海上封鎖とインフラ攻撃に備えよ

書評:峯村 健司 著『台湾有事と日本の危機 習近平の「新型統一戦争」シナリオ』


キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹

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(「電気新聞」より転載:2024年3月15日付)

 中国による台湾統一には2つのシナリオがある。第1はロシアがウクライナに侵攻したのと同じ「斬首作戦」であり、大統領府をはじめとする国家機能をクーデターによって乗っ取り、大規模な軍事侵攻も並行して実施して、数カ月で台湾を制圧するというもの。だがロシアによる斬首作戦の失敗と戦争の長期化を見て、著者は第2のシナリオの蓋然性が高まったとする。これは軍事演習と臨検(行政機関による船舶への立ち入り検査)によって台湾を海上封鎖し、エネルギーと食料不足に追いやって、無血開城を迫るというもの。台湾の石油備蓄は90日分、LNG備蓄は11日分しかなく、また食料自給率は30%に過ぎないので、台湾はすぐに経済活動が停止し食料危機に陥るという。ナンシー・ペロシ米国下院議長が台湾を訪問した際、中国は台湾を取り巻く大規模軍事演習をしたが、あれは海上封鎖の練習だった。また2月19日には台湾の離島である金門島付近を航行していた遊覧船に対して中国政府は臨検を実施している。何れも絵空事ではなく現実だ。

 中国は通常戦力で台湾を圧倒しているので、米軍が介入しない限り、台湾統一は成功する。米軍が介入するとなると、在日米軍基地の利用が必須となり、これは中国の攻撃対象となる。対象は自衛隊基地にも及ぶ。ここから先はこの本には書いていないが、日本の戦意をくじくために、基幹インフラ、とくに日本のアキレス腱であるエネルギー供給は狙われるだろう。ロシアとウクライナは、互いのエネルギーインフラを破壊している。ウクライナは1250キロもの射程を持つドローンではるか北方にあるロシア・サンクトペテルブルクの石油精製工場を破壊した。日本も大陸からの射程に入ってしまう。

 中国に、簡単に台湾を統一できると思わせてはいけない。そう思えば、本当に攻撃するからだ。必ずや米軍が介入し、中国は惨敗して、国家的な破局に陥り、習近平政権も中国共産党も消滅すると思わせておかなければならない。このためには、台湾有事に自動的に巻き込まれる日本が、簡単に屈服すると思わせてはいけない。エネルギーと食料を備蓄し、エネルギーインフラを存分に建設し、軍備やテロ対策を充実しなければならない。台湾防衛に失敗すると、中国軍は西太平洋に展開し、日本の防衛はさらに困難になる。他人事ではない。


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『台湾有事と日本の危機 習近平の「新型統一戦争」シナリオ』
峯村 健司 著(出版社:PHP研究所
ISBN-13:978-4569856537