MENUMENU

エコアイランド宮古島

~島嶼型スマートコミュニティの取組みを中心に~


国際環境経済研究所主席研究員


印刷用ページ

 今回、国際環境経済研究所で、「千年先の、未来へ。」と表し、持続可能な島づくりに取り組む、宮古島を訪問する機会を得たので、その概要をご紹介したい。

1.宮古島市版SDGsの推進

 宮古島に到着し、まず初めに、宮古島市役所の三上氏から宮古島市の政策について説明いただいた。
 宮古島は、那覇から約300km離れた、ちょうど那覇と台湾との中間に位置する隆起珊瑚礁からなる平坦な島で、大きな河川等は無く台風や干ばつを受けやすい、非常に厳しい自然環境にある。
 こうした自然環境下、宮古島市は、「いつまでも住み続けられる豊かな島=持続可能な島づくり」を掲げ、「エコアイランド宮古島宣言2.0」として5つのゴールを目指している。

2.エネルギー自給率の向上に向けた実証事業

 宮古島市では持続可能な島づくりのため、より安定的、持続的で、低コストなエネルギー供給によるエネルギー自給率の向上を目指している。具体的には、2016年の2.88%から、2030年には22.05%、2050年には48.85%と、それぞれ目標を掲げている(上表、5つのゴールのうちの、指標③を参照)。
 宮古島の現在の一次エネルギーの割合は、約50%程度が電力、次いでガソリン、軽油・LPガス、重油という構成になっている。電力のメインは重油による火力発電だが、沖縄本島から約300km離れた宮古島への燃料運搬には高い輸送コストを要するうえ、需要規模が小さく非効率である。現在は、離島の優遇措置(ガソリン等の離島補助や電力のユニバーサル・サービス)により、コスト増の全ての転嫁を回避しているが、今後、例えば、電力市場の制度改革等により、こうした措置が変更される可能性もある。中長期的な化石燃料の高騰リスクも考えると、約97%のエネルギーを島外に依存していることは、地域経済にとって持続的とは言い難い。
 そこで、市民生活や事業活動を支える地域社会の基盤の一つであるエネルギーの地産地消を実現すべく、具体的なアクションの一つとして、宮古島市は、『宮古島市島嶼型スマートコミュニティ実証事業』を開始した。
 今回は、この実証事業を受託している株式会社ネクステムズ・代表取締役社長の比嘉直人氏から、実証事業の概要説明と普及設備の視察の案内を頂いた。
 この実証事業は、再生可能エネルギーの効率的利用やエネルギー需給管理システム(EMS)を導入の上IT/IoT技術を活用して電力消費の面的群制御を行い、経済メリットを生み出すことで持続可能な社会システムとしての実装を目指すものである。具体的には、ネクステムズの子会社の宮古島未来エネルギー(MMEC)が、再エネサービスプロバイダ事業(RESP事業)として、宮古島市内の市営住宅40棟(2018年度実績)に、第三者所有(MMEC所有設備)の形で太陽光発電およびエコキュートを設置し太陽光発電の電力を、エコキュート及び市営住宅の共用部へ自家消費電力として売電し、余剰電力は、沖縄電力へ非FITでの相対契約で売電を行っている。
 ネクステムズでは、太陽光発電、電気式給湯器(エコキュートや電気温水器)、電気自動車、および家庭用蓄電池などの蓄エネ型可制御負荷を遠隔で面的に制御し、宮古島の電力系統全体の負荷率向上に向け、需給バランス制御・調整力効果の検証(いわゆるエリアアグリゲーション事業)を行っている。実証にあたっては、送配電事業者である沖縄電力と事業協力に関する協定を締結し、電源制御の沖縄電力と、需要制御のネクステムズの両者が協力し、需給バランスの最適化を目指している。
 従来の太陽光発電システムと住宅用蓄電池の組み合わせによる使用では、日中太陽光発電で得た電力を自家消費として使用し、不足があれば蓄電池から放電、余剰があれば満充電まで蓄電池に充電しておき、夜間に蓄電池を放電していた。しかし、これでは夜間に蓄電池を使い切り、放電停止になった途端に負荷が急増するなど、急峻な変動が顕在化する懸念がある。
 そこで、太陽光発電は、過積載により常時出力を制限し、自主的に出力抑制を行うとともに、太陽光の余剰電力が多くなる昼間時間帯にエコキュートの沸き上げ運転を行う。更に、余った電気を蓄電池に充電し、蓄電残量満充電になったら、気象予報に基づく「売電オフセット値」で売電を開始し、日没時に満充電となるよう蓄電池を制御する。日没以降は昼間に貯めた蓄電池の電気を放電し、例えば蓄電池の残量が25%になった際には、放電停止まで徐々に放電量を下げ急峻な需要の変動を回避する。このモデルにより自家消費型太陽光の大量普及を前提とした、電力系統での負荷平準化を実現しようという考えである。

 実際に、実証事業を行う市営住宅に足を運ぶと、屋上には太陽光パネルが、各住戸には、エコキュートが並ぶ。これらの設備の本体価格や設置費用は無料であり、入居者は電気料金および給湯料金を払う仕組みとなっている。電気料金は補助金を前提とした場合、沖縄電力の従量電灯料金(平均約29円/kWh)よりも割安となり、補助金を取得しない場合は、利用料金は32円kWhとなっている。従来の電気料金と同等の料金水準を実現できたのは、『安価な通信手段を確保できたから。通常、インターネットユーザーは、データのダウンロードなどの「下り」の利用が中心であるが、エリアアグリゲーション事業は、各メーターからデータを吸い上げる「上り」がメインとなる。この料金差を利用し、コストメリットを追求した』と、比嘉氏は説明する。
 ネクステムズでは、蓄エネ型可制御負荷の地域への普及を図り、電力系統での負荷率向上と再エネの余剰電力吸収を行い、FITを利用せずに社会的総費用の最小化するとともに、需要家メリットを最大化することを目指しており、今後の取組みに期待したい。

 次に、宮古島市が実施する「エコハウス普及啓発事業」の一つ、市街地型エコハウスを訪れた。宮古島の高温多湿な亜熱帯海洋性気候、強い台風の襲来など、気候風土に合わせ、かつ、エネルギーを極力使わずに快適な生活を可能とする建築技術が随所に採用されている。建物全体が、強い日差しや台風による暴風から身を守るため、有孔コンクリートブロックで覆われている。また、北側から乾燥した風を取り入れるため、南北両側に開口部を設け、通気を良くするとともに、湿気を抑えている。実際に、中に入ってみると、テラスや吹き抜けからも涼しい自然の風が入り込み、心地よく感じられた。宿泊体験プランも用意されている。

3.宮古島の電力系統制御

 さて、『宮古島市島嶼型スマートコミュニティ実証事業』では、需要側の制御によって、電力系統の負荷平準化を目指し、エネルギー自給率を高める取組みを紹介したが、一方で、電源側の取組みはどういう状況なのだろうか。
 沖縄電力宮古支店の概要および過去に台風で倒壊した風車の説明を受けるとともに、メガソーラー実証研究設備、宮古第二発電所、および中央制御室の様子を視察した。
 宮古支店では、宮古本島に発電所を設置し、その周辺離島(伊良部島、下地島、池間島、来間島、大神島)に電力を供給し、多良間島に設置する発電所により、同地域および水納島に電力を供給している。
 宮古島の電力系統は、沖縄電力の電力系統とは連系されておらず、最大電力は約60,000kW、夏の夕方がピークであり、最小電力は約20,000kWと、電力需要が小さい。こうした小規模の独立系統では、事故時に連系線による電力の融通が受けられないことに加え、需要と供給の変動による周波数変動の影響が比較的顕著になることから、高い供給予備力(宮古島を含む沖縄エリア全体で40%程度)を確保しなければならない。更に、ディーゼル発電機が供給の主体となっているため、燃料の輸送コストの増加が課題となっている。
 こうした状況下、地球環境問題への取組みとして、再生可能エネルギー(宮古島メガソーラ(4,000kW)、風力発電(3,600kW))を活用している。
 宮古第二発電所内にある中央制御室で系統運用の説明を伺ったところ、上記メガソーラー以外にも、島内には家庭等による太陽光発電の導入が約23,000kWあるとのことだった。太陽光発電の出力は短時間で大きく変動することもあって、ディーゼル発電による需要と供給のバランスの調整が非常に難しくなりつつある。そこで、系統負荷が低負荷となる際には蓄電池(4,000kW)を充電するなどして対応しているが、それでも厳しい場合は、自社メガソーラー(接続可能量に含まれていない)の出力制御を実施しているとの事であった。

 厳しい自然環境で知られる宮古島では、2003年9月11日に宮古島を直撃した台風14号の影響により、沖縄電力が当時保有していた6基の風力発電設備のうち、3基が倒壊、2基がブレード破損、1基がナセル損傷等の被害を受けた。台風が通過した際の風力発電サイトにおける風車ハブ高さでの最大風速(10分平均)は、気象台で観測された最大風速38.4m/sよりも1.5倍も高く、60m/sに達しており、また最大瞬間風速は、90m/sに達していることが解析により推定された。以降、沖縄県での風車新設にあたっては、風車設置地点ごとの周辺状況を加味した地表面粗度区分を用いて設計風速を設定することや、制御用バックアップ電源等の機能付加などを講じることとされた。実際に、その後、台風等の強風時に風車を倒すことの出来る、可倒式風車の導入が進んでいる。
 太陽光発電設備に関しては、経済産業省資源エネルギー庁の「平成21年度離島独立系統新エネルギー導入実証事業」を活用し、前述の太陽光発電設備4,000kWと、NaS(ナトリウム硫黄)電池4,000kWを備えた「宮古島メガソーラー実証研究設備」を構築し、自然変動電源の出力変動が系統へ与える影響や、NaS電池による太陽光の出力変動抑制制御、周波数変動抑制制御など、系統安定化への取組みを進めてきた。
 この太陽光発電設備は、頻繁な台風襲来を考慮した架台の強度と太陽光パネルの設置角度を採用し、海に面しているため、太陽光パネルと架台は重耐塩仕様が採用された。しかし、2019年の台風9号および13号により、太陽光発電設備は被害を受け、現在は発電を停止している。現状を視察したところ、重耐塩仕様にもかかわらず、架台の錆が散見され、宮古島の厳しい自然環境が窺えた。

4.地下ダム資料館

 宮古島は、沖縄県の大型の島で唯一、石灰岩だけで形成されたアルカリ性の大地の島であり、表面の地層は、三層からなっている。まず、表土は、マージ(もしくは島尻マージ)と呼ばれる、40cm~1mくらいの、石灰岩が風化して出来た地層で、今からおよそ200~300万年前に宮古島が段階的に隆起し、その後時間をかけて徐々に形成されたと考えられている。第2層は石灰岩(もしくは琉球石灰岩)で、今から50~20万年前、宮古島の辺りが浅い海であった頃にサンゴ礁が発達し、そこに生息していた生物の石灰質の殻や骨格が堆積してできたもので、島の中央部で約25m、南東部では65mにも達していて分厚いことが特徴である。第3層は、泥岩層と言われ、中国の長江(揚子江)、黄河などが形成した大陸灘の粘土層が堆積して形成されたものと考えられている。
 表土は、雨が降ると少しぬかるんだ様な状態になるが、透水性が良く、第2層の石灰岩も、空隙が多く水を透しやすい。一方、第3層の泥岩層は、水を透しにくい不透層と呼ばれ、宮古島では、この不透層が地下深くにあるため、河川や池等が出来にくく、一般的な大地では、水が河川から海に流れ出るのに対し、宮古島では、地下水となって大量に蓄えられている(泥岩層が海面より高く隆起した地域では、海水が混ざらないアルカリ性の真水が貯水されている)。
 従前、石灰岩の中に浸透した地下水は、湧き水として海に流れ出ていたが、地下ダムを建設し、地下に壁を造り、その水をせき止めることにより、農業用水として確保するとともに、宮古島のあらゆる水源地に水を循環させることが可能となった。具体的には、宮古島では断層によりいくつもの地下谷が形成されており、この地下水が流れる帯水層を締め切ることで、地下水位を堰上げ水を利用する仕組みである。
 本来、農業用水は作物が必要とする時に必要な量の水を与えるものである。(透水性が良く)保水性が少ない宮古島の大地は、頻繁に水を圃場に供給しなければならなかった。そこで、この地下ダムシステムを開発することにより、地下水を汲み上げ(取水装置)、貯水槽(ファームポンド)に貯め、受益農家の圃場のスプリンクラーで散水することが可能となった。散水された水は、作物が吸収し、残りはまた、地下の石灰岩にろ過されながら水源地に浸透していくという、地下水の循環システムとなっている。宮古島の主産業は農業が圧倒的であり、その基盤となっている地下ダムシステムの農業や人々の暮らしに果たす役割は非常に大きい。
 宮古島市地下ダム資料館では、宮古島の地層断面模型や、地下深度70mの実物ボーリングコアー等を展示しており、大型地下ダムの建設技術や構造、地下水のメカニズム、そして宮古島の人々の暮らしについて、解りやすく説明していただいた。館内の展示や説明を通じて、宮古島の歴史や風土、そして人々の暮らしと地下ダムの役割について、しっかりと理解したい方には是非、2時間程度の時間を確保しておくことをお勧めしたい。

視察を終えて

 宮古島では、地理的・経済的制約を踏まえ、その地域特性に応じて、需要側・電源側それぞれに、持続可能性のあるエネルギー政策の取組みを紹介いただき、自然環境に即した水インフラの整備について、説明いただいた。
 エネルギー・環境政策形成の前提となる自然環境や地理的・経済的要件は、地域によりそれぞれ異なる。それらの地域特性を考慮した、持続的なエネルギー・環境政策の在り方を考えることが肝要であることを、再認識する良い機会となった。