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水害後の健康被害を避けるために


相馬中央病院 非常勤医師/東京慈恵会医科大学臨床検査医学講座 講師


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 この度の関東甲信越・東北地方の水害におきまして、被災された方々には心よりお悔やみ申し上げます。多大な混乱の中ようやく被害情報が集まりつつあり、今復旧へ向け作業をされている方も多いと思います。
 気候変動が激しくなっているためか水害が増えているような気がします。水害の後は多くの問題が発生します。片付けに伴う大量の廃棄物の問題、もっと大きな問題は生活再建ですが、そのためには健康を維持することが何よりも大切です。
 つまり、このような災害において、一番大切なことは、この後の二次災害を起こさないことです。災害とは緊急事態ですが、すぐに終わる事態ではありません。被災地の皆様、支援に入られる皆様が長期的にご自身の健康を守っていただければと思います。
 ここではまず、災害の復旧時期に気を付けるべきことをごく簡単にお示しします。災害支援に慣れている方にとっては当たり前のことかもしれませんので、読み流していただければと思います。
 水害からの復旧時期に特に気を付けることは、感染漏電化学物質、そして精神的ストレスです。

1. 感染

 洪水や津波によって運ばれる汚泥には、様々な細菌が含まれます。時には下水なども混在しているからです。洪水によって運ばれた土は畑の土や庭の土とは全く異なると考えておいた方が良いでしょう。これを吸引したり、傷口から細菌が入ることで、時に重篤な感染症を起こしてしまうことがあります。

(ア) 防護手段
 一番大切なことは防護です。ゴム長靴・手袋・ゴーグル・マスクなどの防護手段を用いて、極力泥に直接触れたり、粉塵が目や口に入らないようにしましょう。

(イ) 破傷風の予防・洗浄用の水の確保
 泥には釘や破片など、鋭利なものが混ざっていることがあります。流れ着いた物が手足に刺さると、その傷口からばい菌が入り得ます。特に怖いのは破傷風です。もしけがをした場合には、清潔な水で洗浄の上早めに洗浄の上、医療機関を受診したほうが良いでしょう。飲料水も不足する状況ではありますが、作業をされる方は傷口洗浄用の水と消毒液も常備していただければと思います。

(ウ) 熱が出たらすぐ受診を
 どんなに気を付けていても粉塵の吸入を100%避けることはできません。水が不足し手洗い・うがいなどができない状況では、泥とは関係なくインフルエンザなどのウイルス感染の流行もあり得ます。
 今年はインフルエンザの流行が早く、台風の前に既に北関東方面では流行が始まっていました。ご自身だけでなく周りの方の健康を確保するためにも、咳・熱などの症状があったときにはマスクを着用し、早めに医療機関を受診してください。

2. 漏電・火事

 意外に思われる方もいるかもしれませんが、水害の後には火事が問題になり得ます。一つは防火用水が不足しているため、もう一つは漏電が起きやすいためです。特に水が引いて可燃物が乾き始めた時には要注意です。作業をされるときには汚水でも構わないので防火用水を確保しておいた方が良いでしょう。
 また、停電が解除され始めた際に気を付けるのは、家庭内での漏電と火事です。洪水による浸水は水道水の漏れとは異なり、化学物質等が含まれる場合もあります。このため、ある程度の防水加工がなされている製品でも、浸食により壊れていることも考えられます。水たまり周囲で作業をする時にはゴム手袋やゴム長靴を着用し、浸水した電化製品は使用しないようにしてください。

3. 化学物質

 ばい菌だけでなく、水害時の汚泥には様々な化学物質が含まれている可能性があります。たとえば家庭の漂白剤が大量に流れだしてしまった、という状況などを考えていただくと分かりやすいかもしれません。建物の中で汚泥除去の作業をする際には、必ず通気をよくしていただき、頭痛や目がチカチカする、などの症状があった場合にはすぐに作業をやめて外へ出るようにしてください。

4. 精神的ストレス

 最後に、気を付けていただきたいのが精神的な疲労です。特にご自身の町や家が水害に遭ってしまった方々にお願いです。今、ご自身が作業されている場所が大災害の後の被災地であり、皆さんが被災されたばかりである、ということを忘れないでください。
 復旧作業の緊張の中では、ご自身の疲労に気づけないことが良くあります。睡眠と休息を十分とっていただき、不眠や食欲低下などの症状があった場合には、一日ゆっくり休むことも大切です。
 また、休息時に災害の情報や他の地域の被災状況などを検索し始めると止まらなくなり、気づかない間に過剰なストレスを抱えてしまうこともあります。休憩時間の災害関連のSNS発信や災害情報検索は極力避けるようにしましょう。
 以上、とても簡単ではありますが災害時の注意点をまとめてみました。皆様が健康を害されないことを心よりお祈り申し上げます。