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業務用固体電解質燃料電池、普及の足音


YSエネルギー・リサーチ 代表


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 昨年の9月25日に、本コラムで業務用固体電解質燃料電池(SOFC)が新たに商品化されたことを紹介し、今後への期待を述べたが、その普及に向けた補助金が具体的に設定され、申請の募集が昨年6月から始まった。これまでに8次募集まで行われている。その中で4次募集には応募がなかったようだが、これまでに7次募集までの結果が発表されていて、17カ所への設置が決まっている。具体的な内容を調べてみると、200kW、4.2kWがそれぞれ1基ずつある他は全て3kW規模のものとなっていた。設置コストも含めたシステム価格の3分の1を上限とする補助金が支給されるが、その条件の一つに、熱回収も含めた総合効率がLHV(低発熱量)基準で60%を超えるものという項目があり、50%ほどの発電効率だけでそれを達成することは難しいため、排熱を利用できる熱需要(給湯、空調)があるところに設置する必要がある。

 3kWの設置先を見ると、この程度の規模の設備が設置される場所の将来像が示されていると思えるものがある。広く知られているレストランチェーンが、そのお店にこの燃料電池を設置しているのだが、1つのチェーンだけではなく、牛丼(吉野家)、ラーメン(博多ラーメンげんこつ)、かつ・焼き肉など(喜楽)、ハンバーグなど(ワイ・テイ・ワイ産業)と、業態が異なったものが4つもある。さらに、この補助金対象には名前が出ていないファミリーレストラン(スカイラーク)が静岡の店舗に3kWのSOFCを設置すると新聞発表し、温暖化ガスの排出量が少ない燃料電池を設置することによって、顧客から環境に配慮した企業だと評価して貰えることを期待しているとしている。ここで名前が出ているだけのチェーンが抱える店舗の数を合わせるだけでも優に5千店を超えているが、性能と耐久性が確認されれば、他のチェーンにも設置が進むと想定することに無理はないだろう。政府の示した業務用燃料電池開発のロードマップでは、現時点の小規模容量のもののコストがkWあたり数百万円であるのが、2040年以降には50万円を切り、設置規模も年10MWになるとしているのも、このような市場を中心に想定しているはずだ。

 発電効率や総合効率が高い燃料電池の導入を通じて、二酸化炭素の排出抑制効果を、環境改善に貢献する企業としてのイメージ向上に利用したり、傘下店舗のエネルギー効率を大きく向上させるような経営努力が行われたりするだろう。さらには、1つのレストランチェーンが、店の消費電力や熱需要を勘案した規模のSOFCを設置する数が増えると、傘下のチェーンストアが持つSOFC発電設備全てを情報ネットワークで結び、全体なり地域単位で一元的制御することもできる。そうなれば、一種の小規模発電所を運用していることになり、新たに電力事業を開始することも可能となる。また、この電源は応答性が非常に高いところから、天候によって出力が変動する太陽光・風力発電が原因となる送電系統の不安定化を抑制するように制御するアンシラリー・サービスを送電事業者に売るという事業を始めることも想定できる。

 ここで述べたことはあくまでも期待であって、どこまで実現するかは何とも言えないが、業務用規模のSOFCの潜在力を評価したものだと受け止めていただければ幸いである。なお、http://www.fca-enefarm.org/subsidy_industrial/index.htmlで、補助金の募集、採択結果を見ることができる。

 奈良県で第一号となる3kW SOFCが設置されたレストランが、拙宅から車で15分ほどのところにあることが分かり昼食にでかけた。幾つものレストランが集まっている道路沿いの一角にあるお店と、その裏に設置されている3kW SOFCと貯湯槽の写真を撮影させて貰った。