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田町プロジェクトのエネルギー融通

官民連携で“低炭素で防災に強いまちづくり”


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授


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(「月刊ビジネスアイ エネコ」2020年2月号からの転載)

 東京都港区のJR田町駅東口北地区では、同区の「田町駅東口北地区まちづくりビジョン」(2007年策定)に基づき、低炭素で防災に強いまちづくりを官民が連携して行っています。
 公共街区のⅠ街区には病院や公園が整備され、本コラム(14年1月号)でも、Ⅰ街区の第一スマートエネルギーセンター(第1プラント)について書きました。18年にはⅡ街区のオフィス・商業ビルが竣工し、20年夏ごろには別棟のオフィス・商業ビルが竣工予定です。そのⅡ街区の第二スマートエネルギーセンター(第2プラント)を見学しましたので紹介します。

JR田町駅東口北地区再開発「Ⅱ街区」の発電設備=東京都港区

JR田町駅東口北地区再開発「Ⅱ街区」の発電設備=東京都港区

公共街区の第1プラント

 14年に竣工した第1プラントは、東京ガスエンジニアリングソリューションズが運用し、都市ガスから熱・電気をつくるガスエンジンコージェンレーションシステム(CGS、370kW×2台)と燃料電池CGS(105kW)、熱源機が整備されています。
 また、公共公益施設「みなとパーク芝浦」の歩行者デッキの屋根には、大規模な太陽熱集熱器が設置され、夏は冷房、冬は暖房の熱源として利用されています。集熱器の脇などには太陽光パネル(68kW)が設置されており、太陽光の出力変動はCGSで制御し、系統電力に与える影響を小さくしています。
 太陽熱、太陽光などの再生可能エネルギーを積極的に導入し、分散型エネルギーシステムでつくられる熱と電気をオンサイトで効率的に利用する仕組みです。
 このほか、未利用エネルギーの活用も行っており、1日3000トン出るという地下トンネル水(湧水)を熱利用しています。年間を通して温度変化の少ない地下トンネル水の特性を活かし、冬は暖房の熱源、夏は冷凍機の冷却水として利用することで熱の製造効率が上がり、年間30~65%の省エネに貢献します。
 田町プロジェクトでは、CGSとICT(情報通信技術)を使ったエネルギー需給最適化システム「セネムス(SENEMS)」を核としたスマートエネルギーネットワークを構築し、複数の建物のエネルギーの最適化を図っています。停電が起きた場合は、CGSからⅠ街区の公共公益施設に電力、病院と公共公益施設に冷温熱を供給します。公共公益施設は、港区民の避難所として約4500人受け入れ可能な防災拠点になっています。

民間街区の第2プラント

 18年に竣工した Ⅱ街区は、三井不動産、三菱地所、東京ガスグループが共同でオフィス・商業棟、ホテル、第2プラントを整備する民間エリアで、「msb Tamachi(ムスブ田町)」と呼ばれています。
 今回見学した Ⅱ街区の第2プラントは、敷地規模が数十万m2まで拡大され、1000kW級のCGS(停電対応機種)が5台導入されています。
 このほか、CGSの排熱を利用した蒸気焚きジェネリンク(排熱投入型蒸気吸収冷凍機、1400RT注1)×2台)、ターボ冷凍機(1050RT×2台)、蒸気焚きナチュラルチラー(蒸気吸収冷凍機、1050RT×2台)、貫流ボイラ(3トン/時×8台)、空調用の太陽熱集熱パネル(82m2)なども設置されています。
 停電対応タイプのCGSを導入することで、非常時でも中圧ガスが供給されている限り、msb Tamachiで必要になる熱や電気を一定期間継続して供給できます。


蒸気焚きジェネリンク


蒸気焚きナチュラルチラー


温水配管

スマエネセンター間で相互融通

 Ⅰ街区とⅡ街区のスマートエネルギーネットワークを連携させ、各ネットワークにつながっている再エネ、CGS、空調熱源などをセネムス(SENEMS)で制御し熱の相互融通を行うことにより、田町駅東口北地区全体のエネルギー需給の最適化を図っています。非常時にも、相互に熱を融通する体制を構築しています。例えば、地域の防災拠点にもなっているⅠ街区でエネルギーが不足した場合、Ⅱ街区の第二スマエネセンターから熱や電気を融通してバックアップします。スマエネセンター間でエネルギーを相互補完することにより、エネルギーセキュリティをさらに向上させています。
 このように複数のスマートエネルギーネットワークを連携させる取り組みは、日本で初めてのことです。熱を建物間で融通するには、需要の時間帯が異なるホテルや病院、オフィスなどをセットにし、1日(24時間)の中の需要を平準化するのが理想とされます。田町駅東口北地区は、公共街区と民間街区が共存しており、熱を建物間で融通するのに最適なエリアと言えそうです。
 また、CGSを核としたエネルギー利用の最適化により、地区全体のCO2排出量は1990年基準比約45%削減を目指しており、温暖化対策にも貢献します。
 近年、自然災害が多発し、停電などが起きる頻度が増えており、災害などが起きても事業が継続できるようBCP(事業継 続計画)の観点から設備投資を考えることが求められています。ビジネスを継続できる環境を整備するには何をすべきかを考えることが重要です。
 Ⅰ街区は2010年7月、国土交通省の「住宅・建築物省CO2先導事業」に採択され、CGSなどの省エネ設備の半分は補助金で賄われています。Ⅱ街区は、東京都の13年度「オフィスビル等事業所の創エネ・エネルギーマネジメント促進事業」と国土交通省の15年度「サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)」に採択され、設備導入などに補助金を活用しています。
 各地で再開発を行う際、災害時もCGSや再エネなどを活用することで安定して熱や電気を供給できる“低炭素で防災に強い”エネルギーシステム構築は、ますます重要になると思われます。

注1)
RT=冷凍トン、1RT=3.516kW


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