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新たな環境技術で、太陽光パネル廃棄物問題の解決なるか


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授


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太陽電池モジュールの処理技術の課題

 現在の太陽電池パネルのリサイクル方法として、大量の樹脂を含むパネルを高温で熱分解したり、塩素系の溶剤や強酸で樹脂を溶かしたりして原材料を取り出す方法があります。しかし、処理の過程でパネルを覆う樹脂が太陽電池セルのシリコンやガラスにこびり付き、分けて回収する際の大きな障害となっています。

 太陽電池モジュールの現在の処理技術の主な課題として、

(1)
「乾式技術(熱分解法)」は、有機物が炭化した状態で残るので、有価物と有機物を完全に分解することができず、有価物をクリーンな状態で回収することはできない。
(2)
「湿式技術」は、処理に長時間を要し、実用的ではない。
(3)
「外枠外し」は、機械的に強引に引きはがす以外の技術はない。

といった問題があり、今後膨大な量が生じる使用済み太陽電池パネルを処理し、有価物を回収するための有用な技術は見られません。しかし、「半導体熱活性法(TASC法:Thermal Activation of Semiconductors)」が、これらの課題を解決する可能性があります。

半導体熱活性法(TASC法)とは?

 TASC法とは、半導体を350~500℃に加熱すると強力な酸化効果が発現し、この酸化力を利用して、ポリマーのような巨大分子を一瞬にして、エチレン、プロパンのレベルまで裁断化し、空気中の酸素を反応させて、水と二酸化炭素に完全分解する技術のことです。TASC法は有機物のみを完全分解して除去し、有価物をクリーンな形で回収できる技術です。

 TASCは、2013年に設立された大学ベンチャー「ジンテク」創始者の水口仁氏(横浜国立大学名誉教授、信州大学特任教授)が2000年頃に発見した新規な現象でした。金子先生は現在、水口先生とともにTASC法の開発をされています。(科学技術振興機構ならびに環境省の環境研究総合推進費補助金の支援を受ける)

 「TASC法によるポリマーの分解プロセス」(図3)については、ジンテクの資料から抜粋して記載します。

 TASC技術で使われる半導体は、酸化物半導体と呼ばれる金属酸化物であり、高温かつ酸素雰囲気で安定的な化合物です。中でも緑色をした酸化クロムは最も安定で、その融点は2200℃です。この酸化クロムを350~500℃に加熱すると、突如として強い酸化力が発現します。強い酸化力ということは、別の言い方をすれば、「電子を引き抜く力が強い」ということです。
 ポリマーが過熱された半導体に接触すると、ポリマーから接合電子が引き抜かれ、ポリマー内に不安定なカチオン・ラジカルが形成されます(ラジカル生成)。ラジカルはポリマー内を伝播し、ポリマー全体を不安定化します。その結果、ポリマーは自滅し、小さな分子へと逐次分解され、エチレンやプロパン化された分子は空気中の酸素と反応し、水と炭酸ガスになる(完全燃焼)。
 分解プロセスは、半導体の酸化力による①ラジカルの生成、②ラジカル開裂、そして③小分子の酸素との完全燃焼反応の3つの素過程から構成されています。

図3 TASC法によるポリマーの分解プロセス 出典:ジンテク

図3 TASC法によるポリマーの分解プロセス 出典:ジンテク

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