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独脱原発による料金上昇は税金で回避


国際環境経済研究所所長、常葉大学名誉教授


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(「EPレポート」より転載:2022年1月21日付)

 福島第一原発事故の後、ドイツでは反原発の声が高まった。11年11月に発表された英BBCによる主要国の世論調査では、ドイツでは「直ちに閉鎖」が2005年調査から倍増し、52%になった。日本では、「既存設備を利用新設はしない」が57%、「直ちに閉鎖」が27%だったが、英国では「新設すべき」も37%あった。ドイツ国民の突出した反原発が浮き彫りになる。

 この世論を受け、メルケル前首相は当時の17基の原発の段階的閉鎖を決めた。昨年運転していた6基のうち3基が年末に閉鎖された。残り3基も22年末までに閉鎖される予定だ。21年の発電量690億kWh、発電シェア11.9%(速報値)を持つ原発の閉鎖に伴い、二酸化炭素(CO2)排出量が増加することから、欧州の識者が連名で閉鎖反対の声明を出したが、ドイツの新連立政権は閉鎖の方針を変更しない意向を示している。21年発電シェア40.9%の再エネ発電量を30年までに80%に引き上げ減少分を補う方針だ。

 脱原発が招くのはCO2排出量の増加だけではない。平均の発電コスト増に加え排出量取引制度下のCO2排出枠購入に伴う負担も増える。21年前半1kWh当たり32ユーロセント、欧州一高い家庭用電気料金は値上がりすることになる。当面の供給は、価格が不安定な天然ガスに依存することになる。脱原発・脱石炭に備えロシアから直接輸入する天然ガスの量を増やす計画だが、電気料金はさらに上昇する可能性がある。

 電気料金上昇に関しては、独政府は既に手を打っている。21年に6.5ユーロセントだった再エネ賦課金額は、今年1月から3.7ユーロセントに減額された。新政権は23年1月に賦課金額をゼロにする予定だ。減額分の負担は税投入で行うことになる。コロナ禍での電気料金上昇を避けるため既に税投入により負担額を抑制しているが、脱原発による電気料金上昇を避けるには、税投入を続け消費者負担額を肩代わりするしか方法はないのだろう。消費者は脱原発による電力コスト上昇を知らないままかもしれない。



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