リオ+20参加報告 ①
リオでの交渉プロセスをどう読み解くか?
立花 慶治
経団連自然保護協議会 顧問
1992年のリオサミット20周年を期して開催された国連持続発展会議(通称「リオ+20」)に対する評価は様々である※1。期待が大きければ失望も大きい。大きな期待※2を寄せていた人たちの間では、「何の成果も上げなかった」との声が高く、またそのような報道※3も読むが、本当にそうだろうか?
リオでの交渉プロセスをどう読み解くか?
筆者は長らく国連気候変動枠組み交渉をフォローしてきたので、きっとリオ+20でも同様にギリギリまで合意が成立せず、閣僚間の徹夜交渉のあげくの「感動的」合意の瞬間とそれに続くStanding Ovation が目撃されるに違いない、と意気込んでリオに乗り込んだのだが、なんと、サイドイベントに参加していた19日に、あっさりと成果文書 “The Future We Want(我々が欲しい未来)※4” の合意は成立してしまったのであった。
最初の草案発表以降30日を超える揉めに揉めた準備交渉※5は一体なんだったのか!と憤慨したくなるほどあっけない幕引きであった。
このため本番の閣僚交渉は単なる演説会と化し、緊張を欠くことおびただしかった。しかし、がっかりを通り過ぎて冷静に考えてみると、これはブラジル外交の大成功、と評価してよい国連交渉だったのではないか、と思うようになった。
ブラジル政府は明らかに国連気候変動枠組み交渉COP17におけるダーバン合意の失敗に学んだのだと思う。
ダーバン合意は、EUとインドの環境大臣の火を噴くような応酬※6の後、玉虫色文章で決着したのだが、案の定、5月のボン交渉では、合意文書の解釈を巡って先進国対途上国の対立に加えて途上国の中でも対立が先鋭化し、2週間を空費したのであった※7。
ブラジル政府は準備交渉30余日の空費にじっと耐え、最後の最後になって議長国裁定を持ち出し、有無を言わさぬ強引さで押し切った。このタイミングと力技は絶妙である。
- 脚注)
- ※1
- 日本国内の様々なステークホルダーの評価については、 http://www.mri.co.jp/SERVICE/rio20/pc08/20120720.html 資料4-1~4-10参照
- ※2
- 環境NGOの期待は、リオ宣言以降一向に改善されない温暖化ガス排出・生物多様性・砂漠拡大に決定的に歯止めをかけるような、そして化学物質規制・核廃絶などを新たに付け加えた、何か壮大なトップダウン型の国連枠組みに合意が成立する、というものであったろう。女性グループの期待は「reproductive rights(産む権利・産まない自由)」の保証であったろう。途上国の期待は先進国からの資金支援の大幅拡大であったろう。EUの期待は「グリーン経済」への確かな道筋の約束であったろう。先進国共通の期待は、今や時代遅れとなった「共通だが差異ある責任」原則の見直しであったろう。これらの大きな期待は全て満たされなかった。
- ※3
- 国内各紙の報道は、http://www.geoc.jp/rio20/media 参照
- ※4
- http://daccess-dds-ny.un.org/doc/UNDOC/GEN/N12/381/64/PDF/N1238164.pdf?OpenElement
- ※5
- この30日余の交渉の様子は、http://www.iisd.ca/uncsd/idzod/ , http://www.iisd.ca/uncsd/ism3/ , http://www.iisd.ca/uncsd/iinzod2/ , http://www.iisd.ca/uncsd/iinzod3/ ,
http://www.iisd.ca/uncsd/rio20/enb/ 参照 - ※6
- http://www.iisd.ca/climate/cop17/photoindex.html 2つ目の写真参照
- ※7
- http://www.iisd.ca/download/pdf/enb12546e.pdf 参照