MENUMENU

オピニオン一覧

  • 2012/07/17

    余りにも非常識な原発比率の選択肢案の評価
    自然エネルギーの利用を原発廃止のための条件とすべきでない

     いま、福島原発事故以後の新しいエネルギー政策を創るなかで、政府は、原発の位置づけを発電量の比率の値で表わして、その目標値を決めようとしている。6月28 日、政府のエネルギー・環境会議が、2030年時点における原発比率(国内発電量合計の中の原子力の比率)について、図 に示した3つの選択肢案を、付表に示す評価データとともに政府案として発表した。 続きを読む

  • 2012/07/12

    エネルギー・ミックスの選択にどう向き合うか

     経済産業省の総合エネルギー調査会・基本問題委員会における約半年、25回を超える審議を経て整理された、2030年におけるエネルギー・ミックスの選択肢と関連審議会の報告も踏まえて、7月上旬に、エネルギー・環境委員会が、国民的議論を行うための3つの選択肢を提示した。 続きを読む

  • 2012/07/06

    原発電力の代替、当面は石炭火力でなければならない
    エコ神話の崩壊が、エネルギー政策の変換を迫る

    原発電力の代替、当面は石炭火力

     いま、脱原発を叫ぶ人々は、原発代替電力は、「自然エネルギー(国産の再生可能エネルギー)による発電」だとしている。しかし、「自然エネルギー」は、少なくとも、現状では、原発の代替にならない。政府は、これを逆用して、「原発がなければ国民の生活が成り立たない(野田首相)」として、原発の温存を図ろうとしている 続きを読む

  • 2012/06/27

    日本版再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)について

     再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT : Feed in Tariff)が本年7月1日からスタートする。再生可能エネルギーは、地球上に膨大に存在し、化石燃料のように枯渇することもなく、発電段階でCO2も排出しない。また再生可能エネルギー関連産業は、「グリーン産業」として将来大きく発展、新たな雇用も生むと期待されている。 続きを読む

  • 2012/06/05

    WTOは環境も救うか?

    デジタルIT製品の貿易自由化の動き

     久しぶりに思えるジュネーブ発での貿易関連報道があった。5月16日付け日経新聞(夕刊一面トップ)によれば「日米欧、中韓など74カ国・地域は15日、関税を撤廃するデジタル製品を大幅に増やすため、世界貿易機関(WTO)の情報技術協定(Information Technology Agreement:以下、ITA)の改定交渉を開始することで合意した」とのことである(注1)。 続きを読む

  • 2012/05/16

    藤井敏道氏・セメント協会 生産・環境幹事会幹事長/三菱マテリアル株式会社 常務取締役に聞く[後編]
    縁の下の力持ち、セメントの循環型社会への貢献

    今回ご登場いただくのは、セメント協会 生産・環境委員会委員長代行で生産・環境幹事会幹事長の藤井敏道氏。前編に続き震災直後のセメント業界の対応と復旧状況、さらに今後の業界としての環境・エネルギー問題への取り組みについて聞いた。 続きを読む

  • 2012/05/14

    藤井敏道氏・セメント協会 生産・環境幹事会幹事長/三菱マテリアル株式会社 常務取締役に聞く[前編]
    コンクリートが人の命を守る

    今回ご登場いただくのは、セメント協会 生産・環境委員会委員長代行で生産・環境幹事会幹事長の藤井敏道氏。震災直後のセメント業界の対応と復旧状況、さらに今後の業界としての環境・エネルギー問題への取り組みについて聞いた。 続きを読む

  • 2012/05/07

    工藤智司氏・日本基幹産業労働組合事務局長に聞く[後編]
    仲間とスクラムを組んでこの難局を闘いたい

    今回ご登場いただくのは、日本基幹産業労働組合事務局長の工藤智司氏。日本基幹産業労働組合は、主要な基幹産業である金属産業のうち、鉄鋼、造船、非鉄鉱山、航空、宇宙、産業機械、製錬、金属加工などの他、関連業種で働く25万人(748組合)を有する労働組合である。前編に続き、基幹労連の震災直後の対応、今後の環境・エネルギー政策の考え方などについて聞いた。 続きを読む

  • 2012/05/02

    工藤智司氏・日本基幹産業労働組合事務局長に聞く[前編]
    震災を経験し、切に感じた日本の強さ

    今回ご登場いただくのは、日本基幹産業労働組合事務局長の工藤智司氏。日本基幹産業労働組合は、主要な基幹産業である金属産業のうち、鉄鋼、造船、非鉄鉱山、航空、宇宙、産業機械、製錬、金属加工などの他、関連業種で働く25万人(748組合)を有する労働組合である。基幹労連の震災直後の対応、今後の環境・エネルギー政策の考え方などについて聞いた。 続きを読む

  • 2012/04/17

    “脱石油政策”から脱却を
    資源枯渇リスクは低下、緊急時対策からも必要に

     東日本大震災を契機に国のエネルギー政策の見直しが検討されている。震災発生直後から、石油は被災者の安全・安心を守り、被災地の復興と電力の安定供給を支えるエネルギーとして役立ってきた。しかし、最近は、再生可能エネルギーの利用や天然ガスへのシフトが議論の中心になっており、残念ながら現実を踏まえた議論になっていない。そこで石油連盟は、政府をはじめ、広く石油に対する理解促進につなげるべくエネルギー政策への提言をまとめた。 続きを読む

  • 2012/04/09

    氷の彫刻が投げかけるもの
    ~スイスがめざす“脱原発社会”の行方~

     レマン湖畔にある我が家の近くに、この冬、見事な氷の彫刻が登場した。写真は2月6日あたりの様子である。あまりに芸術的で観光客らしき人の往来が急増し、我が家の周辺は週末、交通渋滞で迷惑を受けた。

     欧州が厳冬になった今年、特に氷の彫刻が生まれた前後の2週間程度、朝方はマイナス二桁摂氏の日々が多く続いたが、3月に入ると逆に平均気温が11℃とプラス二桁摂氏が続いており、もはやスキー道具を片付けようかという陽気となった。 続きを読む

  • 2012/03/29

    電力供給・温暖化のトンデモ本に要注意!
    データや理論をきちんと判断する姿勢が必要に

     「トンデモ本」というのを、ご存じだろうか。著者の思い込み、無知などによる、とんでもない話を書いた本の呼び方だ。「日本トンデモ本大賞」というものもあり、20年前の第1回は、「ノストラダムス本」が受賞している。当時、かなりの人が1999年7月に人類は滅亡するという、このトンデモないこじつけの予言を信じていた。2011年は大川隆法氏の『宇宙人との対話』が選定されている。 続きを読む

  • 2012/02/24

    発送電分離問題の再考②-2
    発送電分離=市場化のリスクをどう考えるか?

    一物一価の法則がもたらすリスク

     日本では、普段なら、1本100円の長ネギが700円に高騰したことがある。電力は蓄えられないという性格上、市場化した場合には、同様なことが起こりうる。これをヘッジするためにさまざまな金融商品が開発される一方、事業者はいかにこの鞘をとるかという行動に走る。規制側の任務は「競争法(日本の独占禁止法相当)」に基づく不正取引の監視であり、価格レベルそのものについては関与しない。これが今の英国の電気事業である。 続きを読む

  • 2012/02/21

    発送電分離問題の再考②-1
    英国事例に見るフェアの追求とその帰結

     発送電分離が目的とするところは公平(フェア)な市場の構築に他ならないが、英国の発送電分離は「フェアとは何か」という点で考えさせられる点が多い。今回は、発送電分離と電力自由化を最もドラスティックに実行した英国の事例に基づき、発送電分離とフェアについて考察する。 続きを読む

  • 2012/02/08

    GDP拡大を求める発想の転換が必要に
    浦野光人氏・経済同友会「低炭素社会づくり委員会」委員長/ニチレイ会長に聞く[後編]

    「エネルギーコストが2割も上がるのは国難」――。経済同友会「低炭素社会づくり委員会」委員長を務める浦野光人ニチレイ会長は、こう指摘する。原子力発電や再生可能エネルギーなど今後のエネルギー政策や温暖化対策について、また、日本のあるべき姿について率直なご意見を伺った。 続きを読む

  • 2012/02/07

    エネルギーコストが2割も上がるのは国難である
    浦野光人氏・経済同友会「低炭素社会づくり委員会」委員長/ニチレイ会長に聞く[前編]

    「エネルギーコストが2割も上がるのは国難」――。経済同友会「低炭素社会づくり委員会」委員長を務める浦野光人ニチレイ会長は、こう指摘する。原子力発電や再生可能エネルギーなど今後のエネルギー政策や温暖化対策について、また、日本のあるべき姿について率直なご意見を聞いた。 続きを読む

  • 2012/01/27

    宮井真千子・電子情報技術産業協会環境委員会委員長に聞く[後編]
    日本のものづくり産業が目指すべき答えは「環境技術立国」

     一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)は、電子機器や電子部品の健全な生産、貿易および消費の推進を図ることにより、電子情報技術産業の総合的な発展に貢献し、デジタル・ネットワーク時代を切り拓いていくことを使命としている。東日本大震災後の業界の対応や今後の事業展開などについて、JEITAの環境委員会委員長を務めるパナソニックの宮井真千子役員・環境本部長兼節電本部長に聞いた。(インタビューは2011年9月27日に実施)

    再生可能エネルギーを活用する町づくりの実証実験にも積極参画

    ――2012年7月1日から再生可能エネルギーの全量買取制度が始まります。業界として、パナソニックとしてどのように受けとめていますか。

    宮井真千子氏(以下敬称略):方向的には良いと思うのですが、具体的にいくらで買い取るとかの金額提示がない状況です。買取価格によって、さまざまな経済活動に大きく影響してきますので、良いとも悪いとも提示がない限りなかなか言えないところがあります。パナソニックとしては、再生可能エネルギーの比率を高めていくことは良い方向であると思います。我々は、太陽光発電や省エネ、蓄エネ製品を増やしながら低炭素社会へというビジョンを発信しており、事業的にもエナジーシステム事業の拡大を考えています。

    ――今後の町づくりなどで、再生可能エネルギーの導入に関する実証実験を計画されていると聞きました。

    宮井:パナソニックは、「家まるごとCO2±ゼロ」というコンセプトで、エネルギーを創る「創エネ」、貯める「蓄エネ」、それから「省エネ」といった商材を合わせて、ご家庭のなかでCO2プラスマイナス・ゼロを目指していくというコンセプトを提案しています。さらに、これをビル全体、そして街全体にもという方向で拡大しています。そのなかで今回、もう半年以上前になりますが、低炭素な町づくりとして藤沢市と協働でサステイナブル・スマートタウンの構想を発表しました。
     藤沢市には、もともとパナソニックの工場があったのですが、その跡地を活用し、低炭素な町づくりにプラスして住む人にとっての安全安心な町づくりを目指そうと、藤沢市様とともに計画を進めています。また金融、商社、不動産などの企業にも協業いただいて、官民を挙げた町づくりを進めているところです。

    ――町づくりには地元の方も参画しているのですか。

    宮井:新しく家を建てていくわけですから、それはこれからです。家づくりは当社グループのパナホームが中心となって進めますが、やはり住民の目線でいろいろなことを考えていかなければいけません。住んでいただく方にとって住みよい町になるかどうかが一番のポイントでしょう。

    パナソニックが藤沢市と協働で進める「藤沢サステイナブルスマートタウン」構想。工場跡地を利用して低炭素社会のひな型となる町づくりを目指すと同時に安全安心にも配慮する(資料提供:パナソニック)

  • 2012/01/26

    宮井真千子・電子情報技術産業協会環境委員会委員長に聞く[前編]
    震災を乗り越え、最先端の環境技術で世界をリードしていく

     一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)は、電子機器や電子部品の健全な生産、貿易および消費の推進を図ることにより、電子情報技術産業の総合的な発展に貢献し、デジタル・ネットワーク時代を切り拓いていくことを使命としている。東日本大震災後の業界の対応や今後の事業展開などについて、JEITAの環境委員会委員長を務めるパナソニックの宮井真千子役員・環境本部長兼節電本部長に聞いた(インタビューは2011年9月27日に実施)。

    震災で明らかになったサプライチェーンの調達リスク

    ――東日本大震災、そして福島での原発事故により、業界にはどのような影響がありましたか。

    宮井真千子氏(以下敬称略):JEITAの会員企業の中にも被災工場がたくさんありました。特に、東北地方には素材産業やデバイス系の工場がたくさんありますので、組立工場の被災ともあわせてサプライチェーン全体が被災したために事業活動に大きな影響が出たというのが実情です。ただ、それぞれの会社がいろいろな努力を重ねた結果、当初の想定以上に早く復旧して元の姿に戻っていったように思います。

    ――震災直後は、工場が稼働停止しただけでなく、部品の調達ができず大混乱したようですね。

    宮井:素材産業が被災していますので、まずモノが入ってこない。もちろん当初は、工場が被災しているので動かない。工場が動くようになってもなかなかモノが入ってこないという状況でしたので、市場の要求に応えられないケースがたくさんありました。国内だけではなく、海外に製品を供給している素材産業、部品産業も多いので、グローバルに影響が出ました。

     今回、日本にこんなに素材産業があったのだと改めて気づかされたような状況だと思います。日本が与える影響は非常に大きかったと感じています。

    ――部品一つなくても製品を組み立てることができないと私達国民も改めて認識しました。

    宮井:電機・電子業界もしかり、また自動車業界も同様な状況でしたので、国民のみなさまも気づかれたということでしょう。そのときに明らかになってきたのがサプライチェーンでの調達リスクです。

    ――サプライチェーンでの調達リスクを乗り越えるための検討はされていますか。

    宮井:もちろん個々の会社で検討に入っていると思いますし、パナソニックでも適切な対応をしなければいけないと動き始めています。サプライチェーンの上流側に行くと結局は同じ事業者に行きつくこともあり、調達の経路は複雑なうえに樽型のようになっています。そういった現状が徐々に「見える化」されていくなかで、もう少しリスクを分散するなり、調達構造をシンプルにするなり、そうした方向での取り組みが始まっています。

    ――業界のサプライチェーンは、おおよそ復旧したと言ってもよいのでしょうか。

    宮井:電機・電子業界はすそ野が広いので全部がそうだと一概には申し上げられませんが、パナソニックではほぼ元に戻ってきています。

    ――もともと、パナソニックは西の拠点が多いですね。

    宮井:工場もそれ以外の拠点も西日本に多いので、今回の東日本大震災の影響は他の会社に比べると少なかったかもしれません。ただ逆に電力の問題では、関西電力の供給エリア内に工場が多いため、これから切実なものがあるのではと危惧しています。

    宮井真千子(みやい・まちこ)氏。1983年に松下電器産業(現在のパナソニック)に入社。くらし研究所所長、クッキング機器ビジネスユニット長などを経て、2011年4月に役員・環境本部本部長に就任、同7月からは節電本部本部長を兼務。一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)では環境委員会委員長を務める

  • 2012/01/18

    日本の技術を生かすことが温暖化問題解決のカギになる
    関田貴司・日本鉄鋼連盟 環境・エネルギー政策委員会委員長[後編]

    東日本大震災後、日本政府はエネルギー政策の抜本的な見直しを進めている。表裏一体の地球温暖化問題への対応を含めて、その足元は、いまだ定かではない。日本鉄鋼連盟環境・エネルギー政策委員会委員長を務めるJFEスチールの関田貴司副社長に、日本のあるべきエネルギー論を聞いた。

    エネルギー政策は、感情に流されずに冷静な検討が必要

    ――現在、政府がエネルギー政策の見直しを進めています。これに対して、ご意見を伺えますか。

    関田貴司氏(以下敬称略):私どものお客様は広く産業界全般ですから、産業界が競争力を失えば我々も困る。もちろん、我々も競争力を失うわけにはいきません。エネルギー政策の見直しは、我が国の産業、経済の命運を左右するような重要テーマと考えています。時間軸に沿って整理して、感情に流されない議論、冷静な検討が絶対に必要です。

     今の日本は豊かで、電気は当然来るものだという思い込みがあります。その前提を疑わず、短絡的に「原子力発電が悪」、「再生可能エネルギーは善」とするのは、少々楽観過ぎるのではないかと思います。再生可能エネルギーは基幹電源にはなりえない。当面の基幹電力は火力であり、水力であり、原子力です。たとえば太陽光発電は、夜間は発電できません。冷静に議論を進めないと、我々の子孫が困ることになると思います。

    ――政府に対する要望はありますか。

    関田:今、いろいろな制度などを審議する場が出てきていますが、各省庁がばらばらに対応しているように見えることが少し気になります。エネルギー政策は総合的な観点が必要であり、我が国の命運を左右するような問題ですから、実現可能性を踏まえながら、政府全体として、しっかりした現実的なプランを検討していただきたい。もちろん安全性が最優先ですが、感情論や風評で考えられては困ります。私自身は技術屋ですので、技術に基づいた正確な判断をしてもらいたいと思っています。

    ――再生可能エネルギーについては、どう思いますか。

    関田:「環境と経済は両立し、新しいテクノロジーが日本経済を盛り立て、雇用も生み出す」という主張をいろいろな場で聞きます。しかし、たとえば太陽光発電については、日本で使っている太陽光パネルは、2008年まではほとんどすべてが「メイド・イン・ジャパン」でしたが、2009年以降は毎年シェアを下げ、今では中国での生産が主流となっています。少なくとも、太陽光発電の導入を進めれば雇用が生まれ、新産業が育つという見方は結果として偽りがあります。

    ――日本の「ものづくり産業」はいろいろな課題を抱えていますね。どうしたらいいでしょうか。

    関田:技術開発を国として支援するのは有効な手立てですが、もう一方で、ものづくりを巡る事業環境を改善することが重要です。日本は法人税が高いうえ、諸外国に比べると突出して高い二酸化炭素(CO2)の削減目標を掲げています。行き過ぎた円高とTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)構想への消極論も問題です。こうした条件が整わないと、ものづくり産業は海外に移転せざるをえません。空洞化が不可避だと言われる所以です。

     そこまで全体を俯瞰した施策でないと、環境と経済の両立した施策だとは言えないと思います。これは、いろいろな場で申し上げてきました。絵に描いた餅ならまだしも、絵に描いた餅にも全然なっていないということが現実には起こっています。

    関田貴司(せきた・たかし)氏。1975年に川崎製鉄(現在のJFEスチール)に入社。水島製鉄所管理部長、常務執行役員、専務執行役員などを経て、2011年4月に執行役員副社長スチール研究所長に就任、現在に至る。日本鉄鋼連盟では、環境・エネルギー政策委員会委員長として鉄鋼業界をリードする

  • 2012/01/17

    鉄鋼業は東日本大震災をどのように乗り切ったか
    関田貴司・日本鉄鋼連盟 環境・エネルギー政策委員会委員長[前編]

    西日本への生産シフトや夜間生産へのシフトなど、日本の鉄鋼業は、東日本大震災の打撃からいち早く復旧を果たした。その要因について、日本鉄鋼連盟環境・エネルギー政策委員会委員長を務めるJFEスチールの関田貴司副社長は、「社会に迷惑をかけないことを意識し、日ごろから地震対策に取り組んでいた成果だ」と話す。鉄鋼業は東日本大震災にどのように危機を乗り越えたのか――。

    震災後の復旧は早かったが、自動車などの生産が止まったことが生産に影響

    ――東日本大震災は鉄鋼業界の事業活動にどのような影響を与えたのでしょうか。

    関田貴司氏(以下敬称略):今回の場合、電力が一つキーワードになると思います。わたしの所属するJFEスチールで見ると、電力については自家発電を持っていますので、他の製造業とはちょっと違うところがあります。我が社は東西に製鉄所を持っていますので、西日本へのシフトや生産時間帯の夜間シフトに取り組んでピーク電力を低減しました。また、東京電力の要請に応じて、製鉄所内の発電設備をフル稼働させ、地域社会への給電では微力ながら貢献させていただきました。

    ――サプライチェーンには、どのような影響がありましたか。

    関田:鉄鋼製品を作るためにはいろいろな工業薬品や油脂、塗料などが必要ですが、それらが一部入手困難に陥りました。しかしながら、震災発生直後から情報収集や代替品の調達に努めた結果、なんとか乗り切ることができました。ただ自動車メーカーなど、お客様の生産活動に大きな影響が出たため、JFEスチール本体の生産は比較的早く復旧したのですが、製品を作ってもお客様に出荷できないという問題に直面しました。

     一生懸命に早期復旧を果たし、必要とされる鋼材はサプライできる状況になりましたが、我々の大きなお客様の一つである自動車の生産が止まり、鉄鋼生産面では若干大変な時期もありました。現在は、まったく何の影響もなく100%復旧しています。

    ――鉄鋼業のサプライチェーンは想像以上に復旧が早かったのですね。

    関田:災害に備えて、予め定めていた手順や日頃の訓練がよく機能したのではないかと思います。

    関田貴司(せきた・たかし)氏。1975年に川崎製鉄(現在のJFEスチール)に入社。水島製鉄所管理部長、常務執行役員、専務執行役員などを経て、2011年4月に執行役員副社長スチール研究所長に就任、現在に至る。日本鉄鋼連盟では、環境・エネルギー政策委員会委員長として鉄鋼業界をリードする