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拡大する欧州の原子力支持国


国際環境経済研究所所長、常葉大学名誉教授


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(「EPレポート」からの転載:2021年11月17日付)

 欧州では原子力発電推進に熱心な国がある。発電量の7割を原子力に依存するフランスは当然として、温暖化対策に熱心な英国。さらに、石炭、あるいはロシア依存の天然ガスからの脱却を図りたいポーランド、チェコなどだ。中にはフィンランドのように、欧州委員会(EC)に対し原子力発電を持続可能な事業に分類するように単独で働きかける国も出てきた。いま天然ガス価格と電気料金が急騰した欧州のエネルギー危機と気候変動対策の強化が、欧州の原子力発電支援国を増やしている。

 欧州主要国が脱石炭を進めた結果、天然ガス火力の発電量が欧州では増加していた。そんな状況下で、コロナ禍からの回復により電力需要量が増加していた今年前半、風力発電量が落ち込んでしまった。結果、天然ガス使用量がさらに増え、天然ガス価格は昨年春の10倍以上になった。おまけに二酸化炭素の排出枠価格も年初の2倍以上の市場最高値をつけたため、電気料金は大きく上昇した。

 電気料金抑制のため、欧州20カ国が税免除、補助金投入を行うことになった。フォン・デア・ライエンEC委員長は、電力の安定供給には原子力、加えて脱炭素への移行期間中には天然ガスも必要と認めざるを得ず、フランスなど欧州10カ国のエネルギー、環境大臣が、欧州主要紙に「再生可能エネルギーでは安定的な電力供給は困難なので原子力発電が脱炭素には必要」と共同の意見広告を行った。10月末には、さらにスウェーデンとオランダも原子力発電支援の姿勢を明らかにした。

 一方、英国で開催されたCOP26の最中11月上旬にはオーストリア、デンマーク、ドイツなど5カ国が、ECが議論している持続可能な案件の対象に原子力を含むことに反対すると表明した。欧州内で進む原子力推進を牽制する動きだが、COP26では、パリ協定で努力目標とされた1.5度の気温上昇抑制が実質的な目標となったため、再エネと並び、原子力の活用は温暖化対策として必須になってきた。いまだに再稼働も十分に進まない日本は脱炭素の道筋をどう描くことが可能なのだろうか。



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