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3年目に突入するトランプ政権のエネルギーなど主要政策と今後の見通し


環境政策アナリスト


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 米国は中間選挙を終え、トランプ政権は3年目に突入し、1月3日、116回議会が初召集された。中間選挙では共和・民主両党がそれぞれの地盤をより強固なものにしたと考え、それぞれに勝利を宣言している。上院では共和党が弱いとされたテキサス州とテネシー州で議席を確保し、民主党が弱いとされたインディアナ、ノースダコタ、ミズーリ、フロリダ各州の議席を得た。下院では民主党が多数を得たが、中間選挙で大統領与党ではない政党が下院で過半数を得るのは珍しいことではない。しかし、トランプ大統領への支持率低迷にも関わらず民主党の議席が思った以上に伸びなかったのは米国の政治地図のシフトは大きくなかったことを物語っている。中間選挙を終え3年目に突入するトランプ政権の主要な政策への影響を整理する。

通商政策への影響

 民主党はトランプ政権の政策に全面対決姿勢を見せている。また、トランプ大統領の高圧的な姿勢からして下院民主党首脳部はトランプ政権通商政策に対して非協力体制を崩さないだろう。とは言うものの自国民労働者保護は元来民主党の党是でもあり、トランプ大統領と下院民主党間の通商政策における利害調整は複雑になるだろう。したがって、民主党は新政策を打ち出すのではなく現行のトランプ政権の個々の通商政策へのチェックが主となっていくだろう。また昨年末のG20サミットで締結された米国メキシコカナダ協定(NAFTAに代わる同三カ国間の自由貿易協定)も、民主党はトランプ大統領の政治的勝利を希釈させる目的のためだけに上院での批准を遅らせる動きに出ている。対中国貿易問題については、大統領の戦略がさまざまに議会の批判を招いているものの共和・民主両党は中国が米国の経済安全保障への脅威になっているという点では一致しているので、議会が大統領の対中制裁にブレーキをかけるという対応はしないものと考えられている。

エネルギー政策への影響

 エネルギー政策において下院エネルギー商業委員会はトランプ政権のエネルギー・環境政策に対して一層の監視を強化すると見られている。同委員会はまずジンケ内務省長官、ペリーエネルギー省長官、ウィーラー環境保護庁長官代行を呼んでエネルギー・環境政策に関する聴聞会を開くものと考えられている。特に内務省および環境保護庁における相次ぐ不祥事について追及するものと見られている。また、下院と上院でねじれが生じたために超党派の法案の提出可決の見込みは少なくなったが、エネルギーインフラとサイバーセキュリティー関連部門は例外である。共和・民主両党はエネルギー部門に関わるインフラ整備について妥協の道を探っている。特に重要な分野は、より堅牢なシステムを求めた電力の送配電部門インフラへの資金提供である。また共和・民主両党とも、エネルギー分野のサイバーセキュリティーは国家安全保障においてとりわけ重要であると考えている。
 ユッカマウンテン使用済燃料処分場プロジェクトについては、中間選挙は前向きの可能性をもたらした。民主党のローゼン候補が接線の末共和党のヘラー現職上院議員を破った。ヘラー議員はユッカマウンテンプロジェクトに対して強く反対をしていた。共和党も党としてはユッカマウンテンプロジェクトを前進させたいものの、ヘラー議員に反対を言わせ地元有権者の票を獲得することを優先させてきた。ただし、民主党がユッカマウンテンプロジェクト推進にどれだけ同調するか見通しは定かではない。

 中間選挙は改選を迎える州知事選挙も行う。また、州によってさまざまな住民投票によるイニシアティブに対してその可否を問うのが一般的である。場合によっては州レベルの動きの方が連邦のそれより直接的にエネルギー政策への影響が大きいことがある。
 ワシントン州においてはカーボンプライシング制が提案された。2020 年炭素1トンあたり15ドルを課し、以降毎年2ドルずつ引き上げる。その用途は環境関連プロジェクトに充てるという、イニシアティブ1631という提案である。同様の住民投票が2016年になされ、否決されたが、今回も否決となった。
 ネバダ州ではクエッション3と呼ばれる小売電力市場自由化に対して州民はこれを否定した。ネバダ州では住民投票は二回続けて可決しなければならない。クエッション3は2016年に提案されそのときは可決された。今回否決なのでこの州民投票は不成立ということになる。同州でRPSを25%から2030年までに50%に引き上げるクエッション6という住民提案があったが、こちらは可決された。このイニシアティブが実現するためには次回の選挙時にふたたび可決されることが必要となる。
 アリゾナ州においてはRPSを12%から2030年までに50%に引き上げるプロポジション127という住民提案を否決した。アリゾナパブリックサービスという電力会社はこれに反対するために3000万ドルを投じたとされる。
 オハイオ州知事選では共和党デワイン候補が民主党候補を退けたことにより、さまざま曲折のあった、2027年に12.5%導入を目標とするRPS制度の凍結に道筋をつけることになるものと見られている。2016年当時のケーシック知事は共和党が多数を占める州議会からRPS実施凍結を2年延長する法案に対して短期・長期的経済成長を妨げるとして与党共和党の意向に反して拒否権を発動した。しかしながら、共和党のデワイン候補が知事に当選したことにより、引き続き共和党が多数を占める議会から同じ法案が出された場合拒否権を発動せずRPS実施凍結に同意するものとみられる。RPS導入州のRPS見直しの動きに一石を投じる可能性がある。
 カリフォルニア州では2017年に通過している、高速道路メンテナンス財源のためのガソリン・ディーゼル課税を無効化することを問う住民投票プロポジション6は否決された。カリフォルニア州のガソリンは全米で最も高い。そのほか原油・天然ガス掘削にかかわる規制強化住民投票がコロラド州、アラスカ州、フロリダ州において行われ、コロラド・アラスカ両州では規制強化が否認され、フロリダ州においては規制の一層強化が支持されている。
 連邦レベルでは下院を制した民主党は環境規制強化を訴えており、再生可能エネルギー補助、炭素税導入、石油天然ガスに関する税控除廃止を主張し、共和党およびトランプ政権との違いを際立たせる見通しである。
 

2020年大統領改選への見通し

 中間選挙を前後し、セッションズ司法長官、マティス国防長官辞任が発表され、さらにジンケ内務長官、ムニューシン財務長官が辞任するものと見られており、閣僚の刷新が行われる予定である。そんな中2020年大統領再選の見通しはこれまでの政策が支持され続けていくかによることになる。たとえば中国への貿易制裁であるが、米国も中国への輸出への依存は大きく、その中心的品目は大豆である。ノースダコタ州は米国の大豆一大生産州であるが、同州のクレーマー上院議員はマイナスの影響を受けている州民に忍耐を訴えている。クレーマー議員は同州の下院議員としてトランプ候補の大統領選のエネルギー担当のスポークスマンであり、以後ずっと中核的支持者を自ら任じてきている。共和党が圧倒的に強い同州であるが、州民がより大きな利益を求めて、どこまでトランプ政権の通商政策を支持しつづけるか対中政策をみるためのひとつの目安となろう。
 もうひとつの要素としては、一貫して低い大統領への支持率である。トランプ大統領は逆にいえばキリスト教保守層を中心とした岩盤支持層に助けられている面もあるが、ただ、民主党が下院を制した今一層のスキャンダル追及、政権への監視機能強化、予算をめぐる攻防の中でどのくらい共和党支持者が大統領を支持し続けるかがポイントとなる。しかし、2020年の選挙イヤーで民主党がチャンスを得るには、これまで以上に強い大統領候補を出す必要があるが、今のところ民主党はこの点成功しておらずその動きに注目したい。

出典:
国際技術貿易アソシエイツ
グリーンテックメディア 2016年12月27日付け
日本産業機械工業会情報報告
バロットペディア Elections in Washington