化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉(その2)

成長を促すための産業のグローバル化が世界の化石燃料消費を増加させている


東京工業大学名誉教授


印刷用ページ

成長が求める安価な化石燃料消費の年次増加が続いている

 世界各国のエネルギー消費の実態を報告しているIEA(国際エネルギー機関)のデータ(エネルギー経済研究所(エネ研)データ、文献2-1から)には、先進諸国(OECD34)と新興・途上国(非OECD)とに大別したエネルギーデータが記載されている。
 このIEAのデータから、OECD34と非OECDの一次エネルギー消費のなかの化石燃料(石炭、石油、天然ガスの合計)の値の年次変化を図2-1に示した。この図には、一次エネルギー消費(化石燃料)に次いで比較的大きな値を占める非OECDの一次エネルギー消費(可燃再生・廃棄物)(IEAによる呼称、その主体は途上国の生活用のバイオマス燃料と考えられる(文献2-2参照))、OECD34の原子力、および世界(OECD34と非OECDの合計)の水力の値についても示してある。なお、ここでは年次変化曲線が重なるので示さなかったが、いま、化石燃料の代替として期待を集めている太陽光や風力など新エネルギーと呼ばれる再生可能エネルギー(再エネ)が主体となっている一次エネルギー消費(可燃再生・廃棄物)のOECD34の値は、水力(世界)の値をやや下回る程度である。

図2-1

図2-1 世界のOECD34および非OECD別の一次エネルギー消費(化石燃料他)の年次変化
(IEAデータ(エネ研データ、文献2-1から)をもとに作成)

 この図2-1は、エネルギー資源としての化石燃料の将来的な保全を考える上での貴重ないろんなことを教えてくれる。先ず、指摘されなければならないことは、化石燃料資源の枯渇(ここで枯渇とは、その国際市場価格が高くなって使えない国が出てくること)後のエネルギー源となる水力を含む再エネや原子力が、化石燃料の代替として使用できるようになるのが非常に難しいと考えるべきことである。それは、現代文明社会における社会エネルギー(生活と産業を支えるエネルギー)源として、現在、最も安価に使用できるのが化石燃料だからである。したがって、この化石燃料が枯渇に近づいて、その国際市場価格が高騰した時にはじめて、それより安価な再エネや原子力が、化石燃料の代替として用いられるべきである。

産業のグローバル化で、先進国の化石燃料消費は減少するが、世界では減少しない

 ところで、この化石燃料消費の年次減少が、OECD34においては、図2-1に見られるように、2005年頃をピークとして、すでに始まっている。一方、これとは対照的に、このOECD34の減少分を大きく上回る化石燃料消費が、非OECD諸国で起こっている。
 このOECD34と非OECDの化石燃料の消費の年次変化の違いがどうして起こるのかは、エネルギー消費部門別の最終エネルギー消費の年次変化を示した図2-2から明らかにされる。ただし、図2-1との比較では、この図2-2も、同じ一次エネルギー消費(化石燃料)の値で示すべきであるが、最終エネルギーのデータしかなかったので、それを用いた。この図2-2から、OECD34では、各エネルギー消費部門で、2000年代に入りエネルギー消費の停滞、さらには下降がみられるのに対し、非OECDでは、各部門で、2000年頃からのやや急激とも見える化石燃料消費の上昇が見られる。特に産業部門ではこの両者の背反の状況が顕著である。これは、経済成長が先行していたOECD34では、人件費やエネルギー価格の高騰に伴い、産業における事業利益率の低下を防ぐためとして、事業所の新興・途上国への移転、すなわち、産業のグローバル化が比較的早く、石油危機の頃から始まった結果と見ることができる。

図2-2

注;民生部門とあるのは、IEAデータ(文献2-1から)の民生・農業・他の略
図2-2 OECD34と非OECDのエネルギー消費部門別最終エネルギー消費の年次変化
(IEAデータ(エネ研データ、文献2-1から)をもとに作成)

 この産業のグローバル化は、OECD34諸国での雇用の減少による内需を停滞させ、経済成長の減速を招くことになった。結果として、産業革命以降、成長のエネルギー源としての化石燃料消費の恩恵により、世界経済をリードしてきた先進諸国(OECD34)の経済成長が終焉を招いている様子を、この図2-2がはっきりと示している。
 一方、これとは対照的に、産業のグローバル化は、新興・途上国(非OECD諸国)における2000年代以降の経済成長を加速したが、そのエネルギー源としての化石燃料消費の増大は、地球の有限な資源として化石燃料の枯渇を早めることになるから、結果として、やがて、世界全体の経済成長の終焉をもたらすことは間違いない。
 本稿(その1)で明らかにしたように、現代文明社会を支えているエネルギー源の化石燃料の新しい資源量の開発・利用が望めない現状では、この化石燃料の消費を節減して、できるだけ長持させるために、世界が、先進国と新興・途上国が、協力して、経済成長を抑制する以外に方法がない。

<引用文献>

2-1.
日本エネルギー経済研究所編;「EDMC/エネルギー・経済統計要覧2013年版」2014年、「同2015年版」2015年、省エネルギーセンター
2-2.
久保田宏、松田智;幻想のバイオマスエネルギー――科学技術の視点から森林バイオマスのあり方を探る、日刊工業新聞社、2010年

記事全文(PDF)