執筆者:有馬 純

avatar

国際環境経済研究所主席研究員、東京大学公共政策大学院 教授

  • 2014/08/13

    石油から見た第二次世界大戦
    -「持たざる国」ドイツと日本の人造石油事情-

     終戦記念日特集ではないが、前回に続き、戦争とエネルギーについて。 続きを読む

  • 2014/08/06

    第一次世界大戦100周年に思う

     2014年は欧州にとって特別な意味を有する年である。2014年は1914年の第一次世界大戦勃発から100周年、1944年のノルマンディ上陸作戦から70周年にあたる。いずれも今日の欧州を形成する大きな契機となった歴史的事件である。 続きを読む

  • 2014/07/31

    欧州のエネルギー・環境政策をめぐる風景感(その5)

    欧州エネルギー安全保障戦略

     本年5月末に欧州委員会が発表した欧州エネルギー安全保障戦略案の主要なポイントは以下のとおりである。 続きを読む

  • 2014/07/25

    欧州のエネルギー・環境政策をめぐる風景感(その4)

    ウクライナ危機の衝撃

     2014年3月のロシアによるクリミア編入はEUに大きな衝撃を与えた。これはロシア・ウクライナ間の緊張関係を高め、更にEUとロシアの関係悪化を招いた。ウクライナ問題はそれ自体、欧州のみならず世界の政治、外交、経済に様々な影響を与えているが、 続きを読む

  • 2014/07/23

    欧州のエネルギー・環境政策をめぐる風景感(その3)

     本年1月に発表されたパッケージ案について考えるには、昨年3月に発表された「2030年のエネルギー・気候変動政策に関するグリーンペーパー」まで遡る必要がある。 続きを読む

  • 2014/07/18

    欧州のエネルギー・環境政策をめぐる風景感(その2)

    高まる国際競争力への懸念

     欧州各国がエネルギーコストに神経を尖らせているもう一つの理由は、シェールガス革命に沸く米国とのエネルギーコスト差、国際競争力格差の広がりである。 続きを読む

  • 2014/07/17

    欧州のエネルギー・環境政策をめぐる風景感(その1)

    移り行く中心軸

     ロンドンに駐在して3年が過ぎたが、この間、欧州のエネルギー環境政策は大きく揺れ動き、現在もそれが続いている。これから数回にわたって最近数年間の欧州エネルギー環境政策の風景感を綴ってみたい。 続きを読む

  • 2014/07/11

    英国と原子力(その2)

     前回は差額補填契約(CfD: Contract for Difference)の基本的枠組みについて触れた。CfDが他国の固定価格買取制度と決定的に違う点は、原子力も政策支援の対象としているということだ。 続きを読む

  • 2014/07/08

    英国と原子力(その1)

     数週間前、ケンブリッジで「原子力の将来」と題する少人数のディスカッションに参加した。参加者の中には英国の上院議員、英国政府関係者、原子力規制当局関係者、英国における原子力新設に関与している企業、ケンブリッジ大関係者等が含まれ、英国における原子力の位置づけを理解する上で有益な機会だった。 続きを読む

  • 2014/07/02

    「転向者」との会話

     「転向」という言葉を辞書でひくと「それまでの方向・方針・職業・好みなどを変えること」「政治的・思想的立場を変えること。特に共産主義者・社会主義者が弾圧によってその思想を放棄すること」とある。我が国で「転向」という言葉は、何となくネガティブな語感を持つことが多いが、それはこの2番目の意味があるからだろう。

     環境保護運動の世界でも「転向」は存在する。最も顕著な例は原子力に対する立場である。例えば環境NGOの代表的存在であるグリーンピースは反核運動に起源を発するせいか、その後、地球温暖化防止もアジェンダに含めるようになっても反原発というスローガンを貫いている。しかしグリーンピースの中にも、これまでの主張を変え、地球温暖化防止のためには原子力オプションが必要だと考えるに至る人々もいる。例えばグリーンピース創設メンバーの一人で、15年間も会長をつとめたパトリック・ムーアは、のちに団体と袂を分かち、別の団体「グリーンスピリット」を興して原子力発電に賛同する立場になっている。

     先日、環境保護運動の活動家で従来の反原発から原発支持に転じた2人の人物と相次いで話をする機会があった。2005年まで英国グリーンピース事務局長であり、現在はCentre for European Reform の研究員を務めるスティーフン・ティンダール、反原発主義者だったものの、原発推進派に転じた知識人たちの声を集めた米映画「パンドラの約束」の出演者の一人であるマーク・ライナースである。彼らを含め、英国で反原発から原発支持に転じた人々を取り上げたインディペンデント紙の記事を参考までに掲げよう。ちなみに「転向」に相当する英語としてU-turn やconvert という表現が使われている。本稿の表題を「転向者との会話」としたが、より正確には「反原発という環境NGOの教義から自己を解き放った」と言う意味で「棄教者との会話」とすべきなのかもしれない。

    http://www.independent.co.uk/environment/green-living/nuclear-power-yes-please-1629327.html

     彼らに共通するのは地球温暖化問題への強烈な危機感である。もちろん多くの環境NGOが主張するように省エネルギー、再生可能エネルギーを推進すべきとの点については彼らも全く異存はない。しかし彼らは省エネルギー、再生可能エネルギーだけで温暖化に対応することは不可能だと考える。太陽光発電や風力は天候に左右され、この問題に対応するためのエネルギー貯蔵技術は未だに非常に高コストである。彼らは環境NGOの主張する省エネ、再生可能エネルギーに立脚したエネルギー戦略は数十年後の絵姿としては良いが、そこに至るまでの道筋とコストについて責任ある処方箋を描いていないと論ずる。むしろ温暖化問題に対応するためには、シェールガスを含め、利用可能なオプションは全て使うべきであり、安定的な出力特性を有する原子力はそのための重要な手段であると考える。

    マーク・ライナースとスティーフン・ティンダール

  • 2014/06/24

    不思議の国のエネルギー論議

     先日、ロンドンの著名なシンクタンクが主催するハイレベルのフリーディスカッションに参加してきた。テーマはエネルギーを巡る4つの相克(Quadlilemma)である。4つの相克とはエネルギー安全保障、環境保全、国際競争力、エネルギーアクセスを指す。エネルギーの安定供給を図りながら、温室効果ガスも削減し、エネルギーコストを抑えて競争力を確保し、かつエネルギーアクセスを有していない人々(世界の人口の26%)へのエネルギー供給を確保していくことはミッション・インポッシブルに近い難題である。 続きを読む

  • 2014/06/18

    欧州環境エネルギー補助金ガイドライン見直しをめぐって

     ブラッセルのシンクタンク Friends of Europe の主催するワークショップ 「Energy Subsidies: To be or not to be 」 に参加してきた。こうしたワークショップが開催されるには背景がある。 続きを読む

  • 2014/06/10

    久しぶりのボン(その2)
    -省エネ専門家会合に出席-

     2日間の議論を踏まえ、14日午後のADP全体会合でソコナ・再エネ専門家会合ファシリテーターと共に結果報告を行った。私の報告の骨子は以下のとおりである。なお、UNFCCCのサイトでその時のサマリー全文及びウェブキャストで私の報告の模様が掲載されている。 続きを読む

  • 2014/06/05

    久しぶりのボン(その1)
    -省エネ専門家会合に出席-

     2014年2月半ば頃、UNFCCC(気候変動枠組み条約)事務局の旧知の友人から一通のメールが届いた。3月半ばに開催されるADP(ダーバンプラットフォーム特別作業部会)において省エネと再生可能エネルギーの専門家会合を開催するが、そのファシリテーターになってくれないかという依頼である。 続きを読む

  • 2014/05/30

    私的京都議定書始末記(最終回)
    -エピローグ-

     冒頭から言い訳めいた話になってしまうが、私がこれまで書き綴ってきた始末記は、決して日本の温暖化交渉の全貌を語ったものではない。温暖化交渉戦線は京都議定書第二約束期間を含む枠組み論だけではなく、先進国・途上国の緩和目標/緩和行動のレビューの方法、市場メカニズム、資金援助、技術協力、キャパシティビルディング、適応、森林保全等々、非常に広範囲にわたる。 続きを読む

  • 2014/05/21

    私的京都議定書始末記(その44)
    -カンクン以後-

    Under Any Condition or Circumstances

     カンクンからの帰国後、2011年の年明けにかけて、COP16の結果に関する国内各方面への報告に追われた。最後まで筋を曲げなかった日本の交渉姿勢については、国内では概ね高い評価を受けた。 続きを読む

  • 2014/05/14

    私的京都議定書始末記(その43)
    -COP16を終えて-

     2週間に及ぶカンクンでの交渉を終え、日本に帰る機上で、いろいろな思いが浮かんできた。それから3年が過ぎた今、カンクンを振り返って思うところをいくつか書いて見たい。

    見事だったメキシコの議長ぶり

     まず何より、COP16を合意に導いたメキシコの外交手腕の見事さである。 続きを読む

  • 2014/05/08

    私的京都議定書始末記(その42)
    -最後の「二押し」とカンクン合意の採択-

    脚注の挿入

     COP決定、CMP決定における先進国の削減目標のアンカリングについては、同一のSB文書を両決定で言及するということで収斂したが、日本、ロシアにとって、京都議定書第二約束期間に前向きなEUと並んで自国の目標がCMP決定でテークノートされることは気持ちが悪い。何らかの形で日本、ロシアが第二約束期間に入るつもりがないことを、間接的にせよ文字に残しておきたかった。 続きを読む

  • 2014/04/21

    私的京都議定書始末記(その41)
    -土壇場の調整-

    東京との連絡

     交渉2週目に入り、争点も明確化してきたことは前回記した通りである。1週目は初日のステートメントにより、日本が「悪役」としてクローズアップされたが、2週目にはそれも落ち着きをみせていた。むしろカンクンでどのようなディールをするのか、更に言えば法的形式やアンカリングについて皆が受け入れられるような表現は何か、というプラグマティックな論点が焦点になっていた。 続きを読む

  • 2014/04/14

    私的京都議定書始末記(その40)
    -進まない非公式協議-

    カンクン交渉の「キモ」

     交渉2週目に入り、交渉のキモが明確になってきた。途上国は「カンクンで第二約束期間を設定せよ」と大合唱しているが、現実にはそれが不可能であることは誰の目にも明らかだった。 続きを読む