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我が国の全量固定価格買取制度はどう見直されるべきか


国際環境経済研究所理事・主席研究員


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 ドイツの再エネ政策について筆者は批判的な目で見ているが、再エネ設備建設で森林伐採を行えば、その数倍(州によって異なる)の植林を義務付けられると言う。ノイハルデンベルク空港(旧軍事用空港)ソーラーパワープロジェクトは、荒れ地を30ヘクタール造成し活用するプロジェクトであったが、90ヘクタールの土地を別の場所で確保し、25年間にわたって管理・整備することが義務付けられた。動物(こうもり、トカゲ、タカ)の保護も要求され、人工的な巣作りを行っているというから徹底している。撤去費用については、事業主が国に供託金として支払っておくため、当該事業者が倒産した場合などは国が代わりに撤去作業を行うことが可能だ。
 我が国の場合はそうした対策は行われていない。現在の乱開発の状況を見れば、撤去すべき時期を迎えても放置されたままになる設備が多発するのではないかという懸念がある。

図3

住宅用太陽光への対処:
 今後は、非住宅用太陽光は抑制の方向になるものの、各家庭に設置される住宅用太陽光については今後も推奨されるであろう。しかし住宅用太陽光も大きな問題をはらんでいる。
 FITの逆進性を象徴する話として、太陽光発電設備を設置できる家庭は裕福であり、賦課金を通じて集合住宅に住む低所得世帯から富裕世帯への所得移転と表現される通り、賦課金が電気料金の逆進性を拡大させる構造にある。
 また、新たに指摘されているのが、太陽光発電を設置する家庭が増えることによって、配電費用の回収が困難になる問題だ。これは米国のアリゾナ州などですでに顕在化し、州の企業委員会に裁定を求める事態となった。太陽光発電を導入し自家消費する世帯においては、電力会社から購入する電力量(kWh)は減少する。配電設備の固定費や保守費用は、電力料金に薄く広く乗せられて回収されるため、系統からの購入電力量が少ない世帯が増えればそうしたコストが回収しきれない。太陽光発電を導入した富裕世帯は、配電費用に関して、太陽光発電を導入していない世帯の電気料金にフリーライド(ただ乗り)することになる。アリゾナ州の電力会社は家庭が設置した太陽光発電の容量に応じて、毎月の固定費の支払いを求め、金額の調整はされたものの14年1月以降の住宅用屋根設置型太陽光には支払いが義務づけられたのである。
 電力会社は、減少する販売電力量の中で固定費を回収しようとするため、電気料金は上昇する。太陽光発電を導入していない世帯の電気料金は上昇する一方となり、太陽光発電を導入して「フリーライドする側」に回ろうとするモチベーションが強まることとなる。しかしフリーライドする側に回ることができるのは、戸建て住宅に住み、太陽光発電に投資することができる世帯に限られる。
 電力会社にとっては、減り続ける電力収入では配電費を賄いきれず、電気料金を引き上げざるを得ない、そのことによって太陽光発電設備を導入する顧客が増加し、さらに電気料金収入が減るという、「デススパイラル問題」となる。住宅用太陽光が大量に導入されれば発生する問題として、認識されなければならない。

 住宅用太陽光はこれまで十分に優遇されてきた。FIT導入前にも、住宅用太陽光発電は48円という高額での買い取りが10年間行われるようになり、2019年以降買い取り期間満了を迎える設備が多くある(いわゆる住宅用太陽光の「2019年問題」)。これ以上これらの設備を優遇することにより、消費者負担を増やすことが無いよう、既存設備の買取価格終了後の扱いについてもそろそろ明確にしておく必要がある。

電力市場価格との連動を
 全量固定価格買取制度は、前述した通り究極の総括原価方式である。再エネ事業者間に競争は無いため、コスト低減意欲は働かない。コスト低減圧力が働くよう、市場価格と連動する制度にすべきである。
 その際参考にすべきはドイツのFITの変遷であろう。2002年から08年までは一定の逓減率を設定したが太陽光設備の価格下落はそれよりもずっと大きく消費者負担を抑制することには失敗した。09年からは直近の導入量に応じて逓減率を設定する方法に改め、12年からは見直しの頻度も向上させたが上昇はとどまらず、15年からは入札方式を導入した。
 市場との連動のやり方としては、市場価格に一定程度の上乗せ価格を付けて買い取ることフィードインプレミアム(FIP)制度への移行がありえる。
 再エネ事業者はプレミアムという形で一定の優遇を得るが、買取価格は市場卸価格の変動を反映させたものとなるため、事業実施にあたってのコストダウン意欲はFITよりは高くなる。ドイツが新規電源についてはFIPを適用しているように、諸外国でも活用されている再エネ普及施策であり、まずはFIPに移行させるということも一案であろう。
 制度設計の際に重要な視点は、電力の需要と供給の一致に対する責任を再エネ事業者にも負わせるか否かであろう。FITは基本的に全量を固定の価格で買い取ってもらえるので、電気が余って市場でマイナスの価格になっていようとも発電し続けてしまう。電気が余るという事態は想像しづらいかもしれないが、例えば太陽光と風力が機嫌よく発電する条件の良い日、火力発電は再エネの変動に備えていつでも稼働できるよう、最低限の運転状態を維持する必要があるため最低出力運転に抑制したとしても、需要が低い場合には、市場では電気が余る状況も発生する。電気は同時同量、すなわち、必要とされる量を必要とされるタイミングで発電してあげることが重要なので、必要としていないほどの量が発電された場合には、お金を支払ってでもどこかに引き取ってもらわねばならない。再エネ事業者にも発電の予測見通しを求め、それとかい離しないような運用を求めることが重要であり、必要とされていない発電に対してまで国民の補助が行われる制度設計は避けなければならない。


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