オピニオン一覧

  • 2011/08/17

    日本の石炭火力発電技術が温暖化を抑制する

     国際エネルギー機関(IEA)は、毎年、主要国の電源別発電電力量を発表している。この2008年実績から、いくつかの主要国を抜粋してまとめたのが下の図だ。現在、日本人の多くが「できれば避けたいと思っている」であろう順に、下から、原子力、石炭、石油、天然ガス、水力、その他(風力、太陽光発電等)とした。また、“先進国”と“途上国”に分けたうえで、それぞれ原子力発電と石炭火力発電を加算し、依存度の高い順に左から並べた。

    2008年度主要国の電源別発電電力量

    2008年度主要国の電源別発電電力量

    世界の発電電力量の4割を石炭火力が賄っている(出典:IEA/ENERGY BALANCES OF OECD COUNTRIES(2010Edition),ENERGY BALANCES OF NON-OECD COUNTRIES(2010Edition)から筆者が作成)

     この結果を見ると、どの国も原子力と化石燃料を加えると80%を超える。また、化石燃料のうち、石油は少なく、石炭と天然ガスが大部分を占める。国によって両者の比率は大きく異なり、天然ガス資源が比較的手軽に入手できる国では当然ながらガスの比率は高い。しかし注目すべきは、石炭の占める割合が、主要途上国だけでなく米国やドイツでも40%を超えており、世界全体で4割を占める最大の電力源だということである。なお、「その他」に分類されている太陽光や地熱、バイオマス等の再生可能エネルギーは、各国とも強化すべき電力源と位置づけてはいるが、基盤電源とするためには、技術開発の加速による飛躍的な効率向上等によって大幅なコストダウンを実現することが必須であろう。

  • 2011/08/09

    東北経済復興と地球温暖化~復興と防災国家構築と~

     東日本大震災の発生以来、5カ月近く経過したが、東北経済の復興が目に見えて進んでいるようには感じられない。いまだに現地では瓦礫の処理が滞っている。復興の実感は、瓦礫を撤去して、そこに新しい家が建ち、周辺一帯に電気やガス、水道などのユーテリティーが回復して、はじめて湧いてくるものではないだろうか。 続きを読む

  • 2011/07/28

    二項対立の構図がエネルギー政策を停滞させる

     エネルギー政策に関して、私のfacebookで、2回のアンケートを行った。1回目は、2011年6月23日から7月6日まで、「政府の提唱するエネルギー政策(原子力・火力・省エネ・自然エネ)についてどう思うか?」という問いを投げかけ、2回目は、7月14日から7月20日まで、「総理の脱・原発依存宣言をどう思うか?」という問いを投げかけた。

     結論は、図1、図2の通りであり、どちらの結果を見ても、過半数の回答者が「原発依存からの脱却」を望んでいることがわかる。新聞等での調査結果より、その割合が多いのは、ネットユーザーによる特徴があるのかもしれない。しかし、原発依存からの脱却を望む回答者たちも、「即座に原発を止めるべき」という人は多くない。図1の「三本柱で進める」に投票した人の75%は、段階的に原子力発電の割合を減らしていくことを求めている。マスメディアでありがちな、「脱原発=即原発全停止」のようなヒステリックな意見ではないのである。このアンケートに答えてくれた人々をベースに見れば、マスメディア的な二項対立に陥り、思考停止している人ばかりではないことがわかる。メディアが政局と絡めてエネルギー問題を報道するために、国民の意思を見えなくしてしまっているのではないかとも思えてならない。

    図1
    政府が提唱するエネルギー政策の4本柱(原子力・火力・省エネ・自然エネ)についてどう思いますか?

    図1 政府が提唱するエネルギー政策の4本柱(原子力・火力・省エネ・自然エネ)についてどう思いますか?
    2011年6月23日~7月6日に、http://www.facebook.com/kumi.fujisawaでアンケートを実施。
    351件の回答を得た

    図2
    7月13日の菅総理の「原発に依存しない社会を目指す」という宣言、評価しますか?

    図2 7月13日の菅総理の「原発に依存しない社会を目指す」という宣言、評価しますか?
    2011年7月14日~7月20日に、http://www.facebook.com/kumi.fujisawaでアンケートを実施。
    294件の回答を得た
  • 2011/07/21

    再生可能エネルギーの正しい導入方法を考える

     菅直人首相が退陣の条件の一つにした、再生可能エネルギー促進法案が国会で可決されそうである。これは、風力、太陽光発電などの再生可能エネルギーからの電力を固定価格で10年以上の期間にわたり購入するというものだが、現在の形ではかなり問題のある法案だ。私は、7月9日に放送されたNHKの「週刊ニュース深読み」で、賛成派の飯田哲也氏と法案を議論する機会があったが、時間切れになり、すべての論点について議論することができなかった。そこで、この場で二つの論点を示しておきたい。

    【電力料金の値上がり額】

     電力の固定価格買い取りに要する費用は、電力料金の形で電力の需要家が負担する。この結果、電気料金は値上がりする。値上がり幅は、買い取り価格と買い取り電力量により決まることになる。値上がり額によっては、国民生活と産業活動に大きな影響が生じる。では、値上がり額はいくらになるのだろうか。

     再生可能エネルギーごとの買い取り価格と導入量を以下の表のように仮定し、2020年の買い取り価格総額を計算してみた。

     現在の再生可能エネルギーの導入量は、太陽光発電が300万kWから400万kW、風力発電が300万kW弱、地熱発電50万kW強程度と推定されている。上記の仮定通りに進めば、設備導入量は一挙に増加する。半面、設備量の比較では日本の全電源の20%を占めるようになるが、発電量では全体の5%程度に止まる。一方、仮定通りに進めば、2020年の固定価格買い取り制度に基づく負担の総額は1兆1000億円を上回る。標準家庭の追加負担額は年間4000円強、月に25万kWhを消費する中規模工場での追加負担額は年間約360万円となる。

    【系統安定化費用】

     安定的に発電できない太陽光や風力発電を導入するには、送電系統を安定的に運用するための送電線能力の増強とバックアップ電源が欠かせない。しかし、仮定したような大量の太陽光、風力発電を導入するには、送電線能力の増強だけでは不十分だ。このため、蓄電池の導入により系統の安定化を図ることが必要となる。

     3500万kWの太陽光発電設備導入時に必要な系統安定化費用については、経済産業省次世代配電ネットワーク研究会が検討を行っており、費用は2兆~24兆円とされている。この費用負担は、2020年時点の全需要家平均でkWh当たり0.46円から5.46円になる。買い取り価格の負担に加えて、標準家庭で年間1600円から2万円弱の追加負担が数年間にわたり発生する計算になる。

  • 2011/07/15

    正統な競争力を付与する仕組みが最も重要に

     原発が限界化して行くと火力がさらに主流化し、その結果、化石燃料の新規購入で数兆円のコストがかかり、電気代に跳ね返ると云う議論があります。ある程度そうでしょう。しかし、現行の総括原価主義や地域独占を見直したら、その分電気代の上昇は抑えられるでしょう。何しろ、日本の電力は外国のガス生産者や国内の調達参加者にとっては言い値で買ってくれる上得意なのですから。2011年6月の雑誌「選択」は、その悲劇的状況を論じています。国内調達で随意契約を禁止していない国は、日本ぐらいです。事情は違うにしても米国では各州の公益事業委員会がコストの外部監査をしています。給与も業界最低に抑えています。

     電力のような基幹商品は硬直的な価格体制から解放し、市場性をもっと導入するべきです。そういう姿勢を国が示すことこそ、日本経済の高コスト体質を和らげ、国民経済を擁護し、日本企業の国際競争力強化に繋がるのですから、そういう情報を提供し、国民の衡平な議論に供するべきです。そういう姿勢が生まれれば、「原発を止めるなら、これだけ莫大なコストになるぞ」という単細胞的議論から均衡のとれた議論になるでしょう。

     自然エネルギー買い取り政策も同じです。この制度の結果、電力料金は上がるでしょう。しかし、上がり方を独占排除などのいろいろな手段で緩和できるはずです。

     「国民よ、自然エネルギーの高価な負担に耐えられるのか?」といわんばかりの姿勢は、日本という国の品格としては情けないのではないでしょうか? 要するに「上がる、上げる」という議論をするなら「下げる、下がる」という議論も同時するのが、公益事業を今後どうするかというときに、絶対に必要だと思います。国民融和の下で健全で頑強なエネルギー政策を進めようとするなら、事情を知っている論者はこの均衡を国民に知らせるべきだと思います。

  • 2011/07/06

    エネルギー政策の見直しに向けて

     民主党政調の成長戦略PTのエネルギー政策有識者ヒアリングに呼ばれ、6月30日8時からプレゼンしてきました。民主党の中での「常識」と異なる点がいくつも含まれていたようで、出席議員の方々からもさまざまな質問を受けました。

     中でも、次のような質問が印象に残りました。

    質問:原子力国有化は難しいと(澤は)言うが、どのような根拠か。

    回答:国直轄の事業として、原子力発電所を運営できると思えない
    国は、原子力から撤退しないのであれば、原子力賠償措置法における事故時のリスクをより積極的に取ることで関与を増やすべきだが、その政治的意思が見えない。それゆえに国有化議論を一回はこなす必要がある。

    質問:電力供給工程表作成は賛成だが、供給力だけではなく、需要についての綿密な見通しが必要ではないか。これまでの電力会社の見通しは当たった試しがない。

    回答:確かに、需要想定については、これまで機械的に設定してきていたが、これから数年の間は需要見通しについて、相当きめ細かく積み上げる必要がある。また料金オプションとしても、需要の弾力性を高めるような仕組みを検討すべき時期。

    質問:自然エネルギーを増やすための固定価格買取は必要だし、イノベーションも期待できる。

    回答:原子力も政治的意思と資金注入を長年やって初めてここまでのシェアを得るようになった。風力にしても太陽光にしても、立地地域における抵抗はだんだん大きくなると思われる中、長年にわたって政治的・財政的資源をつぎ込み続ける覚悟はあるか。さらに固定価格買取は、参入事業者間に競争を促進するスキームではなく、新技術を開発するインセンティブがない。

    質問:化石燃料確保が重要というのは同意する。しかし、コストはアップする。具体的にはどのように対処すればよいか。

    回答:ユーザーとして大規模であることが重要な交渉力になる。また外交的にも戦略的に立ち回る必要があり、政府がもっと前面に出る必要がある。コスト的には、今後主流になると思われる天然ガスの調達契約を日本に有利なものとし、価格を低減していくことが戦略目標になる。

     昨今の政府のエネルギー政策について批判的な姿勢を取っている筆者をヒアリング対象に呼んでいただき、じかに与党議員の方々にお話しできる機会が与えられたため、その点は非常にありがたいと思いました。こうした機会は、筆者にとってもさまざまな見方や関心に触れるいいチャンスとなりました。

     今後ともこうした場があれば、またこのWEB上でご報告します。

    資料:成長戦略PT資料(エネルギー政策の見直しに向けて)(PDF)

    記事全文(PDF)

  • 2011/06/13

    正しい節電で、楽しく気楽に生活する

     東京電力や東北電力管内では7月から、夏期の使用最大電力の15%削減が始まるが、これに向けて、企業でも家庭でも、さまざまな取り組みが始まっている。廊下やエレベータホールの消灯はもちろん、工場の操業の見直し、さらには西日本への生産移管やデータセンターの移設などである。 続きを読む

  • 2011/06/06

    再生可能エネルギーの本格導入を阻む3つの壁

     福島第一原子力発電所の事故以来、原発に替わるエネルギーとして、風力、太陽光を中心とした再生可能エネルギーが注目を浴びている。菅直人首相は、フランスドービルで開催されたG8サミット(主要先進国首脳会議)での演説で、「太陽光発電を1000万戸に設置する」と表明した。

     再生可能エネルギーの普及を図るための政策は、震災以前にも導入されていた。太陽光発電設備の導入により生じた余剰電力を電力会社に販売できる制度は、2009年度から導入されている。電力会社は買い取り費用を電気料金に上乗せし、需要家から回収する。

     今年度の買い取り価格は、1kW時当たり42円に設定されている。東京電力の民生用、産業用の電力の平均販売価格は、1kW時当たり16円程度。つまり、太陽光発電が増えれば増えるほど、電力料金への上乗せ額、すなわち需要家の負担額は大きくなるわけである。

     G8サミットに先立ち、菅首相は、太陽光発電設備の大量導入に合わせ、太陽光発電のコストを2020年に現在の3分の1に引き下げる目標も発表した。設備費用のなかには工事費がかなりの部分を占めており、コストを3分の1に引き下げるのは簡単ではない。しかし、もしコストダウンが実現しても、それまでに導入された太陽光発電の買い取り価格は、その後10年間にわたり消費者が負担することになるため、太陽光発電の普及が大きく進めば、電気代の大きな値上げは避けられないのである。

     日本に先立ち、再生可能エネルギー由来の電力の固定価格買い取り制度を導入した欧州主要国では、相次いで買い取り価格の引き下げが行われている。長期にわたり固定価格で買い取るため、累積の買い取り額が巨額になったためである。導入が進めば進むほど、消費者の負担が級数的に増えていくことになる。

     しかも、再生可能エネルギー導入に伴う問題は、消費者が支払う電力料金への価格転嫁だけではない。バックアップの発電設備が求められることや送電能力の面でも大きな課題がある。

     バックアップ電源が必要な理由を図に示す。日照がない時間はほとんど発電ができない太陽光や、凪(一時的に風のない状態)には発電できない風力発電に対し、電力需要は発電側の事情とは関係なく生じる。したがって、再生可能エネルギーによる発電ができない時間に備え、電力需要と再生可能エネルギーによる電力供給の差を埋めるために、常に、発電が可能な電源を用意していなければ停電が発生する。

    太陽光や風力への依存では、電力需要とのギャップが大きくなる
  • 2011/05/24

    「ON」か「OFF」かの日本のリスク論

     東京電力福島第一原子力発電所からの放射性物質漏洩事故を機に、原子力発電の危険性を理由とした脱原発の考え方が勢いづいている。しかし、実質的な内容を伴った代替案は、いまだに提示されていない。ここでは「リスク」に絞って日頃考えていることを述べる。

     事故直後の枝野幸男官房長官の記者会見は、まさに日本におけるリスクの考え方を鮮明に反映したものであった。記者から『安全ですか』と聞かれ、『安全です』と答える。また、『通常レベルより濃度が高いが、直ちに健康に影響するほどではない』と答える。これでは誰も安心できない。

     原子力に限らず、従来の日本のリスク管理は安全か安全でないか、つまりONかOFFの2者択一という考え方が強い。しかし考えるまでもなく、絶対安全、すなわちリスクゼロはあり得ない。

     われわれは日頃、自動車や飛行機を利用しているが、自動車事故では年間何千人もが死亡している。また、筆者が航空保険の実務に携わっていた1970年代初頭では、ジェット機は統計上30万時間に1機墜ちていた。つまり、こうした乗り物に乗るのは「安全」ではないのである。しかし、人々はこれらを利用している。それはリスクを認識しつつも、それを利用する便益が上回ると考えるからである。

  • 2011/05/23

    東北復興へ新しい水産業のモデル構築を

     甚大な被害をもたらした東日本大震災から2カ月が経過した。福島第一原子力発電所の事故を契機に、エネルギー問題が大きくクローズアップされ、地球温暖化問題も視野に入れた今後のエネルギー需給のあり方に関する活発な議論が行われている。一方で被災地復興の観点から真っ先に考えるべきことは、東北の基幹産業の復興であり、その一つが水産業であると言える。

     私は環境(環境化学工学)を専門とし、これまで特に藻場を中心とした沿岸生態系の修復プロジェクトに産学連携で取り組んできた。このプロジェクトは、製鋼スラグと未利用バイオマス資源を有効利用する藻場再生技術の研究開発が軸となって開始され、すでに全国各地で実証試験・実証事業が行われている。

     現在では、生態系理解・生物多様性保全への研究展開、沿岸生態系修復による地球温暖化問題解決への貢献可能性の検討など、地球的規模の課題解決に向けた展開もなされている。プロジェクトの性格上、漁業関係者や水産業とのかかわりは特に深く、今回の大震災においては、沿岸漁業の復興支援活動にも携わっている。このような状況を踏まえて、産業と環境の関係性の観点から、水産業の復興と沿岸生態系修復について述べることとする。

     すでに報道などにある通り、今回の大震災では、岩手・宮城・福島の東北3県を中心に水産業は大きな被害を受けた。水産庁によると、5月11日までに、全国の水産被害額は6694億円にのぼるとされている。特に東北3県は、漁船、漁港をはじめとして壊滅的な被害を受けている。事態の深刻さは漁業生産手段が失われただけではなく、水産業の構造そのものが失われたと言える状況にある。

     水産業は、漁業従事者だけでなく、水産流通業、水産加工業、漁船具の製造・販売業、そして造船業など多くの関連業者によって成り立っている。巨大な津波は、それらの機能をすべて喪失させるほどの打撃を与えた。実際に4月下旬に訪れた被災地の漁港の状態は、それが過剰表現でないことを実感させるものであった。すべてを回復させるには、膨大な労力と時間を要することは想像に難くない。

    石巻漁港の様子(長さ652mもの上屋根のあった魚市場付近。津波被害を受け、解体・撤去が進む)
  • 2011/05/19

    COP17に向け先進国への資金要求強める新興途上国

     カンクン合意から5カ月が過ぎ、今年末の第17回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP17)に向けた動きが各国で活発になっている。なかでも、新興途上国の動きは急だ。2月最後の週末には、BASIC(ブラジル、南アフリカ、インド、中国)とアルゼンチンなどいくつかの途上国が閣僚会合を開催。この会合には、COP17開催国である南アフリカも加わったため注目を集めたが、インドからラメシュ環境森林大臣、中国の解振華国家発展改革委員会副主任、ブラジルのテイシェイラ環境大臣、南アフリカのモレワ水・環境大臣などが名を連ねた。

     合意された内容、あるいは各国から主張された内容は次の通りだ。

    1.京都議定書第二約束期間への先進国のコミットメントや、途上国への人材育成をはじめとする支援約束などの状況について、国際的なアセスメントを求める。

    2.京都議定書第二約束期間への先進国によるコミットメントは、野心的な排出削減と排出量のピークアウトにとって重要。COP17で、先進国は第二約束期間についてコミットし、法的拘束力がある新たな数値目標が第一約束期間の終了後すぐに発効するよう(約束期間にギャップがないよう)にすべきである。

    3.途上国のMRV(測定・報告・検証)措置は、先進国に適用されるものよりも煩雑にならないようにすべきである。

    4.コペンハーゲン合意では、先進国は早期資金として2010~12年の3年間で300億ドルの支援を約束したが、実際に支払われた金額は10億ドルに届いていない。資金が必要な国に供給されていないことを強く問題視する。

    5.技術移転には知的財産権問題の解決が重要(カンクン合意では一旦論点から外れていた知的財産権問題が復活)。また、技術メカニズムと資金メカニズムとの直接リンクが重要。

     これらを見てわかるように、主要途上国は先進国に、京都議定書の第二約束期間についてのコミットメントを要求しつつ、「資金を早く出せ」と迫っている。

     今や地球温暖化交渉は、環境問題ではなく南北問題、所得再分配問題となりつつある。生物多様性条約についての交渉でも同じことが起こっていたが、先進国にとって気がかりな環境問題への協力を盾に取り、先進国の資金と技術をどれだけ獲得するかが、現在の温暖化交渉の本質なのだ。

     先進国が途上国の要求に、どのように対応するのか。各国とも財政状況は最悪であり、途上国を支援したくとも支援する余裕がない。むしろ、先進国は新興途上国の経済成長の恩恵を蒙って、なんとか不況に至らないよう維持しているのが現状だ。世界全体の資金循環をどうするか。今や地球温暖化交渉は、こうしたマクロ経済・金融問題と表裏一体となっているのである。

    記事全文(PDF)

  • 2011/05/10

    東北経済復興と地球温暖化

     東日本大震災では、私が所属する企業も津波で被災し、現在も電力が復旧しないなか、工場の復興に向け懸命に努力している。 続きを読む

  • 2011/04/28

    再生可能エネルギーは原発を代替できるか

     東日本大震災が引き起こした福島の原子力発電所事故は、東日本地域に深刻な電力供給不足を引き起こした。春先の計画停電、この夏の電力使用制限措置の発動など、さまざまな社会的混乱をよび、経済活動にも深刻な影響をもたらすことが懸念されている。

     津波の影響で被災・停止中の火力発電所については、相当な時間がかかるものの早急に補修され、順次立ち上がっていくものと想定される。しかし、すでに廃炉を決めている福島第一原発1~4号炉(3月30日勝俣恒久東京電力会長会見での方針)に加え、被害が少なかった5、6号炉や、福島第二原発1~4号炉については、原発事故が周辺地域に与えた放射性物質による汚染や、長期の退避生活を余儀なくされた周辺住民の感情を考えても、当面、稼働再開は難しく、短中期的な電力供給に供することは事実上考えにくい事態となっている。

     福島第一原発、第二原発の発電能力は910万kW(わが国の総原子力発電能力の約18%。原子力発電の総電力供給量に占める割合が2009年度で約29%であるから、わが国の総供給量の5%強が喪失する計算になる)と非常に大きい。これが事実上、恒久的に喪失する東日本における電力の供給不足は、安全性見直しによる全国の他の原発の稼働率低下の影響も考慮すると、わが国の中長期的なエネルギー供給体制の大幅な見直しを迫ることになる。

     こうした事態を受けて国内外でさまざまな分析が行われている。米ブレークスルー研究所(米カリフォルニア州にあるエネルギー・気候変動問題を専門に扱うシンクタンク)が興味深い論考をホームページに公開しているので、ここで紹介していきたい。

  • 2011/04/27

    セキュリティに重点を置いたエネルギー政策への転換を

     今回の大震災に伴って実施された「計画停電」によって、私たち日本人が最近忘れていたエネルギー安全保障という問題と真正面から向き合うこととなった。過去2度発生した石油ショックの時以来である。まず日本のエネルギーセキュリティに関する政策の歴史を振り返っておこう。

    脆弱だった日本のエネルギーセキュリティ

     エネルギー資源に関して、日本の特徴はその自給率の低さにある。狭い国土には化石燃料や鉱物資源が乏しく、国家経済や国民生活を支えるために必要な資源の大半は、輸入に頼ってきた。特に第二次世界大戦後の高度経済成長期には、エネルギー種がそれまでの国内炭から輸入石油エネルギー源が移行し、自給率を一層引き下げる要因となった。

     1973年の第一次石油危機では、OPEC(石油輸出国機構)の禁輸措置によって、エネルギーの輸入が途絶するのではないかという危機感や不安感が、国民レベルで沸騰した(実際には価格は急騰したが、物理的な量の不足は生じなかったとされる)。特に、当時は発電電力量の約7割が石油火力によるものだったこともあり、輸入石油が手に入らなくなることによって、ライフラインである電気がストップするのではないかという恐怖が国民を襲った。日本のエネルギーセキュリティ政策は、この時に感じた国民的危機感がその根っこに横たわってきたと言ってよい。すべての出発点がそこにあるのだ。

     78年に第二次石油危機が訪れるに至って、日本のエネルギーセキュリティ政策の基本は、石油依存度(73年当時約77%)の引き下げと政治的に不安定な地域(特に中東)へのエネルギー供給依存度の引き下げとされた。それを実現するエネルギーセキュリティ政策の体系は、石油備蓄のような緊急時対応力強化のほか、需給両面からの中長期的施策が打ち出された。

  • 2011/04/11

    地球規模のCO2削減に向けて実効あるMRV(測定・報告・検証)を

     2010年に開かれた第16回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP16)では、前年のCOP15で成立したコペンハーゲン合意が前向きな形で息を吹き返したと言われている。そのコペンハーゲン合意に基づいて、各国は2010年初めに、二酸化炭素(CO2)の排出抑制目標を国連に提出した。こうした数値目標などから、主要5カ国について、2020年の1人当たりCO2排出量を試算した(下の図)。

     まず、米国は国連に提出した2020年の目標通り17%削減したとしても、1人当たり排出量は依然として高い。一方、2009年に米国を抜いて世界一のCO2排出国となったとされる中国は、2005年時点では、1人当たり排出量は先進各国よりも明らかに少なかった。しかし、2020年になると様相は一変する。中国の目標はGDP(国内総生産)比であり、経済発展により排出量は増える。今回の試算の結果では、1人当たり排出量は2005年の1.7倍となり、米国の約半分、日本やEU(欧州連合)をわずかではあるが超えるレベルになる可能性が高いことがわかった。経済成長のスピード次第でCO2排出目標が変化するが、途上国に分類することはさすがに難しい。

     中国の健全な経済発展が歓迎すべきものであることは言うまでもない。しかし、その過程で、日本をはじめとする先進各国が開発し、実用化してきた省エネ技術が最大限に取り込まれなくてはならない。もちろん、中国の独自技術も開発されるであろう。その状況が広く公表され、先進国はもとより、後に続く途上国に共有されることが極めて重要である。コペンハーゲン合意で示された、達成状況を国際的に相互検証するMRV(測定/報告/検証)が COP16では正式に決定された。世界共通に評価できる手法で、包括的な実績と技術に関する詳細な報告が行われることが、地球規模のCO2削減取り組みに不可欠である。

    2020年には、1人当たりCO2排出量でも中国が日欧を上回る。なお、今回の試算には以下のデータを用いた。
    ・米国、日本、EU27の2005年のCO2排出量は、IEA CO2 EMISSTIONS FROM FUEL COMBUSTION(2010 Edition)
    ・米国、日本、EU27の2020年のCO2排出量は、排出実績に各国目標の削減率を乗じて算出。
    ・中国、インドのCO2は排出量は、RITE「世界各国の中期目標の分析」(平成21年12月8日)
    ・人口は、国連「World Population Prospects: The 2008 Revision」

    記事全文(PDF)

  • 2011/03/25

    50年後を見据えた世界のエネルギー・気候変動問題の解決策を

     今日、経済のグローバル化、資源価格の上昇、新興国の急成長、気候変動問題への対応など、世界の経済社会を取り巻く環境が大きく変化しています。この「不確実性」の時代に、国際エネルギー機関(IEA)は、50年後も見据えて世界が発展を続けていくためのエネルギー・地球環境政策のあるべき道筋は何か、各国の政府や企業のよりどころとなるベンチマークを発信することに務めています。NPO法人国際環境経済研究所(IEEI)が地球温暖化対策への羅針盤たらんと、分野を超えて有識者の議論を促進し提言を発信していくことは時代の要請に応えるアクションであり、IEAと方向を一にする活動だと思います。

     昨年11月にIEAが発表した「世界エネルギー展望2010」では、各国がエネルギー・気候変動政策を慎重に展開する現実的な道筋を「新政策シナリオ」として新たに示したのですが、中国をはじめとする新興国の成長に伴い、2035年までに世界のエネルギー消費は36%増加し、二酸化炭素(CO2)の排出量も21%増加すると見込まれます。しかしこれは大気温が3.5℃上昇することを許し持続可能とは言えないうえに、石油輸出国機構(OPEC)からの石油生産に対する依存度が現在の4割から5割に上がるなど、エネルギー安全保障面でのリスクも増大してしまいます。

  • 2011/03/10

    あなたは情報発信しているか?

     日本からの情報やアイデアの発信の必要性が叫ばれてから久しい。しかし、状況は思ったほどには改善していない。例年2月に開催されるダボス会議(世界経済フォーラム)には、今でこそ、日本の首相も日帰りに近い形ででも出席するようになった。だが、単にそこで話してくるという以上の積極的な意味は見いだせない。そもそも1年で替わる首相の話など、誰も真面目に聞かないだろう。

     1980年代初頭の日本の絶頂期であれば、どんなに下手な英語で話をしても、相手は日本の言うことを聞きもらすまいと一生懸命だった。それは、背後に経済大国日本に対する尊敬と脅威があったからである。世界に対する日本の影響力、あるいは日本に対する世界の関心が目に見えて低下しているなかで、日本からの発信は、よほど内容が充実していないと誰も聞いてくれない。まず、こうした状況認識の共有が必要だ。

     これに関連して筆者が残念に思っているのは、未だに残る欧米信仰である。たとえば政府の審議会での議論で常に出るのは、「EUでは排出権取引(ETS)を導入しているのに日本はなぜやらないのか」とか、「スペインやドイツで再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度を導入して『成功』しているのに、なぜ日本は追従しないのか」という議論である。

     この発想を引きずっているのが日本から海外への調査団である。同じようなテーマについて、顔ぶれを変えながら欧米に大規模な調査団を送る。このなかには、英語ができずに議論に加われない人もいる。ときには日本大使館員も動員されて、ご苦労なことである。情報発信どころか受信専用である。

     相手から見れば、毎回同じような質問を受けるだけで見返りはない。もし筆者が相手の立場であれば、時間の無駄であるので真面目な対応をしないだろう。真面目にやるのは、たとえば日本にEU-ETSを採用させる意図があるような場合だけである。

  • 2011/02/09

    第一線の企業人こそ環境メッセージを発信すべきだ

     以前、中国に駐在していた時、帰国するたびに感じたのは、日本の美しさ、環境の素晴らしさだった。日本を訪ねる中国人も同じ印象を持っているようだ。 続きを読む

  • 2010/12/22

    日本がリードするプラントの効率算定方法標準化

     製鉄所をはじめとしたプラントの効率を測ることは、そのこと自体は単純なものである。システムバウンダリー(システム境界)を決めて、その境界を出入りするエネルギーや物質の量を計上し、それぞれの物質に見合った換算係数をかける。そこで得られた数値を足せば総量であり、総量を生産量などで割れば原単位となる。

     しかし、システムバウンダリーの決め方や換算方法が異なれば、まったく同じプラントを対象にしても、無数の「効率値」が得られることになってしまう。そして実際には、各国ごとだけでなく、同じ国のなかでも、プラントの効率を測るための複数の算定方法が存在している。

     鉄鋼業の場合、より広い範囲でお互いの効率を比較することによって自らの位置付けを知ることが効率改善に有効である。そこで、日本の鉄鋼業界がリードして、共通の効率算定方法の構築を進めてきた。クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ(APP)での成功を基に世界鉄鋼協会(ワールドスチールアソシエーション)でも算定方法を確立し、データ収集を行ってきた。そして日本が提案者となって、世界鉄鋼協会の効率算定方法をISO規格化する作業がスタートしている。

     APPや世界鉄鋼協会のときもそうであったが、ISO規格化にあたっては各国・地域の事情がより色濃く出てくるため、なかなかタフな仕事となる。特にEU ETS(欧州連合域内排出量取引制度)を抱えている欧州とは、今後もハードな交渉が続くことは避けがたい状況である。しかし、生産技術・製品特性とともに、技術に裏付けされた日本の効率算定方法は、世界に貢献できることは間違いない。もちろん、国際化のなかでカラー道着が採用された柔道のように、日本の効率算定方法もある程度の修正が必要になるかもしれないが。

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  • 2010/12/10

    3つの視点から気候変動問題を巡る国際交渉を考える

     気候変動問題についていろいろと考えるときに、どうしても頭から離れないいくつかのことがある。問題が深いと言わざるを得ない。列挙してみたい。

    【身勝手】
     数年前に、ブラジルが「歴史的責任(Historical Responsibility)」を気候変動に関する国際連合枠組み条約(UNFCCC)の場で主張したことは記憶に新しい。過去も同様の考え方が主張され、「差異あるが共通の責任(Common but Differentiated)」という概念で共有化されている。

     しかし、国民1人当たり3万ドルを超える豊かさを享受している日米欧が、いまだその3分の1にも達しない中印に対して、気候変動問題に厳しく対応しろと要求している。これは、いかに気候変動問題が深刻な問題であるとしても、やはり、先進国の身勝手な要求と言わざるを得ないのではなかろうか。さんざん化石エネルギーを活用して豊かになってきた国々が、過去自分たちの辿った道に思いを馳せもせず、これから豊かになろうとする国々に、化石燃料を利用するなと言っているのだ。

    【植民地】
     国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP)の場では、アフリカや中南米の人たちが見事な英語やフランス語を駆使して多様な意見を主張している。なかには、自らの足元を忘れたかのようにして、欧州の人たちと同じ意見を述べる人もいる。これはどうしたことなのだろう。ここで気がつくのは、かつての植民地と宗主国の関わりである。かつての宗主国は、教育と文化を通じて、いまだにかつての植民地国のリーダーの一部に彼我一体ともいえる影響を及ぼしているのだ。欧州の巧みなかつての統治は、今、こんな形で、現れている。

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