再生可能エネルギー固定価格買取制度

—欧州の末路—


国際環境経済研究所前所長

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 日本では、現状さながら再生可能エネルギー狂想曲である。固定価格買取制度の買取年数や買取価格が決まり、参入企業もプロジェクトメイキングに忙しい。

 ところが、本家本元の欧州では、同制度のほころびが目立ち始めた。電気料金は上がるわ、グリーン産業は育つどころか中国に全部持って行かれて国内の倒産が目立つわ、とうとう制度自体の抜本的な見直しが進められ始めた。 
 それだけではなく、例えば英国では風力の導入し過ぎで、バックアップ役の天然ガス発電所の採算が悪化し、そのコストを誰がどう負担すべきかを巡って問題が生じている。ドイツでは、北海での洋上風力の拡大計画とともに必要となる南部への送電線投資を巡って、これもコスト負担(に加えて送電線建設反対運動への対処)に耐えきれず、自社投資をあきらめる電力会社が出てきてしまっている。

 こうした状況については、日本では全くと言っていいほど報道されていない。むしろ、再生可能エネルギー事業への期待が高まる中、こうした冷水を浴びさせるような情報は、メデイアは意図的に扱わないのかもしれない。しかし、それでは冷静な投資判断に必要な情報は入手できないし、将来のリスクについての見方も健全に形成されない。

 そうした中、さまざまな情報を整理して、日本での猪突猛進的な再生可能エネルギー事業推進政策に対して警告を発する良質な記事を見つけた。月刊ビジネスアイエネコ「地球環境とエネルギー」誌6月号に掲載されたJFEスチール 技術企画部理事 地球環境グループリーダー、手塚宏之氏の「Qセルズ倒産の衝撃〜欧州にみる買い取り制度の光と影〜」だ。
 記事の趣旨は、ドイツの太陽光パネル大手 Qセルズの経営破綻を取り上げ、欧州で先行して実施されている固定価格買取制度の運用の難しさを示している、というものだ。固定価格買取制度自体の問題点を指摘するのみならず、さまざまな研究成果を引用しつつ、同制度が雇用や技術革新に与えた影響などを冷静に評価している。

 再生可能エネルギー礼賛論しか見たことのない方には、一読・熟読の価値があると思う。