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オバマ政権の環境・エネルギー政策(その19)

活発化する中国との連携


環境政策アナリスト


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 米国が気候変動影響を受けることへの準備については、より強靭で安全なコミュニティーとインフラを構築すること、経済と天然資源を保護すること、気候変動への影響を管理するための信頼できる科学の採用に焦点を当てる。ひとつは連邦諸機関に気候変動に対して回復力のある投資をするためのバリアーを取り除くように指示をし、脆弱性をますような逆効果の政策を排除し、より回復力のある投資を誘発するとしている。また政府は気候変動に対応して健康保険事業者と官民パートナーシップを通じた持続可能で災害に対して回復力のある病院を建設しようとする。また政府は連邦の洪水保険プログラムやいかなる連邦所有の道路、ビル、プロジェクトについて海水上昇、高波を計画および建設において考慮するよう求める。
 国際的努力のリードについては、オバマ大統領は集中した気候変動協力に取組み、中国との間で締結したHFC削減の合意を強調した。また海外の新規石炭火力への公的資金融資はそれがCCS(炭素回収・貯蔵)を備えられていない限り、また他のオプションがない限り、中止をすることを求めた。さらにクリーンエネルギー技術を含め、環境製品・サービスの国際的自由貿易を確立できるようにWTOと交渉することを始めると述べている。排出量削減のための合意できるパートナーを求めていくこととしている。オバマ大統領のこれらのステートメントは、これまでの対応を一転させ、2015年にポスト京都議定書の新枠組み合意におけるワシントンの政治的重要性を高めるための措置といえるかもしれない。
 しかしながら、このプランは環境保護庁による規制をベースにしていることから共和党だけでなく、環境保護庁の規制に抵抗してきた産業界はこぞって反対をしている。
 ベーナー下院議長は「この政策は民主党支配下の議会さえ拒否するだけでなく発電所を止め、雇用を削減し、家庭用電気料金を上げるだけの措置だ」と述べ、エジソン電気協会は「発電所への規制は達成可能な限度とデッドラインを盛り込み、消費者へのコストを最小化し、現在電力会社が進めているよりクリーンな電源へ投資への移行と強化する系統に沿ったものでなければならない。・・・電力は国の環境法制というゴールを引き続き支持し、それを充足するよう努力する」として環境保護庁の規制ではなく「国」すなわち「議会」の法による規制を求めている。

エジソン電気協会理事長トーマス・クーン氏
エジソン電気協会は2007年キャップ&トレードへの支持を表明。
しかし、不透明な環境保護庁による規制ではなく議会の法制化によるものでなければならないと主張。

 ワシントンでは今回のオバマ大統領の発表は気候変動問題への強いコミットメントを示すものと見られている。しかし、実態をみれば一般教書演説での力強い発言の後、しばらく無言であったオバマ大統領が環境派から押されて「言わされた」という感がなくもない。オバマ大統領の環境面での政策は袋小路に陥っており、これを打開するにはまったく別のドライビングフォースが必要であるからだ。それをスーパーハリケーン・サンディに求めようとしたのが今回のプランではなかったか?それでも議会、州、産業界などのステークホールダーは行政府による規制に納得するであろうか?筆者はそうは思わない。米国は今でもすべては議会がもっとも優先される。議会の決定=法令化であるならば司法的チャレンジはないが、行政府のそれの場合は常に晒される。それは結果的には非効率にならざるを得ない。
 環境法制化はこれまで共和党の元で行われた。大気汚染浄化法、環境保護庁設立はニクソン大統領によって決定した。そして議会はこれを支援した。たとえば今回もオバマ大統領のもとで下院ディンゲルエネルギー商業委員長が辞任を余儀なくされたが、共和党に加えかれのような産業界に基盤をもつ(ディンゲルはミシガン州選挙区)民主党議員の協力が不可欠である。しかし、ワックスマンというカリフォルニア州選挙区出身の議員にとって代わられ、オバマの次の大統領が再び民主党がある場合、環境法制については共和党および産業界に立脚する民主党議員の支持を得る必要がある。大統領がもう少し議会に擦り寄る必要がある。しかし、この点でオバマ大統領はこうした勢力への働きかけえがみえない。これはマッカーシー環境保護局長就任を遅らせるだけでなく、環境保護庁による規制をさらに訴訟に巻き込む結果となり、逆に環境規制は進まなくなるとみる向きも多い。
 ここではオバマ大統領の環境政策をみてきたが、議会による環境法制度化を2009年にあきらめて以降は行政府による環境規制の強化、地球環境を行政府で取り組むという姿勢に変えた。オバマ大統領は、現在環境規制への圧力を強めている。オバマ時代のlegacy(「政治的遺産」)としたいという強い意志も見えるが、現実を見渡すとこれを支援する情勢は周辺にない。しかし、中国とのHFC削減の合意など個別具体的な国際的な合意を積み上げていくことによって実質的に地球環境へ貢献をするという方向はありうるであろう。国連地球環境枠組条約交渉において米国の影響力が欠かせないが、米国が議会の批准なしにできる政策だけでどれだけ国際社会をリードできるかが問われる。

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