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ドイツの電力事情―理想像か虚像か― ③


国際環境経済研究所理事・主席研究員


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 そもそも、固定価格買取制度というのは、その名の通り、買取価格を「固定」するものである。再生可能エネルギー事業者間に競争はなく、国が定めた高い価格で一定期間買い取ってもらえる。顧客も価格も固定することで、再生可能エネルギー事業が安心して投資できる対象になるわけだが、価格設定が高すぎれば投機を呼び、国民負担となって跳ね返ってくることは、ドイツ、スペインなど各国が身をもって示してくれている通りである。
 また、制度の基本設計として、技術の普及にともなって買取価格を徐々に低減させていくこととなっている。これが意味するところは、現在の技術(それが不完全なものであっても)の普及を促す力はあっても、技術開発を促す力は非常に弱いということだろう。FIT導入後早い時点で、安い太陽光パネルを大量に輸入してメガソーラーを設置すれば、確実に投資回収できるが、研究開発費と数年の月日を費やして効率の良い太陽光発電装置の開発に成功した暁には買取価格は今より下がっているとなれば、国内の太陽光発電メーカーの技術開発を待つ事業者は稀だろう。ドイツのQセルズ社が倒産したと先述したが、グリーンニューディール政策を掲げた米国でも、太陽光パネル製造のソリンドラ社、エバーグリーン・ソーラー社などグリーン産業の旗手が、中国メーカーとの価格競争に敗れ、相次いで倒産している。

まとめ-ドイツの実態とそれに学ぶべきこと

 わが国では、東京電力の福島原子力発電所事故を受け、新たなエネルギー基本計画を策定すべく、6月29日に政府のエネルギー・環境会議が2030年のエネルギーミックスの選択肢を3つ提示した。これから国民的議論を経て、年末に向けて取りまとめていくという。そして、奇しくも3月11日の午前中閣議決定された「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」が7月1日から施行された。日本のエネルギー政策にとって、これまでにないほど重要な分岐点を迎えているといっても過言ではない。この時期に重要なことは何か。

 エネルギー政策は国の経済、国民の生活に与える影響がきわめて大きく、また、設備形成に長い時間を要するので政策立案から実現まで数十年という年月を待たねばならない。このことを念頭に置いたうえで、先行事例に真摯に学ぶこと、選択するエネルギー政策のもとで実現しうる社会を具体的にイメージしたうえで議論を進め、時に柔軟に見直す体制をとっておくことが必要であろう。

参考)
① BMU(ドイツ連邦環境省)ホームページ 再生可能エネルギーに関するページ
② 先人に学ぶ ドイツ太陽光発電導入政策の実態 
③ 先人に学ぶ2 ドイツの挫折 太陽光発電の「全量」買い取り制度廃止へ
シュピーゲル誌(2012年1月18日)

 なお「月刊ビジネスアイ エネコ9月号」(8月28日発売)では、このレポートを踏まえ、特集で『電力システム改革』の問題点を取り上げます。

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