ドイツの電力事情―理想像か虚像か― ③


国際環境経済研究所理事・主席研究員

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前々回①では、
・ドイツの電源計画が自国で産出する褐炭(石炭の中でも品質の悪いもの)を主に、化石燃料を中心とする構成になっていること。
・北部に大量導入した風力発電による電力を消費地である南部に届ける送電線の建設が遅れていること。その不安定な電源が流入する近隣国から苦情が出ていること。
・発電設備容量と発電電力量の比較を通じて、ドイツが太陽光発電設備の大量導入には成功したものの、それが生み出す電力があまりに少なく、導入の経済的負担に対する反発が大きくなっていること。

前回②では、
・ドイツでは1998年の自由化開始当時と比較して電力料金が上昇していること(家庭用では2000年時点に比べ、1.8倍以上)
・ドイツの電力料金を押し上げている主要因が税金・再生可能エネルギー導入賦課金であること。
・エネルギーコストと供給不安により産業空洞化が懸念されていること。

などをご紹介した。前回に引き続き、ドイツ連邦エネルギー・水道連合会(BDEW)のデータや同国の再生可能エネルギー法の見直しに関する情報をご紹介する。

再生可能エネルギー法の見直し

 7月1日から再生可能エネルギーの全量固定価格買い取り制度をスタートさせた日本に衝撃的なニュースが飛び込んできた。ドイツが太陽光発電の買取制度を大幅に修正することが決定したという。6月27日に開催された上院と下院の両院協議会において、
・太陽光発電の買い取り価格の20~30%の引き下げ
・太陽光発電の累計設備容量が5,200万kWに達した後は太陽光発電の買い取りを中止
(*現在既に累積設備容量は2,700万kWに達しており、2016年にも5,200万kWに達すると見込まれている)
を柱とする修正法案に合意、6月29日に成立したのだ※参考①

 ドイツが再生可能エネルギー法導入したのは、2000年である。太陽光発電については、全量を20年間固定した価格で買い取ることとしており、それを追い風として、ドイツの太陽光発電の設備容量は2005年以降世界第一位となっている。しかし、ドイツの雑誌シュピーゲル誌が今年1月18日に報じたところよれば、「その設備の導入により、設備のオーナー達は80億ユーロ(8,240億円)を超える補助金を受け取った」にもかかわらず、発電電力量に占める割合は全体の3.3%にしか過ぎないこと、国民負担が非常に大きくなっていること(月間消費電力量が約300kWhの一般的需要家の負担額が月1,000円を超え、そのうち約半分は太陽光発電に起因したものとなっている)ことはお伝えしてきたとおりであり、シュピーゲル誌は「太陽光はドイツ環境政策の歴史の中で最も高価な誤りになる可能性がある」と指摘している。
 これだけ補助金を出しても、国内に還流され、産業が育つのであれば国民の理解を得られるであろうが、ドイツに本拠を置く太陽光発電のトップメーカー、Qセルズ社が倒産したことは記憶に新しい。