第9回 日本化学工業協会 技術委員会 委員長/三井化学株式会社 取締役 常務執行役員 生産・技術本部長 竹本元氏

環境問題のソリューション・プロバイダーとしての化学の使命


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

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――何か具体例をお聞かせいただけますか?

竹本:昨年2012年6月に、1992年にリオで開催されたリオ地球サミットの20周年を記念して、「国連持続可能な開発会議」(「リオ+20」)が開催され、そこにICCAも会議に参画しました。「持続可能な経済を構築し、より環境に配慮した開発を推進する」という「リオ+20」の課題に対して、ICCAは化学産業は、環境問題のソリューション・プロバイダーとして、これから先、重要な役割を果たしていくことを表明しました。これは化学産業が、これまでに実績をもち、将来への大きな可能性を持つ産業として、環境問題に取り組むことを国際的に表明したことになります。我々は、ほとんどの産業に素材として提供しており、大きな貢献ができると自負しています。

――化学産業がソリューション・プロバイダーとしての役目を果たしていくわけですね。

竹本:国際的にはICCAの取組みは二つあり、一つは「エネルギーと気候変動の問題」、もう一つは「化学品の管理」という二つの国際的課題に重点を置いて取り組んでいます。「エネルギーと気候変動」の課題についてのソリューションプロバイダーの役目を着実に果たすために、主に3つの方針を掲げています。ひとつは、自らの産業のエネルギー効率を改善し、GHG排出の効率も改善していくことです。次に、他産業や人々の生活でのエネルギー効率の向上とGHGの排出量の低減に貢献すること、3つ目には、エネルギーと気候変動の課題に国連機関や各国政府またさまざまな国際組織と連携し協力して取り組むことです。

 ICCAは国連・OECD・WTOあるいはIEAといった国際機関と連携して課題に取り組んでいます。日本化学工業協会はICCAの基幹メンバーとして重要な役割を担っており、技術委員会のメンバー会社や事務局は、ICCAのエネルギーと気候変動についての活動に積極的に参画し貢献しております。

イノベーションの中心技術を担うのが化学産業の素材と技術

――長期的な視野でのエネルギーと気候変動問題への貢献が期待されているのではないでしょうか。

竹本:国連が謳う「持続可能な開発」を実現するには、エネルギーが地球全体にわたって確実に供給されなければなりませんが、世界のエネルギーの需要は今後の数十年間で急激に増加すると予想されています。 

 今後、エネルギーを確実に供給するには、再生可能エネルギーを導入していくこと、エネルギーの消費を大幅に改善すること、そして資源に限りがある非再生型の化石資源を最も効率的に使用するというエネルギー戦略が重要になります。化学産業は、この戦略を実現する上で重要な役割を果たしていますが、化学産業の役割はこれからもっと大きくなっていくものと考えています。 

 風力や太陽光、燃料電池、新型車量技術など新しいエネルギー技術において、化学製品が決定的な役割をしております。これからは新エネルギー技術を、さらに低価格で大規模に展開する必要がありますが、これには技術イノベーションが必要です。イノベーションの中心技術を担うのが化学産業の作り出す素材と技術であると考えています。
 
 エネルギーの消費の改善については、世界の化学産業は、軽量自動車、軽量航空機、エネルギー効率の高い窓、リチュウムイオン電池、バイオ燃料、新規なソーラーパネル等々のありとあらゆる分野でエネルギー効率改善の技術開発を実現し、すでに貢献しており、将来についても、エネルギー削減及びGHG削減への貢献について化学産業への期待が極めて大きくなっています。この貢献の量をICCAは、c-LCAという方法により数値化し公表致しております。