米国のコージェネレーション


YSエネルギー・リサーチ 代表


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 米国でのコージェネレーション(CHP、熱電併給)は、連邦法であるPublic Utility Regulatory Policies Act (PURPA:公益事業規制法) 1978導入により普及が促進された。PURPAはオイルショックによる石油価格の高騰に対応するために、再生可能エネルギーなどの利用によるエネルギー自給率とエネルギー効率向上を目指した法である。そのなかで、コージェネからの電力を、電力会社の回避可能コスト(Avoided Cost:限界発電コストとほぼ同じ)という高い価格で、電力会社による買い取りを義務づけたことからコージェネが飛躍的な普及を見せた。

 だが、電力会社にとっては、コストが高くつくと同時に、運転を自分で制御できないということから忌避感が強くなり、さらには、2005年にこのPURPAのインセンティブの内容が変更されたために普及が落ち込んでしまい、この低落状況が現在まで続いてきた。しかし、いまコージェネ市場が新しい拡大を始めようとしている。一つには天然ガス価格が下がったことがある。さらには、コージェネのエネルギー効率が高いためにkWh当たりの二酸化炭素(CO2)排出量を低くできることから、気候変動対策を重要政策とするオバマ大統領の方針を背景に、EPA(環境保護局)とEPRI(電力研究所)が推進に向けた具体策を繰り出しているからである。

 一方、CO2排出量が多い石炭火力発電所は、既存のもの、新設計画、いずれについても従来の発電方式では存続が難しくなっている。石炭火力発電所からのCO2排出量を抑制するために、排出ガスからCO2を捕捉し、貯留するCCS (Carbon Capture & Storage) 技術の開発が進められているが、もし近傍で熱需要をとりまとめて発電所から供給することができれば、極めて有効な温室効果ガス排出抑制策となる。このため、石炭火力の存続に向けて、発電所からの熱を利用することによってコージェネにする計画の具体化が進められている。これまで石炭火力は、街から離れたところに作られてきたのだが、最近、熱の需要が多い工場設備が集まっている地域に新設、あるいは、既存のものの近くに工場を誘致して熱をパイプラインで供給することによってコージェネにし、発電単位量あたりで排出されるCO2の比率を大きく下げようとする方式が具体化しつつある。今後地球温暖化対応が必然だと受け止める発電事業者の判断だと言える。

 また、巨大ハリケーンなどによる災害によって長期停電を余儀なくされた都市で、天然ガスコージェネを利用して地域の電力供給網をマイクログリッド化し、エネルギー消費の効率化と安定供給を実現するプロジェクトが、カリフォルニア、ニューヨーク、テキサス州など各地に広がっている。再生可能エネルギー、コージェネなどの分散型電源がスマート化したグリッドに組み込まれて制御されるようになり、電力事業者に受け入れやすくなっていることもあるだろう。

 この動きの中で、EPAが2015年8月に新しく策定したClean Power Plan(CPP)は、石炭火力も含めたコージェネ普及の鍵を握ると考えられた。この計画は、発電所での石炭消費量を減らすと同時に、再生可能エネルギー、天然ガスを利用する電力を増加させようとするもので、2030年までに発電部門からのCO2排出量を、2005年比32%減らすことを目標としている。そして、各州に対して、この9月6日までに具体的対応策を提出、あるいは、延期が必要であれば、2年の延期を申請することを指示した。ところが、これに対して主として共和党政権を中心にした27州と、石炭事業者や石炭火力を持つ電力事業者、需要家が連邦裁判所に訴訟を起こしたのだ。その主張は、この計画に基づく規制は、州の権限を侵害すると同時に、国家経済に著しい損害を与えるために認められないというものだ。さらにこの訴訟について連邦最高裁判所がこの2月10日、EPAの規制執行を審理が終わるまで差し止めるという判断を出すに至った。具体的な審理は連邦控訴裁判所で行われており、この6月に聴聞が行われ、年末に審理が終わる予定になっているために、少なくともその間この規制は適用されないことになる。どのような判決が出るかは不確かだ。

 COP21で約束した温室効果ガスの排出抑制目標を達成しなければならない日本も、このような米国の動向を注視する必要があるだろう。

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