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エネルギーコストが2割も上がるのは国難である

浦野光人氏・経済同友会「低炭素社会づくり委員会」委員長/ニチレイ会長に聞く[前編]


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授


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エネルギー源には一長一短。多様な選択肢が欠かせない

――中・長期のエネルギー政策については、どのようにお考えでしょうか。

浦野:エネルギー問題は、安定供給、経済性、環境適合性、それから安全といった4つの要素をクリアする必要があります。個々のエネルギー源には一長一短があり、一つのエネルギー源に頼ることは難しいと思います。そういうなかで、日本にとってのベストミックスがどういうものか、短期と中・長期に分けて考える必要が当然あるわけです。

 中・長期でみたときの技術進歩のあり方をどう想定するのかということによって物事が大きく変わってきます。例えば、再生可能エネルギーは、コストや安定性を考えると、今の技術水準では産業界が使える電源にはなりません。しかし、もし技術進歩の結果、例えば宇宙空間で発電して、地球に送れるような壮大なシステムができるとすれば、これは素晴らしいということになってくる。

――短期と中・長期で分けて考えると、エネルギー問題はずいぶん見え方が違ってくるように思います。

浦野:原子力発電にしても、今は見えていませんが、安全性の考え方が飛躍的に変わるという可能性が将来的にはあるかもしれません。今の時点では、原発そのものの安全が確保されても最終廃棄物の問題は残ります。これは、世界でもまだ解決できてない問題です。

 中・長期のエネルギー政策を語るときに、現在の技術を前提に発想することには大変問題があります。柔軟性を持って「いつでも変えられる」と考えるべきです。将来、どんな技術が出てくるかわからない。だから、今の時点で脱原発と決めつけて行動を起こすべきではありません。例えば、20年待ってもまったく技術が出てこなかったら、そのときには脱原発でもいいかもしれない。一方で、今の技術レベルでメガソーラー計画を各地で本当に進めたら、これは膨大な無駄な投資になります。

――メガソーラー計画の機運が高まっていますが、控えたほうがいいと。

浦野:今のレベルで言えば、そうです。太陽光発電は、1kW時当たりの発電コストが40円前後かかると言われますが、メガソーラーで急激に価格が大きく下がるとは思えません。変換効率の問題もあります。また、メガソーラー施設自体が自然環境に与える影響も指摘されています。日本には砂漠があるわけではありませんから、農地や里山などに設置せざるを得ない。そうすると、自然環境に対する影響も出てくるわけです。

 だから私は、今、何かに決め打ちするのではなく、すべてのエネルギー源の可能性について、本当に少しずつ少しずつ選り分けながら進んで行くことが大事だと思っています。当面は、すべてのエネルギーを組み合わせて使っていくという考えに立ち、少しずつ判断を変えていけばいいのではないでしょうか。今から、50年先のことを「これでやるのだ!」と固定的に考える必要はまったくないわけです。

――2030年、2050年の技術水準が予測できない以上、エネルギー政策にも柔軟性が必要ですね。

浦野:自然環境に与える影響まで含めて考えると、原子力が本当の意味で安全になり、再生可能エネルギー、なかでも太陽光発電がコストも含めてきちんと使えるようになると、エネルギーに関する部分では人類はハッピーでしょうね。