透明な太陽光発電パネルが登場するか


YSエネルギー・リサーチ 代表


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 8月半ば頃に海外からの情報として、カリフォルニア州のCalifornia Energy Commission (CEC:カリフォルニア州エネルギー委員会)が、透明な太陽光発電パネルの技術を開発したシリコンバレーのベンチャー企業ユビキタス・エナジー(Ubiquitous Energy:UE)社に、300万ドルの技術開発補助を出すという内容のものが入ってきた。CECは、グリーンエネルギーの開発を促進する施策(BRIDGE)を実施する州組織で、UE社の新技術を早期に商品化させようとして資金提供を行ったとのことだ。この技術の開発に向けた補助には、ローレンス・バークレー国立研究所で建物の効率化を推進しているグループとの共同開発が組み込まれている。

 透明なパネル、という内容に興味を惹かれて、同社のホームページを参照したりして調べて見た。これは、人間の目には光としては感じられない赤外線と紫外線を吸収して発電し、可視光はそのまま透過させる素材を透明な膜にしてガラスやフィルムに貼り付けるもので、Clear View Powerという商品名が付けられている。赤外線は太陽熱の源だから、それを消費して発電するということは、この素材を貼ったガラスの断熱性が極めて高くなることも意味する。これを、窓ガラスやビルの垂直外壁部分に使用すれば、外の景色は普通のガラスのようによく見えるが、同時に発電をし、熱の移動を遮断してくれる。建物の熱効率を飛躍的に高めてくれるから、いま具体化されつつあるネットゼロエネルギービルのプロジェクトに最適な素材となるだろう。勿論、コストが課題になるが、それが許容範囲になれば、急速な普及をするに違いない。これを紹介した記事によると、カリフォルニア州にある建物の窓を全てこれに取り換えると、エネルギー消費の抑制効果と発電で年間20テラワット時(200億キロワット時)が生まれ、同州の電力の10%近くをこの窓から供給することになるとしている。太陽光が持つエネルギーの3分の2は赤外線と紫外線であるため、発電効率も10%を越えており、その一方で90%の透明度を実現している。マサチュセッツ工科大学(MIT)とミシガン州立大学もこの技術開発に深く関わっているとのことだ。

 UE社のホームページには、この透明太陽光発電パネルの利用分野として紹介しているのは、①建物の窓や外壁部分への取付に加えて、②電子腕時計やスマートフォンのようなウエアラブル端末のディスプレーをカバーする部分に取り付けると、透明なので画面が見え、同時に発電することから、蓄電池を充電、あるいは、不要にするなどへの利用、③さらには、IoT(物のインターネット)に利用される多様な端末の電源にするなど、3つの分野を想定している。IoTの事例として示されているものに、商品の価格等を表示するパネルがある。表示面にこれを取り付けると、価格等の文字が普通に見えるだけでなく、それを温度センサーなどの電源に利用してデータを送る端末にするというものだ。さらには、工場などの機械に作業者を保護する透明なカバーとして取り付け、そこに設置されているデータ収集ターミナルの電源にする、などが示されていて、応用範囲の多様性を示唆している。電気やガスのスマートメーターの表示窓に利用すれば、メーター内にあるデータ通信システムの電源になるかもしれない。

 同社がこの6月に出したプレスレリースによると、透明で発電するガラスの製法技術について日本のAGC(旭ガラス)と戦略的開発契約を結んだということだ。大きな面積のガラス表面に膜を薄く貼り付ける技術を持つAGCと手を結んだということだから、建築市場への登場は案外早いかも知れない。

 下の絵は、Clear Viewの原理を説明するものだが、UE社のウエブサイトから拝借している。
 http://ubiquitous.energy/


Ultraviolet: 紫外線  Infrared: 赤外線   Visible: 可視光  Electricity: 電気