温暖化政策、待望の書刊行される!


国際環境経済研究所前所長


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 温暖化政策に関わる者すべてが待望していた書が刊行された。英文による日本の政策提案である。
 編著者は山口光恒 東京大学先端科学技術研究センター特任教授。同教授は、温暖化政策の世界的学者であり、IPCCの報告書のリードオーサーはもちろん、日本国内でも政策形成に関連するさまざまな場で委員などを務められている。その権威が編集された新刊の目次をご覧いただきたい。気候変動対策の究極的目的に戻って検討を加えることから始め、主にボトムアップ的なアプローチをベースに、エネルギー効率、技術移転、排出量取引制度や自主的手法などの政策措置などの論点を、それぞれの専門家が鋭くえぐっている。
 特に、日本の自主行動計画の有効性やキャップアンドトレードの非適合性などについて、英文できちんと解説したものは、これまでほとんどなかったと言ってよい。その意味でも非常に貴重な文献だし、今後のIPCCでの新報告書検討のプロセスにも影響を与えることは間違いない。温暖化政策研究者や政策担当者、さらに産業界での温暖化対策に関連する部署におられる方々にとっては、必読の書と言えよう。
 下に、編著者ご自身による解説を掲げて、ここにご紹介しておきたい。

本のタイトル:
「Climate Change Mitigation, A balanced approach to climate change」
著者:山口光恒(編著)、秋元圭吾、十市 勉、三村信男、岡崎照夫、渡邊浩之、
   大畠明、井上秀雄、天野肇、荻本和彦
出版社:Springer, London
出版年月:2012年7月

目次と概要
Chapter 1. Introduction. 山口光恒
Chapter 2. The ultimate objective of climate response strategies, and a desirable and feasible international framework.山口光恒
Chapter 3. Mitigation targets and effort-sharing among regions and countries.秋元圭吾
Chapter 4. Balance between energy security and mitigation responses十市 勉
Chapter 5. Cost of mitigation.秋元圭吾
Chapter 6. Balance between mitigation and adaptation三村信男
Chapter 7. Policies and measures.山口光恒
Chapter 8. Potential for energy efficiency improvement and barriers.秋元圭吾
Chapter 9. Technology diffusion and development
岡崎照夫、山口光恒(第1節)、渡邊浩之、大畠明、井上秀雄、天野肇(第2節)
Chapter 10. Nuclear Accident at the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant, and its impact on Japanese energy and climate policy荻本和彦・山口光恒
Chapter 11. Epilogue, IPCC and communication山口光恒

 なお、Forward(前書き)を(公財)地球環境産業技術研究機構の茅陽一理事長、ブックカバーの推薦文をベニス大学学長のCarlo Carraro教授、カリフォルニア大学教授David Victor教授、そしてWBCSD(World Business Council for Sustainable Development)会長のChad Holiday氏(前Du Pont会長)から頂いている。

 この本の目的は気候変動対策を縦のバランス(温暖化だけの観点から見てどこまで対策を進めるのが適切か)、及び横のバランス(その水準は現在の世界の緊急課題(貧困、病気、エネルギー安全保障、金融・経済危機などとの比較で適切か)の両面から見ることの大切さを主張している。この結果2℃目標とトップダウン方式の見直しも提案している。更に目指すべき対策のレベルやコスト、エネルギー効率の世界レベルでの比較、3E(経済、環境、エネルギー安全保障)のバランス、緩和と適応のバランス、そして政策措置としては日本の自主的手法やEU ETSの評価、再生可能エネルギーへの補助金、セクトラルアプローチの例としての海運の動きなども網羅している。技術についてはトヨタと新日鐵の具体例から如何に技術開発と普及が大切かを説き、次いで原子力事故と日本のエネルギー・温暖化政策への影響、そして最後にIPCCのコミュニケーション問題について論じている。
 上記の通り世界に対する日本からの提案の書であると同時に、国内対策としてはなぜ日本で自主的手法が機能するのか、Cap and tradeが必ずしも最善の対策とはならないのかについて頁をさいて説明している。後者についてはきちんとまとまった英文の原稿がほとんど無い中で何かの折りに利用して頂ければ幸いである。

追って、本の内容については下記URLご参照
(出版社の頁) http://www.springer.com/978-1-4471-4227-0
(本のチラシはここからも閲覧可能)

(Amazonの頁) http://www.amazon.co.jp/Climate-Change-Mitigation-Lecture-Energy/dp/1447142276

(Barnes & Nobleの頁)http://www.barnesandnoble.com/w/climate-change-mitigation-mitsutsune-yamaguchi/1110838898

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