日本版再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)について
小野 透
(一社)日本鉄鋼連盟 特別顧問/日鉄テクノロジー株式会社 顧問
再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT : Feed in Tariff)が本年7月1日からスタートする。再生可能エネルギーは、地球上に膨大に存在し、化石燃料のように枯渇することもなく、発電段階でCO2も排出しない。また再生可能エネルギー関連産業は、「グリーン産業」として将来大きく発展、新たな雇用も生むと期待されている。一方、火力や原子力に比べて経済性に劣る(高価)電源であるため、導入拡大によって生じる追加コスト(例えば太陽光発電と火力や原子力発電との差額)を誰かが負担する必要がある。FIT制度では、この追加コストを、 電気の利用者全体で負担させることとしている(電気料金への賦課金)。従って買取条件(調達価格や調達期間)をどのように設定するかは、太陽光や風力の導入がどの程度進むか、電気の利用者の負担がどの程度になるかに大きな影響を与える。先日、再生可能エネルギー電気の調達条件案(調達価格等算定委員会意見)がパブリックコメントに付され、5743件もの意見が寄せられた。6月18日に経済産業省は、調達価格等算定委員会意見を100%反映した調達価格、調達期間、賦課金単価を含む制度の詳細を決定、関連する省令や告示を公布した。
1.調達価格等算定委意見のポイント
- ①
- 買取条件のベースとなる「適正コスト」は、発電事業者の意見を尊重する。
また、建設コスト等の実績を報告させ、以降の「適正コスト」算定に反映させる。 - ②
- 「適正利潤」はFITで先行するドイツ、スペインと同レベル(金利差分だけ補正、IRR5~6%)とし、加えて、施行3年間は、再エネの加速的導入を図るべく、利潤の上乗せ(IRRで+1~2%)を行う。また、買取期間はドイツと同様の20年間(10kW未満の太陽光は10年間)とする。
- ③
- 既存RPS電源については、新制度の買取価格・買取期間への変更を可能とする。