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緊急提言 【提言3】

—COP21:国際交渉・国内対策はどうあるべきかー


国際環境経済研究所前所長


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二国間クレジットメカニズム(JCM)も、日本の優れた環境エネルギー技術の海外への普及を加速し、途上国の排出削減にもたらす貢献度を定量化するという試みとして重要である。現在日本政府は国連交渉の場で、JCM制度によって定量化された排出削減分を日本とホスト国で分配し、それぞれの国内削減分に加えることを目指しているが、提言2で述べたとおり、JCMによる排出量相殺(オフセット)が今後、新枠組みの中で認められるか否かは予断を許さない。新枠組みにおいては自らも削減目標を掲げることになる途上国が、自国の削減成果の一部を他国に譲渡するような国際オフセットに消極的になる(自国の削減量として確保したがる)ことも懸念される※9
そうした状況をふまえると、JCMパートナー国が自らの温室効果ガス排出削減状況を国連に報告する際には、JCMプロジェクトに関わる削減分も含めて実際の排出(削減)量を報告する一方で、JCMプロジェクトに基づく削減量については「日本の技術による貢献」であるということを明示してもらうことで、そうしたJCM削減量の総和を日本の「国際貢献削減量」として国連に報告するという仕組みも追求すべきである。温暖化対策技術やノウハウを持つ先進国の間で、自国の削減量の多寡を競うだけではなく、途上国における削減にどれだけ貢献しているかの多寡を競うインセンティブ設計にすれば、地球全体で見た温暖化対策は加速されるだろう。
また低炭素技術の普及に当たっては、途上国のニーズに応じた現実的な対応をすべきだ。米国オバマ大統領は2013年6月に「気候変動計画」を発表し、国内の新設・既設火力発電所に対してCO2排出基準を設定することを明らかにした。また他国の新規石炭火力への米国の資金支援を取りやめ、EUの一部と連携し、CCS(炭素貯留隔離)を装備しない限り、効率の如何を問わず石炭火力発電所に対する多国間開発金融機関の融資を禁止することを唱導している。しかし、これは現実を無視した机上の空論である。CCSは高コストであり、未だ商業プラントは(極めて特殊な条件の下で)全世界で1基しか導入されておらず、これを融資の条件にすることは、高効率石炭火力への融資を事実上禁止することを意味する。しかし、多国間開発金融機関が高効率石炭火力への融資をやめたとしても、途上国における今後の電力需要の増大、潤沢かつ安価な石炭資源の存在を考えれば、好むと好まざるとにかかわらず、石炭火力発電へのニーズは今後も増大し、発電所の建設は続けられるだろう。
図表3:今後の石炭火力発電所設置計画 (出所:世界資源研究所)

図表3:今後の石炭火力発電所設置計画
(出所:世界資源研究所)

このような状況下で多国間開発金融機関が高効率石炭火力への融資を差し止めれば、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)やBRICS銀行等からの資金により、効率の低い中国製の石炭火力技術を用いた発電所建設ラッシュを招くこととなろう。図表4に示すように、中国は海外石炭火力プラントに対して巨額の公的資金供給を行っている。日本は融資金額で中国に次いでいるが、中国から他のアジア諸国に輸出される石炭火力技術は低効率のものが多い。例えば今後も石炭火力発電所の急増が予想されるインドへの石炭火力技術輸出に占める超臨界(SC)/超々
図表4:2007-2013年の海外石炭火力プラントに対する各国の公的融資金額

(出所: 東京大学公共政策大学院ワーキングペーパーシリーズ ”Quantifying Chinese Public Financing for Foreign Coal Power Plants” Takahiro Ueno, Miki Yanagi, and Jane Nakano
http://www.pp.u-tokyo.ac.jp/research/dp/documents/GraSPP-DP-E-14-003.pdf
図表4:2007-2013年の海外石炭火力プラントに対する各国の公的融資金額

 
臨界(USC)のシェアは中国の場合43%だが、日本は100%である。日本としては、こうした現実を踏まえない原理主義的な主張には迎合せず、世界最高水準の効率を誇る石炭火力技術の普及を図ることで、途上国の経済成長を確保しつつ、排出削減を進めるといった現実的なアプローチを主導すべきである。
※9
国連交渉の場ではJCM のような二国間の協力で削減を行う仕組みにおいて、削減量をホスト国、協力実施国でダブルカウントしないことが求められている。従ってホスト国にとっては協力実施国の削減量としてカウントすることを認めた削減量分だけ、自国の排出量を国連に報告する際に実際の排出量に上積みして報告することが求められることになる。


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