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地球温暖化はどこまでが自然変動か

温暖化の将来予測は仮説であり、真実ではない


筑波大学計算科学研究センター教授


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 気候変動には人為起源の温暖化の他に必ず自然変動が含まれている。したがって、地球温暖化の将来予測を行う際には、化石燃料の放出とは無関係な自然変動を差し引いて考える必要がある。この二つが正しく分離されないと、温暖化対策と称して膨大な経済的損害を被ることになる。IPCC報告にある近年の地球温暖化は、その大半が人為起源によって引き起こされていると、あたかも真実のように語られているが、検証できない将来予測はあくまで仮説にすぎない。筆者はこの温暖化の約半分は自然変動であると考えている。本稿では、地球温暖化はどこまでが自然変動なのかを、100年と1000年のタイムスパンで考察してみた。
 図1は1800年から2100年までの地上気温の経年変化を、平均的なリニアートレンド(直線)とそこからの偏差で示したもので、過去の記録と将来予測をつなぎ合わせてある(Akasofu and Tanaka 2018)。過去を見ると約0.7℃/100年のリニアートレンドに約60年の長周期変動が重なっている。図では1940年頃に温暖な時期があり、1970年までは気温が低下し、その後2000年まで急上昇し、2000年以降は温暖化が停滞している。この停滞を温暖化のハイエイタスと呼ぶ。IPCCが設立された1990年代以降は、この急激な温暖化を気候モデルによって再現するために、CO2の増加による放射強制力をモデルに組み込み、観測と一致することを示した。この頃の温暖化は指数関数的に増大して起こっているため、気候モデルによる将来予測は最大で6.8℃/100年という数値がはじき出されてる。


図1 1800年から2100年までの気温変化 (Akasofu and Tanaka 2018)

 しかし、その後2000年代になると、気候モデル予測はCO2の増加と比例するように高温な将来を予測するのに対し、観測結果は約15年もの間、温暖化が停滞したため、観測とモデル予測が大きく乖離するようになった。この矛盾を解決するために、CO2の増加とは無関係な長周期の自然変動が、気温を押し下げる方向に働いたとの説明がなされるようになった。これにより、温暖化は指数関数的に起こるという主張は姿を消し、リニアートレンドに約60年周期の自然変動が重なっているとの説明がなされるようになった。もし、この説明が正しければ、1970年から2000年までの急激な温暖化もその半分は自然変動という理解になる。この急激な温暖化の期間でチューニングされたモデルによる将来予測は過大評価になっていることが示唆された(田中 2015)。その後、2015年にはエルニーニョ(これも自然変動)が発生したが、その後は気温が下がり、図中のリニアートレンドに近づいている。このリニアートレンドを延長すると、2100年で1℃の昇温が予測される。これを赤祖父ラインと呼ぶ。
 ここまでは、少なくともリニアートレンドは人為起源の温暖化との理解で話を進めてきたが、このリニアートレンドでさえも1000年スケールで起こる自然変動の一部である、との主張がある。図2は欧米の主要な研究機関による気候モデルを過去1000年間にわたり走らせた結果である。長周期変動を引き起こすメカニズムが組み込まれていない(解っていない)ので、流体の揺らぎとして発生する内部変動(これも自然変動の一部)を除けば、長周期変動は存在せず、トレンドもない。近年観測された温暖化(0.7℃/100年)は、自然変動(ここでは内部変動)では説明できないので、これは人為起源のCO2の増加によるものである、との考察からこの部分が人為起源の温暖化としてモデルに組み込まれているのである。しかし、先入観を捨てて冷静にこの結果を見直してほしい。最新のIPCC第5次報告では、西暦1000年頃には中世の温暖期があり、1500-1800年ころには小氷期があったとされ、最近200年間は0.5℃/100年のリニアートレンドで気温が上昇している(図3)。この1000年スケールの変動は人為起源でないことは確かなので、自然変動である。その大振幅の自然変動を気候モデルは再現できないので、図のように真っ平らな気温変化にしかならないのである。もし、この未知の自然変動の原因が今後解明され、過去1000年の大きな変動とともに、近年の0.5℃/100年のリニアートレンドが自然変動で再現されたとすると、人為起源にその原因を求めた気候モデル予測の根拠は総崩れとなる。


図2 気候モデルによる過去1000年間の気温変化と近年の温暖化(近藤 2003)


図3 IPCC第五次評価報告書 Figure 5.7

 このように、地球温暖化予測はいまだに仮説であり、検証できないので真実ではない。ところが、世界中が温暖化阻止、石炭火力全廃、今すぐ行動しないとTipping Pointを超えてコントロール不能な地球温暖化地獄の世界が訪れると、まるで宗教のように危機感をあおり煽情的なポピュリズム一色になっている。そんな中で懐疑論的な発言をすると即、バッシングを食らう現状は問題だらけである。筆者の主張は根拠の薄い妄想であると言われるが、検証できないモデル予測も同様に、理論武装した妄想にすぎない。科学には多様性が大切であることを再認識して欲しい。

【参考文献】
 
近藤洋輝 2003: 地球温暖化予測がわかる本. 成山堂書店174pp.
田中博 2015: 地球温暖化のハイエイタスが自然変動によるものならば人為起源の温暖化の将来予測は過大評価となる. 伝熱 54, 226, 12-1
Akasofu, S.-I. and Tanaka, H.L, 2018: On the natural component of climate change. TGS, 14, 1-7.