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京都議定書の経験を踏まえた新たな国際枠組みについて


元環境省環境経済課長


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(4) 終わりに
 日本は地球温暖化対策の為の優れた技術や社会システムを持っている。更に、そのレベルを高めるために国内対策として進めなければならない課題も多い。しかし、国内削減割合の競争のようなことだけしていたのでは、日本の優れた技術も社会システムも世界に広がっていかない。さらに、近年の国内排出量をみると民生・業務分野が増えているように見えるが、原因は東日本大震災以降の電力原単位の悪化であり、民生・業務分野での電力使用量削減努力はCO2削減につながっていない。国境を越えてビジネスが行われているのだから、国境を越えて費用対効果の良い温室効果ガス削減を考えることは合理的なのではないか。
 また、海外への技術移転に取り組んでいる企業の関係者からは、「相手国の工場では設計技師と現場の工員の間に階級があって対話すらない。日本の工場のように現場の声を聞きながら設計を修正していくことが難しい。」という話を聞く。また、海外との研究協力を数多くやられた研究者からは、「海外では試料を集める研究補助者と論文を書く研究者が分かれていて、試料採取の現場を考えながら論文を書くことがない。また、自分の構想が現場に適用できるだろうかといった発想も少ない。」という話を聞く。現場と意思決定の場の距離が近いことが日本の強みだったのではないだろうか?政策における意思決定においても国際交渉の場での議論を踏まえつつ、現場の声を反映していくことが重要なのではないだろうか。
 我が国の今後の地球温暖化対策に関する議論が国内削減割合の競争に取り込まれるのではなく、科学的なデータと現場の声を踏まえながら、日本の持っている技術・社会システム・資金を活用して、世界を変えて行くにはどうすれば良いかという方向で進められることを期待する。

*以上は筆者の個人的見解である。

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