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ドイツの電力事情―理想像か虚像か― ②


国際環境経済研究所理事・主席研究員


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ドイツの電力料金を押し上げる要因

 ドイツの電力料金を押し上げている要因はなにか。実は、前出の各棒グラフの一番下(紺色の部分)が発送配電のコスト、いわゆる電力料金だが、産業用では1998年と比較して2011年はむしろ安くなっており、家庭用でもほとんど変化していない。それより上に積み上げられた税金や再エネ導入に係る費用が大きく膨らんでいるのである。最新年では家庭用では45%が、産業用では39%が、税金・賦課金という比率になっており、これが国民経済に大きな負担となっている。
 ドイツ商工会議所(German Chamber of Industry and Commerce)がドイツ産業界の1520社を対象に行なったアンケート※参考③によると、エネルギーコストと供給不安を理由に、5分の1の会社が、国外に出て行ったか、出て行くことを考えているという。日本の産業団体も会員企業を対象に同様のアンケート※参考④を行っているが、電力の供給不安と料金の上昇が重なった場合、事業活動に与える影響が甚大であるという、悲鳴にも似た結果が出ている。
 なお、前頁に紹介した熊谷氏の著書によれば、福島原子力事故の後、一時停止命令により、停止していた1基を含め8基の原子力発電所を停止したドイツでは停電や電圧降下が頻繁に起きるようになり、大口需要家からなる産業エネルギー需要家連合(VIK)が、停電や電圧変動による生産活動の中断の増加について調査に乗り出すという。ヨーロッパ最大の銅メーカーであるアウルビス社の前社長も、1/10秒の停電でも生産ラインが停止してしまうことを明らかにし、これまで停電の少ないドイツに生産拠点を置くメリットが失われつつあることに懸念を表明しているそうだ。電力価格のみならず、供給不安がドイツ産業界に甚大な影響を与えていることがうかがい知れる。
 我が国で再生可能エネルギーを推進することがGDPに与える影響を分析した資料の一つに、慶応義塾大学産業研究所野村教授が本年5月の総合エネルギー調査会基本問題委員会に提出された試算※参考⑤がある。再生可能エネルギー37%導入を目標とした場合、2030年断面でFITによる買取総額が8兆円、kWhあたりのサーチャージ8円、2030年までの再エネ整備と系統対策により(仮に2031年以降新設投資がなくとも)需要家が負う将来債務が85兆円にもなるとする試算は、国民の間にもっと認識されるべきであろうし、日本なりのスマートなFIT運用につながっていくことを願ってやまない。

 日本企業は、円高、高い法人税、貿易自由化の遅れ、労働規制、温暖化対策のための規制に加え、電力の供給不安と価格上昇という何重もの足かせをはめられている。今後、産業の空洞化を阻止するためには、エネルギー政策の慎重な選択が求められていることを先達は教えてくれている。

 次回は、ドイツの再生可能エネルギー法の見直しや国内太陽光発電メーカーの実態についてお伝えします。なお「月刊ビジネスアイ エネコ9月号」(8月28日発売)では、このレポートを踏まえ、特集で『電力システム改革』の問題点を考察します。

参考)
BDEW(ドイツ連邦エネルギー・水道連合会)ホームページ
② 熊谷徹「脱原発を決めたドイツの挑戦」 角川新書
German Chamber of Industry and Commerce(ドイツ商工会議所)アンケート
④ 経団連アンケート結果(経団連タイムス
2030年における電源構成とCO2制約―多部門一般均衡モデルによる経済評価
先人に学ぶ ~ドイツの太陽光発電導入政策の実態~
先人に学ぶ2 ~ドイツの挫折 太陽光発電の「全量」買取制度、廃止へ~

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