第1回 自動車産業は「技術革新」と「総合的アプローチ」がカギ〈前編〉

日本自動車工業会 環境委員会温暖化対策検討会主査/日産自動車グローバル技術渉外部 担当部長 圓山 博嗣氏


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

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自動車業界の低炭素の取り組みのポイント

――パリ協定後の低炭素に向けた取り組みのポイントは?

圓山:できるだけ化石燃料を使わない、そしてモーターで走らせることが一番大きいポイントです。ハイブリッドは電動技術を応用して、電気と内燃機関がミックスして一緒に走りますが、日本の新車市場のシェアで2割を超えて当たり前の技術になってきています。それを超えるゼロ・エミッション車のEV、FCVが普及していくとCO2削減効果も大きくなるでしょう。ゼロ・エミッション車のコストダウンが大きな課題で、各社が取り組んでいる状況です。EVは、航続距離の問題を解決しなくてはなりません。

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出典:日本自動車工業会

 一方で、内燃機関もまだ改善の余地があります。内閣府が中心となり「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)」という計画を組んでいますが、日本は従来、産官学連携は非常に弱かった。日本の自動車メーカー14社が、皆、競争しながら莫大な投資を行い、同じ研究開発をしてきたわけです。

 一方、ドイツなどの自動車メーカーは、分野によっては産官学が協調して技術開発に取り組み、長年、皆が出資し合って共同開発するコンソーシアムができています。そうした取り組みが日本でもようやく始まり、内燃機関についても現在の熱効率40%程度を大幅に上回る50%を目指した研究が進んでいます。

――やはり次世代自動車が低炭素対策の柱ですか?

圓山:はい。次世代自動車は、世界中のメーカーが技術を競い合っています。しかし、研究開発費が膨大ですので、日産ではルノーやダイムラーとの共同研究開発をやっています。いろんなアライアンスが組み合わさることで技術開発が進みます。コストダウンが普及を加速しますので、私たちメーカーはコストダウンへの努力を続けています。

 一方、政策的なインセンティブも必要です。エコカー補助金やエコカー減税など、インセンティブ政策とメーカーの技術開発の努力があいまって普及が加速していきます。普及が加速していくと自然とコストは下がっていきます。日本の自動車技術は国際的にも非常に高いレベルですので、普及を推進し、世界のCO2対策に貢献したい。

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現在、次世代自動車の保有台数は約515万台(推計値)。保有車の約6.7%。出典:日本自動車工業会