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活字は「しゃべり」に勝る


国際環境経済研究所前所長


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 エネルギー政策についての原稿をようやく書き上げた。今年8月10日より、新潮新書から順次発売される予定だ。宣伝になってしまうが、ぜひご一読いただければ・・・。

 昨年の東日本大震災を境に、それまで世の中の関心事だった地球温暖化問題はどこかに消えてしまった。それに代わってお茶の間の話題になったのがエネルギー問題である。もちろん、福島第一原発の事故があったわけだから、世の中の目が原子力問題に行くことは当然だ。しかし、これまで温暖化政策を進めるためには原発が最も有効だとされてきたことは、全くなかったかのような状態になるのもまた極端である。そもそも現行のエネルギー基本計画(2030年に総発電電力量の50%強を原子力で賄うとしたもの)は、鳩山元総理の「1990年比2020年に温室効果ガスを25%削減する」構想を実現するために策定されたものなのだ。

 こうした直近の経緯や、これまでの政策の歴史、原子力を巡る官民の関係、電力産業構造の問題など、多様な要素が絡み合うエネルギー問題は、実態を理解して今後のビジョンや政策を構想することが非常に難しい。
 昨年来、全国各地でさまざまなバックグラウンドの方々に、講演やシンポジウムという形で絵エネルギー政策を説明してきた。だが、反原発を声高に叫ぶ人たちや、自然エネルギーを導入しさえすればすべてうまくいくというような単純な論を説く人たちの前では、なかなか伝えたいことが伝わらない。また、エネルギー問題の論点の広がりを示すように、講演で使うスライドは130枚を超えるものにもなっているが、それだけの量をたった1時間半で丹念に伝えることは、とても不可能だ。

 テレビやラジオなどにも出るチャンスはあったが、常に原発推進と原発反対の二項対立を表すようなアレンジに基づく席につかされ、短い言葉のやりとりだけで、粗雑な対立的議論をさせられるだけということが多かった。視聴者は、そうした激しいやりとりを見てどう思うのだろうか。面白いと思う人もいるかもしれないが、ちゃんと話を聞きたいと消化不良気味になる人も多いはずだ。
 
 そこで、今回チャンスをいただいたので、新書を書くことにした。新潮新書からは、一昨年「エコ亡国論」という刺激的なタイトルで、鳩山元総理の民主政権の温暖化政策を批判的に論じたうえで、京都議定書に代わる国際枠組みの具体案を提示した。今回の新書のタイトルは未定だが、世の「コメンテーター」や「有識者」の言うことに惑わされず、エネルギー問題を各人が「主体的に考える」ために必要な材料や情報を整理したつもりである。また今回も、最後には原子力事業の今後の取り扱い、電力の自由化及び電力業界の再編案についての具体案を示してある。
  
 講演やテレビ・ラジオと違い、活字はゆっくり自分の理解のペースに合わせて読めるし、何度でも繰り返して読むこともできる。もちろん紙幅の制限で、すべてを語り尽くすことは難しいが、発言が流れるように飛び去ってしまう媒体よりはいいのではないだろうか。ぜひ感想を寄せていただければありがたい。



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