世界の専門家たちが語る再エネの将来

柔軟性のある電力システム構築がカギ


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授


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(「月刊ビジネスアイ エネコ」2018年8月号からの転載)

 「グランド再生可能エネルギー2018国際会議」(写真1)と「第13回再生可能エネルギー世界展示会」(写真2)が6月下旬、横浜市のパシフィコ横浜で開催されました。国際会議では、日本、米国、ドイツ、中国、国際エネルギー機関(IEA)の代表者5人による基調講演やパネルディスカッションのほか、50カ国の研究者による最新の研究発表などが行われました。世界の専門家が基調講演で語った再エネの今と将来、新たな技術動向を探ります。

写真1 グランド再生可能エネルギー2018国際会議「NEDO特別セッション」の様子=横浜市のパシフィコ横浜(写真はNEDO提供)

写真1 グランド再生可能エネルギー2018国際会議
「NEDO特別セッション」の様子
=横浜市のパシフィコ横浜
(写真はNEDO提供)

写真2 第13 回再生可能エネルギー世界展示会

写真2 第13 回再生可能エネルギー世界展示会

再エネの今

 IEAの再エネ部門長、パオロ・フランクル博士は基調講演の中で「世界では太陽光、風力発電のコスト低減が進み、再エネの導入拡大が加速している。2015年に設置された発電設備の50%は再エネだった。世界の総発電電力量に占める再エネの割合は、16年の24%から22年には30%と全体の3分の1に迫る見通しだ」と指摘しました(写真3)。

写真3 IEA 再エネ部門長、フランクル博士の基調講演の様子

 IEAの予測では、40年までの中国の発電電力量の増加分は、米国の現在の発電電力量に相当する見込みです()。
 中国ではここ数年、再エネへの投資額が年間10兆円規模となっており、17年の1年間に中国国内で新設された再エネ発電設備は8000万kWに達しました。内訳は、水力(揚水含む)1287万kW、風力1500万kW、太陽光5300万kW、バイオマス149万kWとなっています。
 中国国家気候変動戦略研究・国際協力センターのリー・ジュンフェン教授は「中国政府が15年10月に策定した『第13次5カ年計画』ではイノベーションとグリーンの発展目標を掲げており、クリーンエネルギーへの転換、エネルギー消費量の削減、二酸化炭素排出量のピークアウトを前倒しで実現していく方針だ。習近平国家主席は、2050年までに再エネを全電力の8割にする目標を宣言した」と基調講演で語りました。

図 主要国・地域の2040年時点の発電電力量予測 出所:資源エネルギー庁(IEA データ参照)

図 主要国・地域の2040年時点の発電電力量予測
出所:資源エネルギー庁(IEA データ参照)

 

新たな技術動向

 米エネルギー省の直轄機関である国立再生可能エネルギー研究所(NREL)のマーティン・ケラー博士は、再エネの新たな技術動向として「ペロブスカイトと呼ばれる結晶構造の材料を用いた新しいタイプの太陽電池(ペロブスカイト太陽電池)が、ゲームチェンジャーとなる可能性がある」と強調しました。
 この新しい太陽電池は、シリコン太陽電池や化合物系太陽電池に匹敵する高い変換効率を達成しています。低価格で製造でき、軽量で曲げることができるといった特長があります。このフレキシブルさにより、既存の太陽電池では設置が難しかったところにも設置できるようになります。
 近年、世界の太陽電池関連の論文の大半がペロブスカイト太陽電池に関するもので、世界的に注目されています。パシフィコ横浜の展示ブースでも、同太陽電池が人気を集めていました。
 独フランホーファー研究所のハンス・マーティン・ヘニング博士は、「世界で電化(最終エネルギーに占める電力の割合の増加)が推進され、2060年ごろには、現在の約2倍になると予測される。再エネの余剰電力が大量に発生するとみられ、合成エネルギーキャリア(水素、パワーツーリキッド、化学物質、メタン)に変換する必要がある。二次エネルギーとして水素のエネルギー貯蔵技術が再エネ普及を後押しすることになるだろう」との見解を述べました。
 ドイツでは、北部で風力発電(陸上・洋上)が大量に導入され、供給過剰が年間を通じて発生している。その余剰電力を貯蔵するための、数多くのパワーツーガス技術(再エネの余剰電力を水素やメタンなどの気体燃料に変換し貯蔵する技術)の実証が行われています。
 また、ヘニング博士は、今後成長が期待される新たな市場として、IoT(モノのインターネット)を活用したエネルギーマネジメントシステムの自動化などを挙げました。
 前出のケラー博士は、再エネの余剰電力の貯蔵方法として水素の有用性を指摘するとともに、米国内で蓄電技術の進展が目覚ましいことを強調しました。カリフォルニア州などの再エネ普及が進む州で、定置式商業用・系統用の大型リチウムイオン電池が実用化され、成長分野のビジネスになっていることや、定置式蓄電技術のさらなるエネルギー効率向上やコスト低下に向けた技術開発に期待を寄せました。
 

エネルギーマネジメントの統合がカギ握る

 現在、電力の需給バランス管理は、火力など主要な発電設備を利用した集中エネルギーマネジメントシステムにより実施されています。しかし、再エネ導入量が大きく拡大すると、電力システム全体の需給調整問題が発生します。太陽光や風力といった天候によって出力変動する電源が増えたり、火力発電など従来、需給調整を担っていた発電設備の運用量が減少したりすることへの対応が必要になるためです。
 再エネの普及拡大に向けた需給調整力の強化は、世界共通の課題です。電力を効率的に利用するシステム開発が不可欠と、専門家らは口をそろえます。
 IEAのフランクル博士は「電力システム全体を管理する集中エネルギーマネジメントと、分散型エネルギーマネジメントが協調するシステム統合によって需給調整力を向上させることが重要だ。さまざまな再エネの特性を組み合わせながら全体で調和させ、地域全体をネットワークでつなぎ、揚水式発電や定置式蓄電地、電気自動車(EV)のバッテリーなどのエネルギー貯蔵設備を活用し、再エネの出力把握・予測を含めた、より柔軟な電力システム構築への投資を長期にわたって行う必要がある」と指摘しました。
 日本の16年度の再エネ電源の比率は約15%。政府は、30年度時点で22~24%程度と見通しています。世界で加速する再エネの低コスト化と柔軟性ある電力システムをいかに築き上げていくか。世界の潮流を見据えつつ、わが国も制度改革や環境整備を進めているところです。



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