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電気自動車の効率アップへの新技術


YSエネルギー・リサーチ 代表


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 電気自動車(EV)を駆動する動力は電気モーターであるが、電気モーターのエネルギー変換効率は90%前後と非常に高い。したがって、充電に使用される電気が再生可能エネルギー、あるいは原子力発電によって発電される比率が高くなれば、ガソリン車やディーゼル車との対比で見ると、一次エネルギーとしての化石燃料の消費を大きく引き下げることができる。同時に、排気が出ないことから大気汚染も起こさない。また、車体の重量を低減出来れば、さらに走行効率を上げることができる。この方向に向けて、車体を樹脂化することは既に進展しているが、このほど、EV用モーターの重量を大きく引き下げることができる技術が開発されたという情報を最近知った。

 ドイツのFraunhofer Institute for Chemical TechnologyとKarlsruhe Institute of Technologyが共同開発したものだが、電気モーターの構造を基本的に見直し、発熱を大幅に抑制することによって、繊維強化プラスチックをモーターの構造部材に使用できるようにしたものだ。電気モーターには直流モーターと交流モーターがあるが、EV用には主として交流モーターが使用されている。交流モーターは回転子(ローター)が外側の固定子(ステーター)の中に納まり、全体を金属製の外殻が覆っている。固定子は12個あり、それぞれに電線(銅)が巻き付けられたコイルになっていて、それに供給する交流電力の周波数を変えることによって、モーターの回転数を変えてEVの速度を制御している。コイルの電線には抵抗があるために、電気が流れるときに発熱する。その熱をどこかに逃がしてやらないと高温になりモーターは壊れてしまう。それを防ぐために、流体(普通は水)で熱を吸収し、外殻のフィンから大気中に放散することで、固定子の温度が上がりすぎないようにしている。

 いま使われているコイルの電線の切り口は円形だが、今回発表された新しい方式では、切り口が四角い扁平の電線を使っている。そうすることによって、この電線を固定子に巻き付けたときに、相互の密着度が大幅に上がり、熱の移動が早くなるために固定子の温度上昇を大幅に少なくできる。その結果、モーターの電気密度が上がり効率が上がるのみならず、外殻を含めた全体の部品を、金属から、熱伝導度は低いが大幅に軽い繊維強化プラスチックに変えることが可能となり、モーター全体の重量を大幅に下げることができる。これによって、このモーターを使うEV自体の重量が低減されることになるから、走行に必要なエネルギーも少なくなるという好循環が生まれる。また、モーターの外殻部分を樹脂加工で作ることが出来るため、製造時間とコストも大幅に下がることにもなる。

 この新型モーターはこれからベンチテストに入るそうだが、これが順調に進展すれば、EV業界に大きなインパクトを与えることになるだろう。EVのコストが下がることで普及が促進され、環境負荷をさらに大きく低減することになると期待される。今後の動向をフォローする必要があるだろう。