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我が国の全量固定価格買取制度はどう見直されるべきか


国際環境経済研究所理事・主席研究員


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 2014年度に固定価格買取制度による設備認定が廃止されるという極端な想定に基づく“最低ケース”でもピーク時(2023年)には2.6兆円(2.96円/kWh)、累積53兆円になり、“最大ケース”では 、ピーク時(2032年)に4.1兆円(4.72円/kWh)、累積84.8兆円の負担が発生するという試算もある注3) 。原子力発電所の停止による燃料費の増加に伴って電気料金は上昇しており、さらにこのFITの賦課金の負担が重なる。
 現在消費税の増税と軽減税率の議論が喧しいが、消費税と電気代は共に逆進性が高い、すなわち、生活弱者にとっての負担が大きい。この負担増に耐えきれるものだろうか。
 再エネ導入のために国民は覚悟を決めているというのであればよい。しかし、我が国が制度を開始した当初の見込みは、制度開始10年後の賦課金の単価が0.5~0.7¥/kWh、標準家庭の負担額が約150~200円/月程度と説明されていた。制度開始から3年後の平成27年度の賦課金単価はそれをはるかに超える1.58円/kWh、標準世帯の月額負担額は474円にもなっている。あくまで見込みであることを理解していなかった国民の間には「騙された」という気持ちが強いのも事実である。
 現在、「再生可能エネルギー導入促進関連制度改革小委員会」が組織されているが、FITの見直しは喫緊の課題である。

【さらなる見直しに向けて】

 我が国は2020年以降の温室効果ガス削減目標を考える前段として、2030年のエネルギーミックスをまず策定した。その際にはまず、①自給率を25%程度まで向上させること(現在6%程度)、②電気料金を今よりは抑制すること(震災後産業用で約3割、家庭用で約2割上昇しているが、これ以上の上昇は阻止する)、③欧米にそん色のない温暖化目標の3つを守るべき指標として掲げたわけだが、②の電気料金を今よりも上昇させないためには、原子力の再稼働や再エネの導入、火力発電の高効率化による火力発電燃料費の減少分を原資に、再エネのFIT賦課金の増大分を賄い、電気料金を現状以下に抑制することを期待している。しかし、そもそもこのバランスが保てるのか、また、太陽光・風力といった自然変動電源が大量に導入されれば必然的に発生する系統安定化費用の見通しが甘いのではないかと、達成を疑問視する声は既に挙がっている。
 まずはFITによる賦課金の増大を至急抑制する必要がある。これはどのように修正が図られるべきであろうか。

まずは非住宅用太陽光の抑制を
 これまで導入された再エネの種別を見れば、大きく太陽光に偏っていることがわかる。この理由は、調達価格が高額であったこと、他の再エネに比べて、開発リスク、運用リスクが小さいこと、工期が短く環境アセス等の必要もないため、再エネ事業の中では手軽に始められることがあった。FIT制度導入前の2012年6月から2015年3月までの各再エネ設備の導入量を見れば、太陽光は347%の増加となっている。
 そしてその中でも非住宅用、いわゆるメガソーラーが急増しているのだ

FIT 制度施行後の太陽光発電の導入設備容量の月次変化 注4)

FIT 制度施行後の太陽光発電の導入設備容量の月次変化 注4)

 すでに買取価格の大幅な切り下げは行っているが(2012年の10kW以上の太陽光は40円/kWhであったが、現在は27円+税/kWh)、海外の買取価格よりはまだ倍以上である。
 諸外国は、日本のFIT導入前に、様々な制度修正、例えばバブル的な導入を抑えるための上限設定や価格の大幅かつ機動的な切り下げを行っていたし、最近太陽光に力を入れ始めているインドの買取価格は極めて安い。これらの制度設計を真摯に勉強すべきであろう。

 買取価格をより頻繁に改定し低減させていくこと、そして導入量に上限を設けることが必要であろう。非住宅用太陽光について言えば既に他とのバランスを失するほどの案件が申請されているので、新規認定については凍結すること検討されうる。また、認定済みでありながら未稼働である案件についての対処は引き続き厳格に実施していくべきである。
 メガソーラーについて付言すれば、自然保護との衝突を回避しなければならない。日本では、自然エネルギーは自然にやさしいという「イメージ」での理解が浸透しているが、森林を切り拓いてのメガソーラー設置に対する反対運動も最近多く見られる。太陽光パネルには鉛や銅などの重金属や化学物質が含まれているので、それも当然のことであろう。

注3)
一橋大学特任講師朝野賢司氏
「太陽光発電・風力発電の大量導入による固定価格買取制度(FIT)の賦課金見通し」
http://criepi.denken.or.jp/jp/serc/discussion/14009.html
注4)
http://ieei.or.jp/wp-content/uploads/2014/03/91ab39fae1b5bb5325c556776fcd7961.pdf


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