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迷走するエネルギー政策が引き起こすのは停電か料金高騰か、それとも温暖化か?

豪州とドイツの電力政策が教えること


国際環境経済研究所所長、常葉大学経営学部教授


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 ドイツでは、22年の脱原発を前に石炭火力を巡る政策が定まらないために、投資に影響が生じている。結果として、電気料金と温暖化対策にも影響が生じる。図-2の通り、ドイツの発電量の19%は石炭、27%は褐炭に依存している。石炭はロシア、米国などからの輸入だが、褐炭は国内で生産されている。発電量の18%は依然原子力が担っているが、22年にはゼロになる。この原子力の電気をどのように代替するかは、将来の電気料金に影響を与える。さらに、使用する電源によってはCO2の排出増を招き温暖化対策に影響を生じる。

図-2

 エネルギー問題を担当するガブリエル経済・エネルギー大臣は「料金上昇を招く、脱原発と脱石炭を同時に進めることは不可能」と昨年発言していたが、石炭火力の発電量削減が実現されないとCO2の排出量が減少せず、それでは20年までに05年比CO2を40%削減するとのドイツ独自の目標達成が困難になると環境省などが指摘した。

 今年になり、ドイツ政府は、石炭火力から排出されるCO2を2200万トン削減するために効率の悪い石炭火力からのCO2排出量の一部にペナルティを課す計画を発表した。老朽化した石炭火力の閉鎖を迫るものだ。この計画に対し、炭鉱労組が強く反発し4月に炭鉱夫がベルリンで大規模なデモを行った。さらに、エネルギー業界でのアンケートでは、53%の投資家が、政策の不確実性故に電力設備への投資を凍結すると答えた。

 ドイツの4大電力会社の一つで、スウェーデンに本拠を置くバッテンフォールは、旧東ドイツの褐炭発電所の売却を計画しているが、石炭火力に対するドイツ政府の政策が不透明なことから価格を決められず、買い手を見つけられない状況に陥った。

 7月になり、ドイツ政府は方針を再度変更し、5基の褐炭火力発電所、合計270万kWを休止し、緊急時に対応する電源として保有する方針を決定したと報道されている。自由化された電力市場では、将来の電力価格の予見性がなくなることから、設備の新設を行う事業者が減少する。設備減少時に備え旧式の褐炭火力を非常用の電源として保有しておくアイデアだ。

 豪州、ドイツに限らず、イタリア、スペインなどでもエネルギー政策の突然の見直しが行われているが、どの国も再エネ比率あるいは温室効果ガスの目標は持っているものの、日本のエネルギーミックスのような電源別構成比の目標までは持っていない。自由化された市場で電源構成の目標値を持つ国はかつてなかった。

 自由化された市場で、どのように目標を達成するのか、先行事例の国、市場が存在しないなかで、どのような政策が有効か、試行錯誤が必要だ。しかし、豪州、ドイツのように政策に不確実性がみられると、設備への投資は逃げていく。発電設備への投資がなくなれば、もたらされるものは設備減少による停電と電気料金上昇だ。発電設備に余裕のない日本では政策を試す余裕はない。これも問題だ。

 エネルギーミックスを決めたものの、例えば、原発の稼働延長、リプレースなどの具体策に欠けるために、実現には不透明感が漂っている。温室効果ガス排出量、経済成長率、電力価格の具体的な数字が先に決められている難しいパズルを、自由化した市場で完成させ、目標の電源構成を達成することは可能だろうか。



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