オピニオン一覧

  • 2011/04/28

    再生可能エネルギーは原発を代替できるか

     東日本大震災が引き起こした福島の原子力発電所事故は、東日本地域に深刻な電力供給不足を引き起こした。春先の計画停電、この夏の電力使用制限措置の発動など、さまざまな社会的混乱をよび、経済活動にも深刻な影響をもたらすことが懸念されている。

     津波の影響で被災・停止中の火力発電所については、相当な時間がかかるものの早急に補修され、順次立ち上がっていくものと想定される。しかし、すでに廃炉を決めている福島第一原発1~4号炉(3月30日勝俣恒久東京電力会長会見での方針)に加え、被害が少なかった5、6号炉や、福島第二原発1~4号炉については、原発事故が周辺地域に与えた放射性物質による汚染や、長期の退避生活を余儀なくされた周辺住民の感情を考えても、当面、稼働再開は難しく、短中期的な電力供給に供することは事実上考えにくい事態となっている。

     福島第一原発、第二原発の発電能力は910万kW(わが国の総原子力発電能力の約18%。原子力発電の総電力供給量に占める割合が2009年度で約29%であるから、わが国の総供給量の5%強が喪失する計算になる)と非常に大きい。これが事実上、恒久的に喪失する東日本における電力の供給不足は、安全性見直しによる全国の他の原発の稼働率低下の影響も考慮すると、わが国の中長期的なエネルギー供給体制の大幅な見直しを迫ることになる。

     こうした事態を受けて国内外でさまざまな分析が行われている。米ブレークスルー研究所(米カリフォルニア州にあるエネルギー・気候変動問題を専門に扱うシンクタンク)が興味深い論考をホームページに公開しているので、ここで紹介していきたい。

  • 2011/04/27

    セキュリティに重点を置いたエネルギー政策への転換を

     今回の大震災に伴って実施された「計画停電」によって、私たち日本人が最近忘れていたエネルギー安全保障という問題と真正面から向き合うこととなった。過去2度発生した石油ショックの時以来である。まず日本のエネルギーセキュリティに関する政策の歴史を振り返っておこう。

    脆弱だった日本のエネルギーセキュリティ

     エネルギー資源に関して、日本の特徴はその自給率の低さにある。狭い国土には化石燃料や鉱物資源が乏しく、国家経済や国民生活を支えるために必要な資源の大半は、輸入に頼ってきた。特に第二次世界大戦後の高度経済成長期には、エネルギー種がそれまでの国内炭から輸入石油エネルギー源が移行し、自給率を一層引き下げる要因となった。

     1973年の第一次石油危機では、OPEC(石油輸出国機構)の禁輸措置によって、エネルギーの輸入が途絶するのではないかという危機感や不安感が、国民レベルで沸騰した(実際には価格は急騰したが、物理的な量の不足は生じなかったとされる)。特に、当時は発電電力量の約7割が石油火力によるものだったこともあり、輸入石油が手に入らなくなることによって、ライフラインである電気がストップするのではないかという恐怖が国民を襲った。日本のエネルギーセキュリティ政策は、この時に感じた国民的危機感がその根っこに横たわってきたと言ってよい。すべての出発点がそこにあるのだ。

     78年に第二次石油危機が訪れるに至って、日本のエネルギーセキュリティ政策の基本は、石油依存度(73年当時約77%)の引き下げと政治的に不安定な地域(特に中東)へのエネルギー供給依存度の引き下げとされた。それを実現するエネルギーセキュリティ政策の体系は、石油備蓄のような緊急時対応力強化のほか、需給両面からの中長期的施策が打ち出された。

  • 2011/04/11

    地球規模のCO2削減に向けて実効あるMRV(測定・報告・検証)を

     2010年に開かれた第16回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP16)では、前年のCOP15で成立したコペンハーゲン合意が前向きな形で息を吹き返したと言われている。そのコペンハーゲン合意に基づいて、各国は2010年初めに、二酸化炭素(CO2)の排出抑制目標を国連に提出した。こうした数値目標などから、主要5カ国について、2020年の1人当たりCO2排出量を試算した(下の図)。

     まず、米国は国連に提出した2020年の目標通り17%削減したとしても、1人当たり排出量は依然として高い。一方、2009年に米国を抜いて世界一のCO2排出国となったとされる中国は、2005年時点では、1人当たり排出量は先進各国よりも明らかに少なかった。しかし、2020年になると様相は一変する。中国の目標はGDP(国内総生産)比であり、経済発展により排出量は増える。今回の試算の結果では、1人当たり排出量は2005年の1.7倍となり、米国の約半分、日本やEU(欧州連合)をわずかではあるが超えるレベルになる可能性が高いことがわかった。経済成長のスピード次第でCO2排出目標が変化するが、途上国に分類することはさすがに難しい。

     中国の健全な経済発展が歓迎すべきものであることは言うまでもない。しかし、その過程で、日本をはじめとする先進各国が開発し、実用化してきた省エネ技術が最大限に取り込まれなくてはならない。もちろん、中国の独自技術も開発されるであろう。その状況が広く公表され、先進国はもとより、後に続く途上国に共有されることが極めて重要である。コペンハーゲン合意で示された、達成状況を国際的に相互検証するMRV(測定/報告/検証)が COP16では正式に決定された。世界共通に評価できる手法で、包括的な実績と技術に関する詳細な報告が行われることが、地球規模のCO2削減取り組みに不可欠である。

    2020年には、1人当たりCO2排出量でも中国が日欧を上回る。なお、今回の試算には以下のデータを用いた。
    ・米国、日本、EU27の2005年のCO2排出量は、IEA CO2 EMISSTIONS FROM FUEL COMBUSTION(2010 Edition)
    ・米国、日本、EU27の2020年のCO2排出量は、排出実績に各国目標の削減率を乗じて算出。
    ・中国、インドのCO2は排出量は、RITE「世界各国の中期目標の分析」(平成21年12月8日)
    ・人口は、国連「World Population Prospects: The 2008 Revision」

    記事全文(PDF)

  • 2011/03/25

    50年後を見据えた世界のエネルギー・気候変動問題の解決策を

     今日、経済のグローバル化、資源価格の上昇、新興国の急成長、気候変動問題への対応など、世界の経済社会を取り巻く環境が大きく変化しています。この「不確実性」の時代に、国際エネルギー機関(IEA)は、50年後も見据えて世界が発展を続けていくためのエネルギー・地球環境政策のあるべき道筋は何か、各国の政府や企業のよりどころとなるベンチマークを発信することに務めています。NPO法人国際環境経済研究所(IEEI)が地球温暖化対策への羅針盤たらんと、分野を超えて有識者の議論を促進し提言を発信していくことは時代の要請に応えるアクションであり、IEAと方向を一にする活動だと思います。

     昨年11月にIEAが発表した「世界エネルギー展望2010」では、各国がエネルギー・気候変動政策を慎重に展開する現実的な道筋を「新政策シナリオ」として新たに示したのですが、中国をはじめとする新興国の成長に伴い、2035年までに世界のエネルギー消費は36%増加し、二酸化炭素(CO2)の排出量も21%増加すると見込まれます。しかしこれは大気温が3.5℃上昇することを許し持続可能とは言えないうえに、石油輸出国機構(OPEC)からの石油生産に対する依存度が現在の4割から5割に上がるなど、エネルギー安全保障面でのリスクも増大してしまいます。

  • 2011/03/10

    あなたは情報発信しているか?

     日本からの情報やアイデアの発信の必要性が叫ばれてから久しい。しかし、状況は思ったほどには改善していない。例年2月に開催されるダボス会議(世界経済フォーラム)には、今でこそ、日本の首相も日帰りに近い形ででも出席するようになった。だが、単にそこで話してくるという以上の積極的な意味は見いだせない。そもそも1年で替わる首相の話など、誰も真面目に聞かないだろう。

     1980年代初頭の日本の絶頂期であれば、どんなに下手な英語で話をしても、相手は日本の言うことを聞きもらすまいと一生懸命だった。それは、背後に経済大国日本に対する尊敬と脅威があったからである。世界に対する日本の影響力、あるいは日本に対する世界の関心が目に見えて低下しているなかで、日本からの発信は、よほど内容が充実していないと誰も聞いてくれない。まず、こうした状況認識の共有が必要だ。

     これに関連して筆者が残念に思っているのは、未だに残る欧米信仰である。たとえば政府の審議会での議論で常に出るのは、「EUでは排出権取引(ETS)を導入しているのに日本はなぜやらないのか」とか、「スペインやドイツで再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度を導入して『成功』しているのに、なぜ日本は追従しないのか」という議論である。

     この発想を引きずっているのが日本から海外への調査団である。同じようなテーマについて、顔ぶれを変えながら欧米に大規模な調査団を送る。このなかには、英語ができずに議論に加われない人もいる。ときには日本大使館員も動員されて、ご苦労なことである。情報発信どころか受信専用である。

     相手から見れば、毎回同じような質問を受けるだけで見返りはない。もし筆者が相手の立場であれば、時間の無駄であるので真面目な対応をしないだろう。真面目にやるのは、たとえば日本にEU-ETSを採用させる意図があるような場合だけである。

  • 2011/02/09

    第一線の企業人こそ環境メッセージを発信すべきだ

     以前、中国に駐在していた時、帰国するたびに感じたのは、日本の美しさ、環境の素晴らしさだった。日本を訪ねる中国人も同じ印象を持っているようだ。 続きを読む

  • 2010/12/22

    日本がリードするプラントの効率算定方法標準化

     製鉄所をはじめとしたプラントの効率を測ることは、そのこと自体は単純なものである。システムバウンダリー(システム境界)を決めて、その境界を出入りするエネルギーや物質の量を計上し、それぞれの物質に見合った換算係数をかける。そこで得られた数値を足せば総量であり、総量を生産量などで割れば原単位となる。

     しかし、システムバウンダリーの決め方や換算方法が異なれば、まったく同じプラントを対象にしても、無数の「効率値」が得られることになってしまう。そして実際には、各国ごとだけでなく、同じ国のなかでも、プラントの効率を測るための複数の算定方法が存在している。

     鉄鋼業の場合、より広い範囲でお互いの効率を比較することによって自らの位置付けを知ることが効率改善に有効である。そこで、日本の鉄鋼業界がリードして、共通の効率算定方法の構築を進めてきた。クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ(APP)での成功を基に世界鉄鋼協会(ワールドスチールアソシエーション)でも算定方法を確立し、データ収集を行ってきた。そして日本が提案者となって、世界鉄鋼協会の効率算定方法をISO規格化する作業がスタートしている。

     APPや世界鉄鋼協会のときもそうであったが、ISO規格化にあたっては各国・地域の事情がより色濃く出てくるため、なかなかタフな仕事となる。特にEU ETS(欧州連合域内排出量取引制度)を抱えている欧州とは、今後もハードな交渉が続くことは避けがたい状況である。しかし、生産技術・製品特性とともに、技術に裏付けされた日本の効率算定方法は、世界に貢献できることは間違いない。もちろん、国際化のなかでカラー道着が採用された柔道のように、日本の効率算定方法もある程度の修正が必要になるかもしれないが。

    記事全文(PDF)

  • 2010/12/10

    3つの視点から気候変動問題を巡る国際交渉を考える

     気候変動問題についていろいろと考えるときに、どうしても頭から離れないいくつかのことがある。問題が深いと言わざるを得ない。列挙してみたい。

    【身勝手】
     数年前に、ブラジルが「歴史的責任(Historical Responsibility)」を気候変動に関する国際連合枠組み条約(UNFCCC)の場で主張したことは記憶に新しい。過去も同様の考え方が主張され、「差異あるが共通の責任(Common but Differentiated)」という概念で共有化されている。

     しかし、国民1人当たり3万ドルを超える豊かさを享受している日米欧が、いまだその3分の1にも達しない中印に対して、気候変動問題に厳しく対応しろと要求している。これは、いかに気候変動問題が深刻な問題であるとしても、やはり、先進国の身勝手な要求と言わざるを得ないのではなかろうか。さんざん化石エネルギーを活用して豊かになってきた国々が、過去自分たちの辿った道に思いを馳せもせず、これから豊かになろうとする国々に、化石燃料を利用するなと言っているのだ。

    【植民地】
     国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP)の場では、アフリカや中南米の人たちが見事な英語やフランス語を駆使して多様な意見を主張している。なかには、自らの足元を忘れたかのようにして、欧州の人たちと同じ意見を述べる人もいる。これはどうしたことなのだろう。ここで気がつくのは、かつての植民地と宗主国の関わりである。かつての宗主国は、教育と文化を通じて、いまだにかつての植民地国のリーダーの一部に彼我一体ともいえる影響を及ぼしているのだ。欧州の巧みなかつての統治は、今、こんな形で、現れている。

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