英国のEU離脱が変える原子力政策


国際環境経済研究所所長、常葉大学経営学部教授


 英国のEU離脱は様々な影響をもたらすが、そのうちの一つは気候変動問題への取り組み政策だ。EU28カ国が共同で気候変動枠条約事務局に提出していた2030年の温室効果ガスの排出目標は当然見直されることになる。この辺りの話はWedge Infinityに掲載される予定なので、そちらで是非お読み戴きたい。温暖化は発生していないと主張する温暖化懐疑論者がEU離脱派の首脳には多かったことから(詳細については、Wedge Infinityに掲載した「トランプ似の前ロンドン市長もトランプも温暖化懐疑論者なのはなぜか?」をお読み下さい)、誰がキャメロン首相の後継首相になるかにより英国の温暖化政策は変わることになるだろう。
 EU離脱の影響はエネルギー・原子力政策にもある。フランスEDFが中国企業と建設を進めているヒンクレーポイントC原子力発電所から発電される電気については、英国政府が35年間に亘り固定価格で買い取る、差額保証契約(Contract for Difference)が締結されている。この契約については政府の補助金に相当するとして欧州委員会(EC)が審査し、承認した。
 EUを離脱すれば、どのような財政支援を行うことも自由になり、原子力発電所の建設については、英国政府の選択肢は大きく広がることになる。東芝・ウエスティングハウス、日立がこれから英国で建設を予定している原子力発電所についてはプラス効果になる可能性がある。
 EUは現在エネルギー同盟を通し、エネルギー安全保障、エネルギー効率改善、気候変動問題等に取り組んでいる。EU離脱が直ちに英国に安全保障上の問題を引き起こすわけではないが、自給率の落ち込みが続いている英国はより供給源の多様化を進めることが必要になる。
 英国の天然ガス、石炭生産量の推移は、それぞれ図-1、図-2の通りだ。共に生産量は大きく落ち込んでいる。20世紀前半に年産3億トン近くに達した石炭生産量は、坑内掘り炭鉱の閉鎖により、ゼロに近づいている。エネルギー自給率の向上策を考えると原子力発電はその重要度を増す可能性が高い。電力市場を自由化した英国では、図-3の通り発電設備の減少が続いていることも追い風だろう。

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 一方、英国政府は、気候変動、温暖化問題への対策として低炭素電源、原子力発電に注力している側面もある。EU離脱が原子力発電にマイナスの影響をもたらすとすれば、離脱派の首脳に温暖化懐疑論者が多かったことだ。温暖化は起こっていないとする立場に立てば、低炭素電源としての原子力発電の利点は失われる。
 キャメロン首相の後継者が誰になるのかにより、政策も変わることになりそうだ。


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