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迫る人口減 再生の在り方とは

書評:飯田泰之、木下斉、川崎一泰、入山章栄、林直樹、熊谷俊人 著『地域再生の失敗学』


国際環境経済研究所理事・主席研究員


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電気新聞からの転載:2019年10月11日付)

 今後の電力事業を考えるにあたってのキーワードは「地域」だと筆者は考えている。世の中に数ある事業の中でも、最後まで地域と向き合い続ける宿命にあるのは、交通やエネルギーインフラ事業など、ごく限られた存在だ。一昨年9月に上梓した「エネルギー産業の2050年 Utility3.0へのゲームチェンジ」(日本経済新聞出版社)でも、これまで電気を送るという機能しか期待されてこなかった送配電事業が、他の社会インフラとも融合しながら、地域のエネルギーマネジメントを担う姿を描いたし、これまで地域のエネルギーを支えてきたプロパンガス事業者などを中核として地域主体のエネルギー事業が再構築されるような事例の創出に取り組みたいとも思っている。

 地域を考えるという文脈において往々にして起こりがちなのは、「地域」を「都市」の対義語として用い、ひとくくりで語ってしまうことだ。人口の規模や産業構造、気象や地形、エネルギーインフラとして都市ガスがあるかどうか、ガソリンスタンドの数や道路網など様々な条件によって、その地域の理想とする像は異なるだろう。日本の地方自治体をいくつかのセグメントに分けて、複数の成功事例を創出していくことが今求められていると考えている。

 地方の中小自治体の不便をできる限り解消しつつ、低炭素化も進めるには電化がカギとなる。防災の観点からも分散型資源をできるだけ活用していくには、配電事業者の方の協力と変革が必須となるだろう。これまでもそうだったように、電力事業の核は地域であり続けることは間違いがない。

 そうなると第一歩はまず地域と丁寧に向き合うことだ。そう考えて手に取った本書は気鋭の経済学者や現役の市長、農学博士、事業家など5人による対談や講義によって構成されている。多様な視点から歯に衣着せず語られる失敗事例や政治の在り方などはテンポよく読める上に、具体的な事例の紹介も豊富なので腹落ちしやすい。

 人口減少はあらがいようもなくやってくる。しかしそれを前提として、住んでいる人たちの幸福度は維持できるようにするのが地域再生であり、それは活性化か消滅かという二者択一では議論できない。ましてや「ゆるキャラ」やB級グルメという一時的なお祭りで維持し続けられるものでもない。官民連携の手法から地域の魅力磨きまで網羅しながらも、手軽に読める地域再生の入門書である。

※ 一般社団法人日本電気協会に無断で転載することを禁ず

『地域再生の失敗学』
著:飯田泰之、木下斉、川崎一泰、入山章栄、林直樹、熊谷俊人(出版社:光文社)
ISBN-13: 978-4334039158



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