面白くない民主党代表選 -見所なきエネルギー政策-エネルギー・温暖化関連報道の虚実(4)


国際環境経済研究所前所長

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 民主党代表選の真っ最中です。
 鳩山元総理の2020年(1990年比)▲25%温室効果ガス削減構想という全く実現性のないアイデアを国際約束化したうえで、その実現のために原子力による発電量割合を50%以上にするというエネルギー基本計画を閣議決定したかと思えば、福島第一原子力発電所の事故以降は手の平を返して原発ゼロに向かうという大混乱をもたらした民主党。この代表選では、どのような議論になっているのでしょうか。

 NHKは次のように報じています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150109/k10014555911000.html
 「エネルギー政策では、2030年代に原発をゼロにすることでは一致しているものの、細野氏と岡田氏が、国の責任で避難計画が整備され安全性が確認された原発は再稼働を認める方針なのに対し、長妻氏は、住民の同意や十分なテロ対策が必要だとして再稼働に否定的な考えを示しています。」

 読売新聞の解説によれば、
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20150108-OYT1T50018.html
 「原発についても、長妻氏は「原則、再稼働しない」と唱えるが、岡田、細野両氏は、条件付きで再稼働を容認する立場である。
 長妻氏は、旧社会党系など党内のリベラル勢力の支持を受けており、保守系の岡田、細野両氏との違いを強調しているようだ。」
 ということのようです。

 その長妻氏の「政見」には、
 「原発 原則、再稼働はしない
 実効性のある避難計画、住民の同意、地震や津波はもとよりテロを防ぐための確かな対策などができない限り、再稼働はしない。自然エネルギーを地域再生の柱とし、世界一の自然エネルギ―大国にする。」

 細野氏の「政見」には、再稼働については触れた部分はなく、関連する部分として、
「・貿易赤字の原因たるエネルギー・食糧・医薬品等の自給率向上により、冨の流出構造を転換」
「・再生可能エネルギー開発、電力の地産地消による、脱原発とエコ社会の実現」
とあり、上の報道のように討論会で条件付き再稼働容認を打ち出しているようです。

 また岡田氏の「政見」には、
「■エネルギー政策—2030年代原発ゼロに向けて

2030年代原発稼働ゼロに向け、あらゆる政策資源を投入する。
40年運転制限制を厳格運用し、原発の新増設は行わない。
原発再稼働にあたっては、原子力規制委員会の安全確認に加えて、避難計画について国の責任を明確にする仕組みを導入する。
国民生活・経済に重大な影響のある電力の安定供給を図る。
自然エネルギーを最大限導入し、省エネを促進する。そのための技術革新と規制改革を大胆に進める。」

とあります。

 他にもいろいろな重要な課題がある公約集ですから、総合的なエネルギー政策が語られていなくても仕方ないとは思いますが、それにしても岡田氏に比べると他の2人の候補は、ほとんどエネルギー政策には関心がないといった態です。特に細野氏は、3・11以降原子力発電所事故の収拾に深く関与したわけだし、もう少し何か具体的な考え方が示されてもいいのではないでしょうか。また、あれだけ足を運んだ福島の復興や再生についても、何も書かれていません。わずかに被災地についての言及があるだけです。

 再稼働問題については、確かに読売新聞が解説するように、長妻氏とその他の2人とは違うようです。しかし、「政見」をよく読むと「原則」とか「・・・しない限り」とか、結局条件付きで容認していると言ってもよいように思えます。党首で当選した場合、現実的に折り合う中で再稼働を容認することになった場合でも、食言にならないように気をつけているということでしょう。

 しかし、いずれにせよどの候補とも「地球温暖化」は見事にほとんど触れていません。鳩山元総理の▲25%構想は民主党の目玉だったはずですし、岡田氏に至っては、その主導者と言ってもいい役割を果たしていました。そのわりには、「人間の安全保障や地球温暖化などの克服に向けて、NGOと恊働する」(岡田氏の「政見」)でおしまい。うまくいかなかった政策は忘却の彼方に追いやる、というのではけじめをつけたことにはなりません。

 こうやって見てきたように、少なくともエネルギー・温暖化政策の観点からは、この党首選は見所のないものになってしまうでしょう。これが野党第一党だと思うと、残念です。(1月10日記)