • 2012/05/14

    藤井敏道氏・セメント協会 生産・環境幹事会幹事長/三菱マテリアル株式会社 常務取締役に聞く[前編]
    コンクリートが人の命を守る

    今回ご登場いただくのは、セメント協会 生産・環境委員会委員長代行で生産・環境幹事会幹事長の藤井敏道氏。震災直後のセメント業界の対応と復旧状況、さらに今後の業界としての環境・エネルギー問題への取り組みについて聞いた。 続きを読む

  • 2012/05/07

    工藤智司氏・日本基幹産業労働組合事務局長に聞く[後編]
    仲間とスクラムを組んでこの難局を闘いたい

    今回ご登場いただくのは、日本基幹産業労働組合事務局長の工藤智司氏。日本基幹産業労働組合は、主要な基幹産業である金属産業のうち、鉄鋼、造船、非鉄鉱山、航空、宇宙、産業機械、製錬、金属加工などの他、関連業種で働く25万人(748組合)を有する労働組合である。前編に続き、基幹労連の震災直後の対応、今後の環境・エネルギー政策の考え方などについて聞いた。 続きを読む

  • 2012/05/02

    工藤智司氏・日本基幹産業労働組合事務局長に聞く[前編]
    震災を経験し、切に感じた日本の強さ

    今回ご登場いただくのは、日本基幹産業労働組合事務局長の工藤智司氏。日本基幹産業労働組合は、主要な基幹産業である金属産業のうち、鉄鋼、造船、非鉄鉱山、航空、宇宙、産業機械、製錬、金属加工などの他、関連業種で働く25万人(748組合)を有する労働組合である。基幹労連の震災直後の対応、今後の環境・エネルギー政策の考え方などについて聞いた。 続きを読む

  • 2012/02/24

    発送電分離問題の再考②-2
    発送電分離=市場化のリスクをどう考えるか?

    一物一価の法則がもたらすリスク

     日本では、普段なら、1本100円の長ネギが700円に高騰したことがある。電力は蓄えられないという性格上、市場化した場合には、同様なことが起こりうる。これをヘッジするためにさまざまな金融商品が開発される一方、事業者はいかにこの鞘をとるかという行動に走る。規制側の任務は「競争法(日本の独占禁止法相当)」に基づく不正取引の監視であり、価格レベルそのものについては関与しない。これが今の英国の電気事業である。 続きを読む

  • 2012/02/21

    発送電分離問題の再考②-1
    英国事例に見るフェアの追求とその帰結

     発送電分離が目的とするところは公平(フェア)な市場の構築に他ならないが、英国の発送電分離は「フェアとは何か」という点で考えさせられる点が多い。今回は、発送電分離と電力自由化を最もドラスティックに実行した英国の事例に基づき、発送電分離とフェアについて考察する。 続きを読む

  • 2012/02/08

    GDP拡大を求める発想の転換が必要に
    浦野光人氏・経済同友会「低炭素社会づくり委員会」委員長/ニチレイ会長に聞く[後編]

    「エネルギーコストが2割も上がるのは国難」――。経済同友会「低炭素社会づくり委員会」委員長を務める浦野光人ニチレイ会長は、こう指摘する。原子力発電や再生可能エネルギーなど今後のエネルギー政策や温暖化対策について、また、日本のあるべき姿について率直なご意見を伺った。 続きを読む

  • 2012/02/07

    エネルギーコストが2割も上がるのは国難である
    浦野光人氏・経済同友会「低炭素社会づくり委員会」委員長/ニチレイ会長に聞く[前編]

    「エネルギーコストが2割も上がるのは国難」――。経済同友会「低炭素社会づくり委員会」委員長を務める浦野光人ニチレイ会長は、こう指摘する。原子力発電や再生可能エネルギーなど今後のエネルギー政策や温暖化対策について、また、日本のあるべき姿について率直なご意見を聞いた。 続きを読む

  • 2012/01/27

    宮井真千子・電子情報技術産業協会環境委員会委員長に聞く[後編]
    日本のものづくり産業が目指すべき答えは「環境技術立国」

     一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)は、電子機器や電子部品の健全な生産、貿易および消費の推進を図ることにより、電子情報技術産業の総合的な発展に貢献し、デジタル・ネットワーク時代を切り拓いていくことを使命としている。東日本大震災後の業界の対応や今後の事業展開などについて、JEITAの環境委員会委員長を務めるパナソニックの宮井真千子役員・環境本部長兼節電本部長に聞いた。(インタビューは2011年9月27日に実施)

    再生可能エネルギーを活用する町づくりの実証実験にも積極参画

    ――2012年7月1日から再生可能エネルギーの全量買取制度が始まります。業界として、パナソニックとしてどのように受けとめていますか。

    宮井真千子氏(以下敬称略):方向的には良いと思うのですが、具体的にいくらで買い取るとかの金額提示がない状況です。買取価格によって、さまざまな経済活動に大きく影響してきますので、良いとも悪いとも提示がない限りなかなか言えないところがあります。パナソニックとしては、再生可能エネルギーの比率を高めていくことは良い方向であると思います。我々は、太陽光発電や省エネ、蓄エネ製品を増やしながら低炭素社会へというビジョンを発信しており、事業的にもエナジーシステム事業の拡大を考えています。

    ――今後の町づくりなどで、再生可能エネルギーの導入に関する実証実験を計画されていると聞きました。

    宮井:パナソニックは、「家まるごとCO2±ゼロ」というコンセプトで、エネルギーを創る「創エネ」、貯める「蓄エネ」、それから「省エネ」といった商材を合わせて、ご家庭のなかでCO2プラスマイナス・ゼロを目指していくというコンセプトを提案しています。さらに、これをビル全体、そして街全体にもという方向で拡大しています。そのなかで今回、もう半年以上前になりますが、低炭素な町づくりとして藤沢市と協働でサステイナブル・スマートタウンの構想を発表しました。
     藤沢市には、もともとパナソニックの工場があったのですが、その跡地を活用し、低炭素な町づくりにプラスして住む人にとっての安全安心な町づくりを目指そうと、藤沢市様とともに計画を進めています。また金融、商社、不動産などの企業にも協業いただいて、官民を挙げた町づくりを進めているところです。

    ――町づくりには地元の方も参画しているのですか。

    宮井:新しく家を建てていくわけですから、それはこれからです。家づくりは当社グループのパナホームが中心となって進めますが、やはり住民の目線でいろいろなことを考えていかなければいけません。住んでいただく方にとって住みよい町になるかどうかが一番のポイントでしょう。

    パナソニックが藤沢市と協働で進める「藤沢サステイナブルスマートタウン」構想。工場跡地を利用して低炭素社会のひな型となる町づくりを目指すと同時に安全安心にも配慮する(資料提供:パナソニック)

  • 2012/01/26

    宮井真千子・電子情報技術産業協会環境委員会委員長に聞く[前編]
    震災を乗り越え、最先端の環境技術で世界をリードしていく

     一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)は、電子機器や電子部品の健全な生産、貿易および消費の推進を図ることにより、電子情報技術産業の総合的な発展に貢献し、デジタル・ネットワーク時代を切り拓いていくことを使命としている。東日本大震災後の業界の対応や今後の事業展開などについて、JEITAの環境委員会委員長を務めるパナソニックの宮井真千子役員・環境本部長兼節電本部長に聞いた(インタビューは2011年9月27日に実施)。

    震災で明らかになったサプライチェーンの調達リスク

    ――東日本大震災、そして福島での原発事故により、業界にはどのような影響がありましたか。

    宮井真千子氏(以下敬称略):JEITAの会員企業の中にも被災工場がたくさんありました。特に、東北地方には素材産業やデバイス系の工場がたくさんありますので、組立工場の被災ともあわせてサプライチェーン全体が被災したために事業活動に大きな影響が出たというのが実情です。ただ、それぞれの会社がいろいろな努力を重ねた結果、当初の想定以上に早く復旧して元の姿に戻っていったように思います。

    ――震災直後は、工場が稼働停止しただけでなく、部品の調達ができず大混乱したようですね。

    宮井:素材産業が被災していますので、まずモノが入ってこない。もちろん当初は、工場が被災しているので動かない。工場が動くようになってもなかなかモノが入ってこないという状況でしたので、市場の要求に応えられないケースがたくさんありました。国内だけではなく、海外に製品を供給している素材産業、部品産業も多いので、グローバルに影響が出ました。

     今回、日本にこんなに素材産業があったのだと改めて気づかされたような状況だと思います。日本が与える影響は非常に大きかったと感じています。

    ――部品一つなくても製品を組み立てることができないと私達国民も改めて認識しました。

    宮井:電機・電子業界もしかり、また自動車業界も同様な状況でしたので、国民のみなさまも気づかれたということでしょう。そのときに明らかになってきたのがサプライチェーンでの調達リスクです。

    ――サプライチェーンでの調達リスクを乗り越えるための検討はされていますか。

    宮井:もちろん個々の会社で検討に入っていると思いますし、パナソニックでも適切な対応をしなければいけないと動き始めています。サプライチェーンの上流側に行くと結局は同じ事業者に行きつくこともあり、調達の経路は複雑なうえに樽型のようになっています。そういった現状が徐々に「見える化」されていくなかで、もう少しリスクを分散するなり、調達構造をシンプルにするなり、そうした方向での取り組みが始まっています。

    ――業界のサプライチェーンは、おおよそ復旧したと言ってもよいのでしょうか。

    宮井:電機・電子業界はすそ野が広いので全部がそうだと一概には申し上げられませんが、パナソニックではほぼ元に戻ってきています。

    ――もともと、パナソニックは西の拠点が多いですね。

    宮井:工場もそれ以外の拠点も西日本に多いので、今回の東日本大震災の影響は他の会社に比べると少なかったかもしれません。ただ逆に電力の問題では、関西電力の供給エリア内に工場が多いため、これから切実なものがあるのではと危惧しています。

    宮井真千子(みやい・まちこ)氏。1983年に松下電器産業(現在のパナソニック)に入社。くらし研究所所長、クッキング機器ビジネスユニット長などを経て、2011年4月に役員・環境本部本部長に就任、同7月からは節電本部本部長を兼務。一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)では環境委員会委員長を務める

  • 2012/01/18

    日本の技術を生かすことが温暖化問題解決のカギになる
    関田貴司・日本鉄鋼連盟 環境・エネルギー政策委員会委員長[後編]

    東日本大震災後、日本政府はエネルギー政策の抜本的な見直しを進めている。表裏一体の地球温暖化問題への対応を含めて、その足元は、いまだ定かではない。日本鉄鋼連盟環境・エネルギー政策委員会委員長を務めるJFEスチールの関田貴司副社長に、日本のあるべきエネルギー論を聞いた。

    エネルギー政策は、感情に流されずに冷静な検討が必要

    ――現在、政府がエネルギー政策の見直しを進めています。これに対して、ご意見を伺えますか。

    関田貴司氏(以下敬称略):私どものお客様は広く産業界全般ですから、産業界が競争力を失えば我々も困る。もちろん、我々も競争力を失うわけにはいきません。エネルギー政策の見直しは、我が国の産業、経済の命運を左右するような重要テーマと考えています。時間軸に沿って整理して、感情に流されない議論、冷静な検討が絶対に必要です。

     今の日本は豊かで、電気は当然来るものだという思い込みがあります。その前提を疑わず、短絡的に「原子力発電が悪」、「再生可能エネルギーは善」とするのは、少々楽観過ぎるのではないかと思います。再生可能エネルギーは基幹電源にはなりえない。当面の基幹電力は火力であり、水力であり、原子力です。たとえば太陽光発電は、夜間は発電できません。冷静に議論を進めないと、我々の子孫が困ることになると思います。

    ――政府に対する要望はありますか。

    関田:今、いろいろな制度などを審議する場が出てきていますが、各省庁がばらばらに対応しているように見えることが少し気になります。エネルギー政策は総合的な観点が必要であり、我が国の命運を左右するような問題ですから、実現可能性を踏まえながら、政府全体として、しっかりした現実的なプランを検討していただきたい。もちろん安全性が最優先ですが、感情論や風評で考えられては困ります。私自身は技術屋ですので、技術に基づいた正確な判断をしてもらいたいと思っています。

    ――再生可能エネルギーについては、どう思いますか。

    関田:「環境と経済は両立し、新しいテクノロジーが日本経済を盛り立て、雇用も生み出す」という主張をいろいろな場で聞きます。しかし、たとえば太陽光発電については、日本で使っている太陽光パネルは、2008年まではほとんどすべてが「メイド・イン・ジャパン」でしたが、2009年以降は毎年シェアを下げ、今では中国での生産が主流となっています。少なくとも、太陽光発電の導入を進めれば雇用が生まれ、新産業が育つという見方は結果として偽りがあります。

    ――日本の「ものづくり産業」はいろいろな課題を抱えていますね。どうしたらいいでしょうか。

    関田:技術開発を国として支援するのは有効な手立てですが、もう一方で、ものづくりを巡る事業環境を改善することが重要です。日本は法人税が高いうえ、諸外国に比べると突出して高い二酸化炭素(CO2)の削減目標を掲げています。行き過ぎた円高とTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)構想への消極論も問題です。こうした条件が整わないと、ものづくり産業は海外に移転せざるをえません。空洞化が不可避だと言われる所以です。

     そこまで全体を俯瞰した施策でないと、環境と経済の両立した施策だとは言えないと思います。これは、いろいろな場で申し上げてきました。絵に描いた餅ならまだしも、絵に描いた餅にも全然なっていないということが現実には起こっています。

    関田貴司(せきた・たかし)氏。1975年に川崎製鉄(現在のJFEスチール)に入社。水島製鉄所管理部長、常務執行役員、専務執行役員などを経て、2011年4月に執行役員副社長スチール研究所長に就任、現在に至る。日本鉄鋼連盟では、環境・エネルギー政策委員会委員長として鉄鋼業界をリードする

  • 2012/01/17

    鉄鋼業は東日本大震災をどのように乗り切ったか
    関田貴司・日本鉄鋼連盟 環境・エネルギー政策委員会委員長[前編]

    西日本への生産シフトや夜間生産へのシフトなど、日本の鉄鋼業は、東日本大震災の打撃からいち早く復旧を果たした。その要因について、日本鉄鋼連盟環境・エネルギー政策委員会委員長を務めるJFEスチールの関田貴司副社長は、「社会に迷惑をかけないことを意識し、日ごろから地震対策に取り組んでいた成果だ」と話す。鉄鋼業は東日本大震災にどのように危機を乗り越えたのか――。

    震災後の復旧は早かったが、自動車などの生産が止まったことが生産に影響

    ――東日本大震災は鉄鋼業界の事業活動にどのような影響を与えたのでしょうか。

    関田貴司氏(以下敬称略):今回の場合、電力が一つキーワードになると思います。わたしの所属するJFEスチールで見ると、電力については自家発電を持っていますので、他の製造業とはちょっと違うところがあります。我が社は東西に製鉄所を持っていますので、西日本へのシフトや生産時間帯の夜間シフトに取り組んでピーク電力を低減しました。また、東京電力の要請に応じて、製鉄所内の発電設備をフル稼働させ、地域社会への給電では微力ながら貢献させていただきました。

    ――サプライチェーンには、どのような影響がありましたか。

    関田:鉄鋼製品を作るためにはいろいろな工業薬品や油脂、塗料などが必要ですが、それらが一部入手困難に陥りました。しかしながら、震災発生直後から情報収集や代替品の調達に努めた結果、なんとか乗り切ることができました。ただ自動車メーカーなど、お客様の生産活動に大きな影響が出たため、JFEスチール本体の生産は比較的早く復旧したのですが、製品を作ってもお客様に出荷できないという問題に直面しました。

     一生懸命に早期復旧を果たし、必要とされる鋼材はサプライできる状況になりましたが、我々の大きなお客様の一つである自動車の生産が止まり、鉄鋼生産面では若干大変な時期もありました。現在は、まったく何の影響もなく100%復旧しています。

    ――鉄鋼業のサプライチェーンは想像以上に復旧が早かったのですね。

    関田:災害に備えて、予め定めていた手順や日頃の訓練がよく機能したのではないかと思います。

    関田貴司(せきた・たかし)氏。1975年に川崎製鉄(現在のJFEスチール)に入社。水島製鉄所管理部長、常務執行役員、専務執行役員などを経て、2011年4月に執行役員副社長スチール研究所長に就任、現在に至る。日本鉄鋼連盟では、環境・エネルギー政策委員会委員長として鉄鋼業界をリードする

  • 2012/01/10

    塩崎保美・日本化学工業協会技術委員会委員長に聞く[後編]
    社会のサステナビリティを支える化学産業

    化学産業は自動車、電機・電子、医薬品、化粧品など他産業に原料や素材を提供し、まさに私たちの暮らしと産業を支えている。震災直後の影響や対応や今後の温暖化対策への取り組み、エネルギー政策について、日本化学工業協会の技術委員会委員長を務める住友化学の塩崎保美常務執行役員に聞いた。

    省エネNO.1で素材を開発するのが化学産業の使命

    ――エネルギー問題は温暖化問題と表裏一体というお考えが塩崎委員長の持論と思いますが、化学業界が温暖化対策に今後どのように取り組むか伺えますか。

    塩崎保美氏(以下敬称略):実は、別の表裏一体の問題があって、国内生産と海外生産の問題も出てきます。ただし、どこで生産しようとも、使用エネルギーを減らしていくことは非常に重要な取り組みです。現在、日本の産業は省エネでは世界最高水準です。今後も、トップをずっとキープし続けることが大事です。同じ製品を作るとしても、省エネ努力をずっと続けていかないと、日本の産業は国際競争力を失ってしまいます。それがまずベースになります。

     一方で、太陽光発電など再生可能エネルギーに利用される素材は、ほとんどすべてといっても過言ではありませんが、化学産業が供給しています。今後もこのような製品を開発し、供給していかなければいけませんし、その製品の製造も、世界NO.1の省エネ、低コストでやらなければならない。それがまさに化学産業のあるべき姿だと思います。

    塩崎保美(しおざき・やすみ)氏。社団法人日本化学工業協会技術委員会委員長。京都大学大学院工学研究課修士課程修了後、1973年4月に住友化学工業(現在の住友化学)に入社。レスポンシブルケア室部長、執行役員などを経て2010年4月に常務執行役員、2012年4月に顧問就任、現在に至る

  • 2011/12/27

    塩崎保美・日本化学工業協会技術委員会委員長に聞く[前編]
    温暖化問題とエネルギー問題は表裏一体。政府には現実的な解を求めたい

    化学産業は自動車、電機・電子、医薬品、化粧品など他産業に原料や素材を提供し、まさに私たちの暮らしと産業を支えている。震災直後の影響や対応、また、今後の温暖化対策への取り組み、エネルギー政策について、日本化学工業協会の技術委員会委員長を務める住友化学の塩崎保美常務執行役員に聞いた。

    ――東日本大震災直後、事業活動に具体的にどのような変化がありましたか。

    塩崎保美氏(以下敬称略):東北地方、あるいは被災地に近い地域の会社、例えば鹿島のコンビナートなどでは、プラント停止など、非常に大きな被害がありました。プラントのほか、港湾設備も非常に影響が大きかったと聞いております。震災から時間の経過とともに、道路が順次回復していき、港湾が回復し、生産活動もそれに伴って回復しています。現時点ではほぼ回復してきていると聞いています。当社は幸いにして、生産活動そのものについてはあまり影響がありませんでした。

    ――御社への影響が小さかったのは東日本には拠点が少なかったからでしょうか。

    塩崎:一番北は青森県三沢市に工場がありますが、直接大きな被害はありませんでした。千葉県市原市、袖ヶ浦市の工場も、地震の影響はありましたが、幸い被害はありませんでした。部分的に影響を受けたのは、被害を受けた会社から原料を購入して製品を作っている工場でした。原料が来なかったために、一時的に生産をダウンさせるなどの影響はありました。

    ――海外からのクレームはありませんでしたか。

    塩崎:住友化学の場合は、部分的にですが、包材など被害のあった地域から納入しているものが届かなかったため一時的な減産がありました。しかし、それはごく一部の製品に限られており、クレームには至りませんでした。
     よくサプライチェーンと言いますが、どちらかと言えば化学は素材産業ですので、かなり上流側に位置しています。最下流が自動車、家電などの組み立て産業になります。その間にいろいろな部品メーカーがあります。我々は部品メーカーに素材や部材を供給しているケースが多く、震災で被害を受けた化学会社から部品メーカーへの供給が一部滞ったという話は聞いております。

    ――業界としてのサポート体制は機能しましたか。

    塩崎:被害を受けた工場からの要請を受けて、生産できなくなってしまった素材の生産をできるだけ増やすなど、サプライチェーン全体への被害の波及を最小限にとどめるための対応をしました。

    塩崎保美(しおざき・やすみ)氏。社団法人日本化学工業協会技術委員会委員長。京都大学大学院工学研究課修士課程修了後、1973年4月に住友化学工業(現在の住友化学)に入社。レスポンシブルケア室部長、執行役員などを経て2010年4月に常務執行役員、2012年4月に顧問就任、現在に至る

  • 2011/12/14

    技術、安全保障、経済の3人の専門家が語る今後のエネルギー戦略
    ~それでも日本は原発を止められない~

     福島第一原子力発電所の事故後、わが国では原子力政策を含むエネルギー政策について、さまざまな評論・解説が繰り広げられてきた。分野の異なる3人の専門家が、その内容を検証して警鐘を鳴らすとともに、わが国が選択すべきエネルギー戦略を明示したのが本書である。

     著者の一人である山名氏は京都大学原子炉研究所教授で核燃料再処理技術が専門。森本氏は拓殖大学海外事情研究所所長で国家安全保障について多くの著書を執筆している。また、中野氏は京都大学工学研究科准教授で経済ナショナリズムについて教鞭をふるう。この3氏が、対談形式で知見や考えをいかんなく披露している。3氏に共通するのは、原子力技術やエネルギー戦略に対する極めて冷静かつ現実的な姿勢である。

     山名氏は原子力技術者の立場から、今回の事故では、約40年前の旧式の技術を使い続けてきたことや、津波に対する分析が甘かったことなど、技術や許認可の面で多くの反省点があることを率直に認めている。しかし、だからといって「失敗したらすべてやめる」という議論は、技術開発の本質を無視した危険なイデオロギーであると主張する。中野氏は、この構図が、第二次世界大戦の敗戦により、悲惨な戦争は二度と起こさないと武装放棄し、自衛隊の軍隊化に反対する状況と酷似していると指摘する。両氏は、「空気」に支配されることなく、冷静に判断することが必要であると訴える。

     一方の中野氏は、反原発の背後には反国家があると指摘する。原発を持つ最大の理由は国家安全保障であり、「国家」を嫌う左翼的な人には受け入れられないものであるとの見立てだ。彼らの推奨する再生可能エネルギーはすべからく分散型エネルギーであり、その根底には国家の否定があると指摘する。エネルギーが国家安全保障の要であるとの認識は極めて重要であるにもかかわらず、いまだ国民に浸透しているとは言い難い。この点について、3氏は、本書の随所で警鐘を鳴らしている。

     国家安全保障の基本要素は、国防、エネルギー、食糧である。なかでも、エネルギーの果たす役割は非常に大きく、森本氏は国防の根幹も結局はエネルギーであると述べている。そのうえで森本氏は、「エネルギー安全保障」といえば、諸外国では、自国でなるべくエネルギーを賄うことを前提とするのに対して、日本の場合は、輸入を前提にしている点が大きく異なると指摘する。再生可能エネルギーこそがエネルギー安全保障に貢献すると主張する向きもあるが、3氏は、現在の再生可能エネルギーの実力では原子力の代替にはならないと喝破する。

     福島第一原発事故を受けて、国民の多くは脱原発、再生可能エネルギー導入の流れを是としている。しかし、それは国家安全保障の根幹を揺るがす可能性が極めて高い。諸外国に比べてわが国では、エネルギー確保の重要性があまり認識されていない。中野氏は、この状況を平和ボケになぞらえて「エネルギーボケ」と呼ぶ。エネルギーなくして国家はありえない。

     本書では、ほかにも、核廃棄物処理の安全性や、民主党政治の問題点など、さまざまな観点から深く掘り下げた論考が加えられている。福島第一原発事故やわが国がとるべきエネルギー戦略について、より広い視野で、より深く考察したい方には必読の書である。

    『それでも日本は原発を止められない』 
    著者:山名元 森本敏 中野剛志(産経新聞出版)
    ISBN978-4-8191-1145-4 1400円+税

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  • 2011/12/07

    松井英生・石油連盟専務理事に聞く[後編]
    震災を教訓に、石油製品の平時からの利用と備蓄の体制づくりへ転換を

    東日本大震災直後は、東北、関東地方で「ガソリンがない」とパニックのような現象が発生した。こうした緊急時に石油業界はどのように対応したのか。松井英生・石油連盟専務理事に、震災後の対応と今後のエネルギー政策で果たす化石燃料の役割について聞いた。

    ――連絡体制も今後の課題ではないでしょうか。

    松井英生氏(以下敬称略):今回の災害で大変混乱したのは、いろいろなところから様々な要請が来るわけです。警察とも自衛隊とも連携しなくてはいけない。ところが、今までお互い顔も知らないわけです。地方自治体も災害関係の対策本部がありますので、普段から連携を取っておく。関係省庁もいろいろ絡んできますから、非常事態時には一元化していただきたい。バラバラに要請が来ても困るわけです。こちらも一元化して受ける体制づくりが必要でしょう。情報共有と連携体制を平時からやっていかなくてはなりません。

    ――平時からリスクを想定した体制を整える必要があるということですね。

    松井: 3月11日と12日のニュース番組を見ると、皆さん体育館にお逃げになって寒くて暖が取れないと話され、灯油がこないとテレビで報道される。ところが、そこに灯油をタンクローリーで持って行きたくても、大きい灯油タンクがないと給油できないわけです。ストーブもないかもしれない。テレビで「灯油が来ないのが問題だ」と言われても、普段からお使いいただき受け入れ設備がないと、緊急時に供給することができないのです。

     石油の需要は1999年がピークでしたが、2005年頃まで横ばい、2005年から右肩下がりになり、毎年約3%減っている状況です。実はこの震災が起きる前は、日量450万バレルの精製能力があっても需要は330万バレルしかない。オーバーキャパシティのため、ビジネス上でコストアップ要因になっていました。

     電力やガスのように国の管理の下に総括原価方式でコスト回収を行っているのではなく、我々は自由競争ですので、余分な設備や製品を持てない。需給に供給能力を合わせるのが大きな課題です。需要量に適応して精製能力をダウンするだけでなくて、油槽所、ガソリンスタンド、タンクローリーもどんどん減らしスリム化していくわけです。今回はまだ余剰設備削減が行われる前で余裕があり、西日本から石油製品を回すことができましたが、需給が一致するくらいギリギリの能力まで絞り込まれれば、いざという時に供給できなくなります。

  • 2011/12/02

    松井英生・石油連盟専務理事に聞く[前編]
    震災に強いサプライチェーンづくりに転換目指す

    東日本大震災直後は、東北、関東地方で「ガソリンがない」とパニックのような現象が発生した。こうした緊急時に石油業界はどのように対応したのか。松井英生・石油連盟専務理事に、震災後の対応と今後のエネルギー政策で果たす化石燃料の役割について聞いた。

    現場の情報が入らない中、元売の系列を越えて皆で協力して対応することを決めた

    ――震災直後はどのように対応されたのでしょうか。

    松井英生氏(以下敬称略):地震があったとき、建物の1階(石油連盟)におり、エレベーターが全部止まりました。電話は全く通じませんでした。テレビを見て、これは大変なことだと初めてわかりました。

    ――急いで緊急対策本部の立ち上げをされたのですか。

    松井:東北地域における石油の途絶の問題は必ず起きてくる。そう判断して、早速、石油連盟会長をヘッドとする対策本部を震災当日の3月11日に立ち上げました。ところが、立ち上げたのはいいが、全く情報が入らない。

     石油元売会社は、東京に本社があります。東北地方は油槽所という石油タンクがたくさんある配送基地のほか、原油から処理をしてガソリンや灯油を作る施設である製油所が、仙台に1カ所ありました。3月11日から12日は、まず電話が通じない。さらに末端までいけば、タンクローリーでガソリンスタンドに石油製品を供給していますが、タンクローリーやガソリンスタンドがどうなっているかもわかりませんでした。

    ――では、現場の被害を予想しながら初動の対応をされたのですか。

    松井:テレビで見る限りでは大変なことが起きているので、これは必ず石油製品の供給要請が来るに違いないと判断しました。3月13日に、元売、いわゆる石油の卸しをやっている企業全員に集まってもらい、系列を越えて一致団結して協力し、求めているところに一番早く対応できる会社が石油供給を行うということを決めました。二つ目は、精算の話は後にしようと。モノを納めることを優先し、精算は後でいいと合意しました。

     三つ目は、12日頃から大量に入ってきた石油製品供給要請への対応です。特に多かったのが、官邸経由で来る緊急供給要請ですね。石油連盟の職員だけでは足りないので、原則、各石油会社から2人ずつ担当者を出していただきました。会議室を1部屋全部潰してオペレーション・ルームにして、そこに12~13人の職員が24時間態勢で詰めて、特に官邸中心に下りてくる供給要請に対して、個別に供給することを始めました。

    松井英生(まつい・ひでお)氏。1975年に通商産業省(現在の経済産業省)に入省。外務省在連合王国大使館参事官、資源エネルギー庁長官官房原子力産業課長、中小企業庁次長、商務流通審議官、国際協力銀行理事などを経て、2010年3月石油連盟専務理事に就任

  • 2011/11/24

    震災を機に評価高まる都市ガスの可能性[後編]
    安定的な供給体制構築へ求められる国の役割

    東日本大震災では、地震と津波によりガスや水道、電気の供給が途絶え、大きな影響が出た。この未曾有の震災にガス業界はどのように対応したのか、また、今後のエネルギー政策に業界としてどのように取り組んでいくのかについて、日本ガス協会常務理事の池島賢治氏に話を聞いた。

    ――温暖化対策で化石燃料から代替エネルギーへのシフトが進んでいましたが、震災以降は化石燃料が再評価されています。天然ガスはどのような優位性があるのでしょうか。

    池島:天然ガスの主成分であるメタンの化学式はCH4で、熱量で比較すると二酸化炭素(CO2)の排出が一番少ない化石燃料で、環境対策の観点からも最も優れた化石燃料です。世界的に見ると、シェールガスやコールベッドメタンなど非在来型の天然ガスが利用できるようになり、ガス全体の賦存量(算出しうる潜在的な資源量)が非常に増えています。最近のレポートでは、非在来型を含めて、天然ガスの可採年数は250年と推測されると報告されました。これまで、ざっくり言って、石油の可採年数が30年、天然ガスが60年、石炭が180年といわれていましたが、天然ガスの埋蔵量がそれだけあれば、人類のこれからのエネルギーに対して、ある程度時間が稼げます。現在、LNG(液化天然ガス)の値段が上がっていますが、中長期的に見れば安定した資源として確保できると思います。

    ――天然ガス価格は、石油のように高騰しないのでしょうか。

    池島:これはなんとも言えません。少なくとも最近のIEA(国際エネルギー機関)のレポートでは、中長期的には確実に下がってくるという数字が出ています。ただ、世界のエネルギー需給関係のなかでは下がると思いますが、そのベネフィットを日本が享受できるかは別問題です。私ども、それぞれのエネルギー会社も努力しなければなりませんが、日本の国策としてどうするかということが重要です。

     例えば、同じ天然ガスでも、世界では大部分がパイプラインで輸送されています。LNG利用は主流ではなく全体の約3割にとどまります。日本は、国内から産出されるガスが1~2%で、それ以外はLNGに依存し、他国ともパイプラインがつながっていません。このような状況である限り、調達交渉が厳しいのは事実です。こうした事情を勘案し、国がエネルギーの骨格として資源確保をどう位置付けるかは重要な議論です。もちろんガス業界としての努力も必要で、産出されたガスを買ってくるだけではなく、できるだけ資源開発から参加することで、自分たちのLNGを確保し、価格を引き下げる努力をしています。

    ――天然ガスを安定的に供給するために、国としても社会インフラの整備に努力してほしいということですね。

    池島:ガス業界としての自助努力も必要ですが、国内のインフラ整備、海外とのネットワークなども含めて考えていく必要があると思います。いつまでも「アジア・プレミアム」「ジャパン・プレミアム」と言われる割高な価格でしか交渉できないようではいけない。他に代替措置がなければ、必ずビジネスはそうなります。地勢的に、日本は仕方ない面もありますが、そこを解決するような方法があるのではないかと考えます。

     例えば欧州は、多様な天然ガスソースを確保しています。1970年代に、ブラント首相(旧西ドイツ)の英断でロシアからの天然ガスの導入を開始する一方で、トルコ、バルカン半島からのルートや、モロッコ、チュニジア、アルジェリアというアフリカからのパイプラインも整備するというように、多重系の天然ガスパイプラインネットワークを構築しました。そのうえで、さらにそのネットワークにLNG基地を組み込んだエネルギー・インフラをつくりあげ、セキュリティーを確保しています。このように、長い時間をかけ、大きな構想のなかで、エネルギーがどうあるべきかを考えることが必要だと思います。東アジアは、政治的にはきわめて難しい状況にあると思います。北朝鮮、中国、ロシアなどの隣国との関係など、配慮すべきことも多いですが、そういうことを乗り越えて、真剣に、日本のエネルギーセキュリティを考えなければならない時期に来ているのではないでしょうか。

    池島 賢治(いけじま けんじ)
    1981年に京都大学大学院工学研究科修士課程(土木工学専攻)修了後、同年大阪ガス入社。都市圏営業部マネジャーを経て、2003年エネルギー事業部計画部長就任。兵庫エネルギー営業部長、エンジニアリング部長を歴任し、2010年6月、執行役員就任とともに現職。

  • 2011/11/21

    震災を機に評価高まる都市ガスの可能性[前編]
    発電と熱利用で安定的なエネルギー需給に貢献へ

    東日本大震災では、地震と津波によりガスや水道、電気の供給が途絶え、大きな影響が出た。この未曾有の震災にガス業界はどのように対応したのか、また、今後のエネルギー政策に業界としてどのように取り組んでいくのかについて、日本ガス協会常務理事の池島賢治氏に話を聞いた。

    ――3月11日の東日本大震災により、私たちはエネルギーインフラがいかに大切かを痛感しました。震災直後、LNG(液化天然ガス)基地やパイプラインはどのような被害状況でしたか。

    池島:今回の震災では、約46万件の都市ガス供給が停止しました。まず、パイプラインに対する被害ですが、お客様に近いところを通るガス管で一部耐震化が進んでいない低圧管に被害があったものの、中圧、高圧という基幹導管については基本的に被害がなかったという点では、これまでの震災と同じ状況でした。一方、これまでの地震と大きく違ったことは、製造設備が被害を蒙ったことです。特に仙台市のLNG基地をはじめ複数の製造設備が津波で被害を受け、ガスの供給源に支障が生じました。

    ――被災地での復旧はどのような状況で行われたのですか。

    池島:今回の震災では、製造所が被害を受け、ガスの供給源を失いました。これまでの地震ではガスの供給源は確保されておりましたので、壊れている導管部分を直しながら順次ガスを復旧させていけばよかったのですが、今回は、まずガスを確保しなくてはならず、そのために少し時間がかかりました。その後の復旧は、これまでの震災の経験が生きて順調に進み、また、設備の耐震化も相当進んでおりましたので、1カ月あまりの期間で、比較的早く復旧できたと思います。

    ――ガスの供給源はどのように確保したのですか。

    池島:LNG基地が津波で壊滅的被害を受けた仙台市に対しては、新潟県にあるLNG基地から仙台市に通じている高圧導管を使って天然ガスを供給する方法を取りました。また、サテライト製造所が被害を受けたところには臨時供給設備を持ち込み、LNGタンクローリーやLPGボンベなどによって、ガスの供給を確保しました。都市ガス設備は、非常に大きな揺れを感知し、ガス管に損傷の恐れがある場合、自動的にガスの供給を停止します。そのような地域が岩手県から福島県、さらには茨城県や千葉県までありました。このような広域にわたって供給停止エリアが出たことは、我々にとって初めての経験でしたが、広域の被害に対して全国の都市ガス事業者が支援する形で復旧にあたりました。

    Ikejima

    池島 賢治(いけじま けんじ)
    1981年に京都大学大学院工学研究科修士課程(土木工学専攻)修了後、同年大阪ガス入社。都市圏営業部マネジャーを経て、2003年エネルギー事業部計画部長就任。兵庫エネルギー営業部長、エンジニアリング部長を歴任し、2010年6月、執行役員就任とともに現職。

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