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オバマ政権の環境・エネルギー政策(その5)

オバマ第二期政権の政策の方向性


環境政策アナリスト


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大統領選で見えた共和党との微妙な政策の違い ~エネルギー面

 2012年の大統領選挙戦において共和党ロムニー候補に対してオバマ大統領が勝利をしたが財政問題および外交・安全保障問題などに焦点が集まり、あまりエネルギー環境問題には関心が集まらなかったかの印象を受ける。それはまさに進行中のシェールガス革命が市場を通じて起こり、政策としての方向性を示す必要性があまりなかったからである。さらにシェールガスとは言ってもガスだけに頼るのはいろいろな意味で危険であるという認識から”All of the above”という標語をどちらの陣営も掲げ、その違いがあまり明確でなくなっていたことが理由である。一部には”All of the above THE GROUND”が本当の民主党の主張である(共和党は”UNDER THE GROUND”)などという冗談も交わされていた。多少長くなるが、選挙中の2012年10月、MITで行われたオバマ大統領のエネルギー環境アドバイザーとロムニー候補のエネルギー環境アドバイザーの論戦を紹介する。これはPlattsとCNNの共催で行われた。オバマ大統領側は前節で紹介したジョセフ・アルディー氏(現ハーバード大学)、ロムニー候補側はオーレン・キャスという人物である(ボストンのコンサルタント)。司会者はモニーツ教授である。議論は広範なテーマで行われたが、多少相違点に着目して整理してみた。

〇 エネルギー技術のイノベーションについて
 アルディー(民)はオバマ大統領のアプローチは”All of the above”戦略であり、すべてのエネルギー源の技術開発を支援していると述べる。そしてそのバランスあるアプローチが特に再生可能エネルギー開発において60万人の雇用を創出した、ブッシュ政権のように化石エネルギーに偏った政策に戻ってはならないと主張。
 これに対してキャス(共)は、エネルギーの自立が強固な中間層を創出するためのロムニー候補の政策の一丁目一番地であるとまず述べ、900億ドルの景気刺激策のけるグリーンエネルギー政策はなにも生み出さなかった、もっとこの点を詳細に議論をすべき。また、民間の技術開発が一層の化石エネルギーへのアクセスを可能にさせ、エネルギー自立政策にリアリティーを与えていると、化石エネルギー開発への意味を強調。さらに化石エネルギーに関わらず他のエネルギーの技術開発も民間セクターを通したほうが効果的にできるし、かつそうしたタイプのイノベーションがこれまで米国では機能していたと民間セクターの活用を主張。

〇 エネルギー技術開発への補助金・税インセンティブ
 キャス(共)は「民間が投資しそうもない競争力がつく前の技術の開発への支援は必要。しかし、期限を設けず行う支援には反対。風力への生産税控除はやめるべきである。風力への生産税控除は史上最も長くなっている。民間は不確実さゆえに雇用を喪失している」と言っている。

 注:生産税控除—-再生可能エネルギーや原子力発電における発電電力量に一定の単価を掛けた金額を税か控除する方法。特定のエネルギー源の一層の推進のために活用されている。

 アルディー(民)はオバマ大統領の政策を擁護し、「1970年代後半に開始した官民パートナーシップによるエネルギー省のシェールガスプロジェクトが今成果を見せているように長期的に技術開発を支援する必要がある。風力と太陽光を支援することにより、エネルギー源の多様化が必要である。景気刺激策により、25万人の雇用が創出された。ロムニー候補はむしろ石油・天然ガスへの無期限の補助の延長を行おうとしているように見える。」とアルディーは反論する。まだあまり大きな議論になっていないが、再生可能エネルギーへの財政支援の経済効率性に関するキャスの議論は国際的には各所において指摘されつつある論点であり、重要な論点である。

 キャス(共)は、「雇用創出こそが第一のプライオリティーであると信じるが、なるほど風力タービンの据付・太陽光パネルの据付により、雇用は創出されたが、しかし、こうした補助をすることで他の分野で喪失した雇用のほうが大きい。正直なところグリーンエネルギーの分野において行う投資が、すでに実現している、より経済合理的なエネルギー技術より効果的であるという証拠はない」と追撃をする。
 この点スペインの王立フアン・カルロス大学のガブリエル・カルサダ教授の論文がしばしば米国関係者から引用される。彼はその論文「Study of the effects on employment of pubic aid to renewable energy sources」においてスペインの太陽光導入量について政策補助が一定の役割を果たしたと一応評価する。しかし、「スペイン労働者一人当たりの再生可能エネルギー補助金は55,946ユーロ(2008年ベース)であるが、一人当たりの労働者収入は25,332ユーロ。すなわちスペインのグリーン補助金は2.2人の雇用を奪っている」ことを示す。再生可能エネルギー開発による雇用創出政策は逆に雇用を奪うことになっていると指摘する。

〇 シェールガスの活用のありかたについて
 キャス(共)は「LNGとしての輸出にも顕著な機会があり、国内で利用するのも同様に大きな機会がある。トレードオフは存在する。国内で活用することにより、大量の雇用の創出の可能性があり、同様に海外に開くためにすべきことはすべてやるべきであるとロムニー候補は考えている。オバマ大統領はこれまで連邦所有の土地における石油・天然ガス開発は縮小する方向に持ってきた。これは間違った道である。」と述べるにとどまっている。つまり、ロムニー候補は国内で優先利用かLNGへの輸出かは明白にしていない。
 アルディー(民)の方は明確である。「オバマ大統領はLNGとして輸出することに反対ではない。むしろFTAを締結していない国への輸出プロジェクトにさえ焦点を当てている。これまでもオバマ大統領はオンショアの連邦所有の土地の開発を進めてきた(アルディーはそう認識)が、これからも進めるつもりである。気候変動の観点からも炭素排出量を減少しながら経済の活性化が可能となっている。発電分野で天然ガス市場を作り上げるようなクリーンエネルギースタンダードが必要であり、交通分野において天然ガスが普及するようなインセンティブの創設が重要である。」

〇 ANWR(北極圏野生保護区域)開発またはエネルギー自立について
 キャス(共)「ANWRには豊富な石油の埋蔵量があるので開発するのはいいことだ。2012年夏オバマ大統領は戦略備蓄を放出した。あの程度の量はもしANWR開発をしていれば生産された量だ。ANWR開発は、価格、市場の安定化、雇用創出の観点から意味がある。」
 アルディー(民)「ANWRは保護すべき独自の環境を有している。同時にオバマ大統領は北極海の資源開発には前向きであることを理解してほしい。戦略備蓄の放出の話があったが、ANWRでなくてもこうした他の地域の増産で対応は可能である。」
 
 キャス氏はANWRがもつ米国エネルギー自立への意味は大きいと指摘するが、アルディー氏は需要側の取り組みの方にエネルギー自立の意味を見出す議論もしており、両者のエネルギー・環境政策にあまり差はないが、民主・共和のポジションの違いが伺えるポイントである。

左:Joe Aldy(ハーバード大学 オバマ候補陣営) 右:Oren Cass(コンサルタント ロムニー候補陣営)
2012年10月5日 マサチューセッツ工科大学

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