米国の新たな温暖化対策は実現するのか-エネルギー・温暖化関連報道の虚実(3)


国際環境経済研究所前所長


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 今回は米国の温暖化政策の行く末についてです。

 オバマ大統領は、外交や内政の目玉になるような成果を挙げられないまま、自分の歴史に残る成果(legacy)の候補として、温暖化政策を選択しました。先の温室効果ガス削減を巡る米中合意は世界を驚かせましたが、オバマ大統領のそうした狙いの一環です。

 その米中合意の中で、米国は温室効果ガス排出量を2025年までに05年と比べて26~28%削減する新たな目標を表明しました。その政策的裏付けとしては、米国内の石炭火力の抑制をメインの柱として考えているようです。

 ところが、自らの不人気が祟ったのか、昨年の米国中間選挙で上院が共和党が大勝利し、上院の重要なエネルギー環境関連の委員会の委員長に、共和党の有力議員が座ることになりました。その結果、いまオバマ大統領のもくろみは危機に瀕しています。その辺の事情をNew York Times紙が伝えています。

http://www.nytimes.com/aponline/2015/01/03/us/politics/ap-us-senate-new-chairmen.html?_r=0

 中でも、環境及び公共事業委員会(ENVIRONMENT AND PUBLIC WORKS)の委員長がInfohe議員で、有名な筋金入りの温暖化否定論者(Denier)です。
 その善人がBoxer議員という環境派の人物であり、オバマ大統領と気脈を通じていただけに、この人事異動は大きな影響を持ちます。Infohe議員は、今後、何かにつけ米国環境庁(EPA)とぶつかっていくことでしょう。オバマ大統領の温暖化対策に関する米中合意などの対外的約束がどこまで実現できるのか、疑問符が付く状態になっています。

 米国の状況をよりつぶさに見ていく必要があるのは、日本が米国政府に温暖化交渉ではしごを外されたり、裏切られたりしてはいけないからです。

 京都議定書の交渉の時には、当時の米国ゴア副大統領が京都に来て、それまでの米国政府の消極姿勢を転換し、米国も積極的に温暖化対策に取り組む姿勢を見せて、各国からの合意を取り付けていくというドラマがありました。
 ところが、どうでしょう。その時点では、既に米国上院でバード・ヘーゲル決議という「途上国がちゃんとやらないのに、米国だけがやるような条約は受け入れない」趣旨の合意がなされていたのです。
 
 その結果、ゴア副大統領もクリントン大統領も、結局京都議定書(先進国だけが温室効果ガス削減義務を負う)の批准はあきらめてしまいました。日本のみならず、世界中が米国行政府のパフォーマンスに翻弄されてしまったわけです。

 今回もその二の舞になってはいけません。今年年末に開催されるパリでのCOP21では、京都議定書の次の枠組みの交渉が山場を迎えますが、日本は本当にオバマ政権と組んでやっていて大丈夫なのでしょうか。

 日本の環境派の人たちは、米国も、さらには中国も、温暖化対策に積極的に取り組もうとしているのに、日本も野心的な取組みを行うべきだと声高に主張しています。私から見ると、これは愚の骨頂です。「学習効果」というものは日本国には存在しないのでしょうか。

 これからも、米国行政府が言うことだけを信じるのではなく、米国の議会の状況についての報道にも注意を払っていくことが必要ではないでしょうか。



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