トランプ政権の環境エネルギー政策2017(6)

原子力政策、小型モジュール開発


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授


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 トランプ政権は、2017年5月23日、2018会計年度(17年10月~18年9月)の予算教書を公表し、議会に提出している。議会での承認前だが、予算配分としては、国防省や国家安全保障省など防衛予算を540億ドルに引き上げる一方、その他の部門での連邦予算は削減されている。エネルギー省(DOE)は、化石エネルギー、電力、原子力、エネルギー効率、再生可能エネルギー、科学研究開発、環境管理などの政策を担当しているが、全体予算案では前年度の297億ドルから17億ドル削減(5.6%減)の280億4200万ドルである。2017年1月のトランプ政権発足後、原子力政策について明確な方針が見えなかったが、予算案からようやく原子力政策の方向性が見えてきた。

小型モジュール炉(SMR)の支援継続

 原子力関連予算としては、原子力発電設備の増強予算を前年度より14億ドル増額。オバマ前政権が中止していた原子力発電所で発生する使用済燃料の処分場計画であるユッカマウンテン(ネバダ州)の承認手続きの再開、および中間貯蔵プログラムの開始のために、1億2,000万ドルを計上している。また、原子力科学技術プログラムの初期段階R&Dを重視しており、次世代小型モジュール炉(SMR: Small Modular Reactor))のR&Dに2000万ドルを計上しているのも注目すべきだろう。

 アメリカで稼働中の原子炉は99基あり、世界最大の原子力大国だが、近年はシェールガスの生産増大で天然ガス価格の低下により発電コストが下落している。原子力といえども天然ガス火力との競争が厳しい状況になり、既存の軽水炉の新規建設が難しい課題に直面している。オバマ前政権とエネルギー省は、経済性と気候変動対策の観点からSMRの開発を積極的に推進してきた。

 SMRは、既存の軽水炉に比較して、小出力設計でシステムが集約されたモジュール構造が特徴である。最大60万キロワットの小出力設計で、約3年という短い建設期間は、初期コストの低減になることが期待されている。冷却水の重量や自然循環を利用する受動的システムを採用することにより、高い安全性を確保できるとされている。ポンプなし、電源なし、外部からの水の注入なしで30日間の冷却が可能である。

 2014年5月、オバマ前政権下でエネルギー省は、設計メーカーのニュースケール社製のSMRに対して、5年間で最大2億1700万ドルの許認可費用の補助を決定していた。今回の予算案では、SMR設計への支援はトランプ政権においても継続される見通しである。アイダホ州にあるエネルギー省所有のアイダホ国立研究所内で、2026年に営業運転開始の予定である。また、テネシー州ではテネシー渓谷開発公社(TVA)が建設候補地としてクリンチリバー・サイトの立地調査を完了しており、昨年10月に営業運転を開始した軽水炉ワッツバー2号機に続き、SMRの建設に向けて計画を進めている。SMRの建設はこれらの2地点が選定済である。

出典:ニュースケール社 SMRプラントの概要出典:ニュースケール社 SMRプラントの概要
http://www.nuscalepower.com/smr-benefits/economical
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 ニュースケール社は、他の米国西部の州(ワシントン、アリゾナ、ワイオミング、ニューメキシコ)でもSMR新規建設に向けた活動を展開中である。

ペリー長官が原子力推進を表明

 今年6月27日、エネルギー省のリック・ペリー長官は、ホワイトハウスでの記者会見で、クリーンエネルギーのポートフォリオ(構成)としてゼロ・エミッション電源の原子力発電が不可欠であることや、先進的な原子炉、小型モジュール炉の技術開発を行うことは、世界のクリーンエネルギーのポートフォリオを発展させていくために重要だと述べている。温暖化を認めていないトランプ政権も人為的な原因による温暖化を認めていると示唆される発言でもあるが、米国のリーダーシップのもと、安全対策を徹底し、高い経済性を確保することも表明している。

“I believe no clean energy portfolio is truly complete without nuclear power, and so does the President. If you want to see the environment and the climate that we live in affected in a positive way, you must include nuclear energy with zero emissions to your portfolio. Do it safe, do it thoughtfully, do it economically. Under the leadership of the United States, the world can benefit from that. This administration believes that nuclear energy development can be a game-changer and an important player in the development of our clean-energy portfolio globally. I believe we can achieve this by focusing on the development of technology, for instance, advanced nuclear reactors, small modular reactors. “
(ペリー長官の会見より一部抜粋)

出典:Nuclear Energy Institute

出典:Nuclear Energy Institute

 一方、最近の原子力発電所(軽水炉)をめぐる動きとして、ウェスチングハウス(WH)の経営破綻で、米電力会社デューク・エナジーが、今年8月25日、原発建設計画を撤回することを発表している。同州のVCサマー原発建設計画の見直しが、州政府、州議会で電気料金に関する議論を引き起こしており、規制州のサウスカロライナ州においても原発の建設に関する料金保証が現在不透明になっていることも背景にあるものと思われる。いずれにせよ米国での原子力の新設計画は、より小型で安全性の高いSMRへシフトしていくと思われる。



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