LEDによるスマート・ライティング


YSエネルギー・リサーチ 代表

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 北海道ニセコ町が、2015年度からの3年間で町内の照明を発光ダイオード(LED)に切り替えるということを3月8日の報道記事で知った。LEDの価格も大きく下がっているから、同じような動きが各地で見られることも確かだ。筆者が住む奈良県では、エネルギー消費の効率化に先進的な施策を打ち出している大和郡山市と生駒市が、2012年8月に街灯のLED化を発表している。設備の調達は行政が行い、大和郡山市の8,200灯はリース方式、生駒市は1万灯の一括購入方式だということだった。
 街灯を何処が保有して管理するか、消費する電気の料金を誰が払うか、地域によって異なるかも知れないが、奈良県の2つのケースでは、自治会が支払う街灯が消費する電気の料金をこれまで一部あるいは全部補助していたのをなくしている。蛍光灯から切り替えると、電気消費量は数分の一になるし、二酸化炭素の排出量も大きく引き下げることができる。

 半導体であるLEDは、明るさを変える調光だけでなく、調色もできるし、視覚では気がつかない速度で点滅(発振)させることで通信にも利用できる。街灯は道路に沿った線の上に設置されたものが地域に張り巡らされるから、このようなLEDの特性を生かした利用の仕方があるのではないかと思っていたところ、その事例を3つ、海外の情報として最近受け取った。

 その最初のものは、スペインの事例だ。同国の電力事業者であるEnel社の発表によると、我々にも馴染みのあるバルセロナを初めとする幾つかの地域にある8つの町に、LEDの特性を生かすような制御をする街灯を設置することにより、コストを下げ、エネルギー効率を向上させるだけでなく、環境の改善にも貢献できたという。LEDの街灯は、それぞれ独立した制御がリアルタイムにできるようになっており、スマート・ライティングと名付けられている。Enelが実施している公共施設向け照明のLED化は、他の都市でも推進されていて、2009年から2014年の間で1,600を超える町に183,250の設備を取り付けたという。

 それに続く事例は、米国のシカゴを拠点とするComEd社が最近始めた400ほどのスマートLED街灯の実証実験をしようとするプロジェクトである。この実証実験は6ヶ月間行われることになっており、その後各市がその成果を見て、スマート・ライティングに使われた制御プログラムを採用するかどうかを判断することになっている。このスマート化された街灯は遠隔制御ができるようになっていて、例えば、照度を50%などと自由に落とすことができる。日単位で点灯をスケジューリングすることもできる。これによって、従来の使用法に比べて消費電力が3分の一に下がるという。さらには、道路の混雑度をコントロールする目的で点灯することも可能になっているし、コンサートなどへ集まる群衆の誘導にも使われる。さらには、救急車が現場到着を早めるような走行誘導(多分色を変えるのだろう)も可能。この街灯は系統管理者ともオンラインで繋がっているため、停電などの事故にも即座に対応することができる。

 3つめの事例は、フロリダ州のFlorida Power & Light社が古い街灯をネットワーク化されたLEDに取り換えようとするプロジェクトだ。同社によると、このプロジェクトは全米、いや世界でもトップに位置するものだという。これが完了すると、同社は、フロリダ州に持つ供給エリア全域でほぼ50万の街灯をネットワーク化したLEDに切り替えることになる。街路の状況に応じて照度を上げたり落としたりすることも可能。光公害も防止することができるということだ。照明の故障情報も即座に伝達されるために、メンテコストも大幅に下がるとしている。

 この海外事例は全て電力事業者の主導で実施されている。日本でこの方式が良いかどうか分からないが、国土、社会の特性を反映した標準的制御プログラムを構築し、それを地域のニーズに則して容易に修正できるようにすることが望ましい。街灯の大幅なLED化は、昼の電力消費には影響せず、夜の電力消費だけ大きく削減できる。スマート化すれば、電力需給の管理や、夜間に稼動した風力発電などの出力変動対応にも有効だろう。日本でも促進策が望まれるところだ。

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