急低下した海外の太陽光発電システム価格

その理由と日本企業の商機は?


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授


(「月刊ビジネスアイ エネコ」2017年3月号からの転載)

 2012年から始まった固定価格買い取り制度(FIT)により、太陽光発電を中心に再生可能エネルギー市場が急拡大しました。15年度の太陽光発電の累積導入量は33GWに達する見込みです。しかし、日本の太陽光発電のコストは世界的にも高く、コスト低減が課題です。一方、海外では太陽光発電システムの価格が急速に低下しています。

急速な価格低下の理由は?

 国際エネルギー機関・太陽光発電システム研究協力プログラム(IEAPVPS)の「太陽光発電応用動向報告書(Trends 2016 in Photovoltaic Applications )」(第21 報)によると、15 年の世界の太陽光発電システムの新規導入量は前年比26.5%増の約50.7GWでした。国別導入量をみると、トップは中国の15.15GWで、日本10.8GW、米国7.3GWと続きます。15年末時点の世界全体の太陽光発電システム累積導入量は228GWに達しています。
 IEA PVPS 加盟国の系統連系タイプの太陽光発電システムの指標的設置価格をみると、国によって価格差が大きいことがわかります。日本は、他の国と比べて、住宅用・商業用・地上設置型の発電コストがもっとも高いレベルにあり、中国と比べると約2倍のコストとなっています。 
 太陽光発電の事情に詳しい資源総合システムの調査事業部部長・上席研究員の貝塚泉氏に、太陽光発電の最新動向をうかがいました。

太陽電池モジュールの価格が低下している

―― 海外で太陽光発電システムの価格が急速に低下している理由は?
 「太陽電池モジュール、周辺機器、ソフトコストやマージンが低下したためです。シリコン原料価格の低下と生産過剰によりモジュールの価格が低下し、FITの買い取り価格引き下げや入札制度の導入などにより事業者間の競争と合理化(集約化)が進みました。また、専用のくい打ち機を使うなどEPC(設計・調達・建設)での効率化が進んだことから、15年から16年にかけて入札制度での電力購入契約(PPA)価格が急速に低下しました」

――海外ではどのくらいまで低下しているのでしょうか
 「PPAの入札価格は、中南米のチリや中東のUAE(アラブ首長国連邦)では3セント/kWh(約3円)を切るまでになり、他の電源と比較しても競争力のある電源になっています()。チリやUAEの日射量は日本の約2 倍あり、発電量が多ければ価格は安くなります。また、中東は太陽光の電力を買い取るのが国営企業で、倒産リスクがないことから事業の資金調達コストも安くなります」

―― 日本でも2017 年10 月から、2MW以上のメガソーラーで入札制度が導入される予定です。コスト低減が促進されますか?
 「できるだけ安い価格で入札しなければプロジェクトを獲得することができません。15年の世界の太陽光発電システムの年間導入量に占める入札プロジェクトの割合は5.6%ほどですが、今後世界で採用され、割合は増えていくと思われます。しかし、日射量などさまざまな条件により決定しているPPAの入札価格は、平均的な太陽光発電価格ととらえるのではなく、個別の事例としてみるべきでしょう」

日本のメガソーラー(写真と本文は関係ありません)

日本の太陽光コストは高い

―― 日本の太陽光発電コストが世界でもっとも高い理由は?
 「海外と比べると、日本はまず工事費が非常に高い。経済産業省『太陽光発電競争力強化研究会』が2016年10月に発表した報告書の『非住宅用太陽光発電システム価格の内外価格差』をみると、国内の非住宅用太陽光発電システムの価格は、欧州の約1.9 倍です。パワーコンディショナ(PCS)の価格差は約2.5 倍、架台や設置工事価格は約2.1倍となっています。日本は大規模開発に適した平らな土地が少ないため、造成が必要です。メガソーラー案件は建築事業法によりライセンスがないと建設できないため、建設会社やエンジニアリング会社が施工の元請けとなり、一次下請、二次下請、三次下請、四次下請が作業をしています。こうした産業・業界構造がシステム価格の高さにも影響を与えています」

――海外の産業・業界構造は?
 「欧州など海外では、FIT価格の低下に伴い、太陽光発電専門のEPC事業者、デベロッパーが主要プレーヤーとなり、資材調達や設計仕様、最適工法まで徹底してシステムコストを削減しています。日本のメガソーラーはまだ成熟途上にあります」

自動くい打ち機の登場で太陽光発電システムの建設が効率化された

日本企業に商機はあるか?

 資源総合システムの予測では、日本の17年の太陽光発電市場は16年より縮小するものの、7.5~ 8.5GWの導入が見込まれています。北海道や九州をはじめ各地で系統連系の制約問題が生じていますが、東京電力、関西電力、中部電力管内ではまだ空き容量があります。
 「日本のFIT価格は世界的にも高いため、ドイツ、米国、タイなど外資のデベロッパーが日本市場に続々参入しています。17年度のFIT 価格が21円に下がりもうからないと言う人もいますが、正確には誰でももうかるのではなく、工夫しなければもうからなくなったのです。海外のデベロッパーは合理化を徹底して競争を勝ち抜いてきていますので、21円でも事業性があるとみています」

―― 太陽光関連事業の海外展開で日本企業に商機はありますか?
 「テスラモーターズと連携し、北米で事業を展開しているパナソニックが良いビジネスモデルです。テスラはパナソニックと協力し、ネバダ州スパークス郊外で蓄電地工場の建設工事を14年6月に開始し、さらにニューヨーク州バッファロー工場で今年夏から太陽電池セルとモジュールの生産を開始する計画です。カリフォルニア州フリーモントにある研究施設では、次世代太陽電池技術の開発も行う計画です。アジアでは現地企業とのジョイントベンチャーでなければ入札に参加できないことも多いことから、“ジョイントベンチャー” が商機の1つです。また、蓄電池と組み合わせた“地産地消”のビジネスモデルにも活路があると思われます」
 太陽光発電ビジネスは、競争力の高い事業者が生き残る時代に突入しています。


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