中国版「君の名は」

ースモッグの中に立ちすくむ瀧と三葉ー


国際環境経済研究所理事長

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 冬の北京は空気が良くない。2016年12月20日、街は白いスモッグで覆われ、200メートル先も見えない。PM2.5は375という危険な「赤色警報」レベルを示した。日本では、天気予報で「喘息などの病気の人は35を超えたら気をつけましょう」といわれるが、この水準どころか深刻な状態である。
 視界不良のため国内線の飛行機が欠航し、一部の高速道路も閉鎖された。小学校も休校するところが出た。
 私が住んでいた10年前も、冬になると白い霧で遠くが見えなり、石炭のにおいがプンと鼻を突いたが、その頃から改善されていないのか。

友人から送られてきたスモッグの写真

友人から送られてきたスモッグの写真

 そんな中、中国では、日本のアニメ「君の名は」《你的名字》がヒットしている。
 東京に暮らす少年・瀧(たき)と飛騨の山奥で暮らす少女・三葉(みつは)の身体が入れ替わるお話であるが、新海誠監督は明るい太陽の光を上手に表現している。

 ところが、中国では、少年・瀧と少女・三葉がスモッグの中にいるパロディーが流行っているらしい。

 これ以外にも、少年・瀧と少女・三葉が二人そろってマスクをしているのもある。

 また、他の友人からは「『河北省の鉄鋼重鎮を訪ねる』-あなたに北京のスモッグの原因を教える」という記事が送られてきた。盧広という中国カメラマンが、撮り続けた北京周辺、河北省の製鉄所周辺に住む人たちの姿である。

 「2013年までは、河北省の鉄鋼生産量は、連続12年全国一位だった。一方で、河北省の多くの都市は、大気汚染が最も深刻な地域であり、長期間に渡って全国の大気汚染都市ランキングワースト10に入っていた。そこに暮している人々は、鉄鋼業関連の仕事で生計を立てる一方、汚染が原因の病気で亡くなる。」とある。

 2013年9月に公布された大気汚染行動計画以降、河北省は大規模な大気汚染取締り運動を進めており、その主たる対象が鉄鋼業である。

 現在、中国鉄鋼業の過剰生産能力削減が世界的に大きな問題となっており、この主な対象は、非効率で環境対策の打たれていない小型製鉄所である。

 中国政府は、過剰生産能力削減に積極的に取り組んでいるというが、この写真では、ある鎮(町)において、高汚染の小型高炉を停止させたが、今も火が燃え盛る姿が映されている。

 すっかり淘汰されたと思っていた小規模設備の存在が、北京の環境汚染の一因となっている。

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